第12話 誰も死なせません
まさか、ヒロインのカルーアも転生者でプレイヤーだったなんて、驚いた。
「それじゃあ、あなたも四回目のルートなの?」
「ああ、違うわ、私は、今回で七回目、少し様子をみてただけなの、あなたは、今回で四回目のやり直しなのね、だからか、この直前の三回が私の知らないルートだったのは、ねえ、どうしてやり直しになったのか覚えてる?」
もちろん、あの時に初めて前世を思い出して、やり直しが始まったのだから、忘れられないわ。
「その時の事って、教えてもらえるかな?」
「ええ、かまわないけど、私の時は、確か……牢獄で刑の執行を待っている時にやり直したいのか? と、きかれて、それで、……」
「ねえ、その時に何か言われたことってある?」
「そうね、確か、誰も死なないのが条件だって、……もしかして、あなたの時も何か言われたの?」
「んー、そうね、前世でシェリーのヘイトグランプリがあったのって知ってる?」
「知ってるわ、でもそれがどうかしたの?」
「実は、私それで優勝したのよ、」
ええーっ、あれで優勝って、相当えげつない事してたって聞いたような気がするんですけど……、
「優勝した次の日、目が覚めたらこの世界でカルーアになってたのよ、初めは何が起きてるのかわからなかったけど、パニックてるうちに声がきこえてきたの、お前が創りだした以上の悪役令嬢はもう無理かもしれない、だから今度は最高のヒロインを生み出して、この世界をもっと魅力的にして欲しいって言われたのよ」
それが出来たら、私はこの世界で一生安泰! イケメン達に囲まれて、愛されて、ちやほやされて、皆に羨ましがられるの、だって私は正統派のヒロインなんだから!
なのに、なぜか上手くいかないのよね、ずっとおかしいと思ってたけど、やっぱり悪役令嬢に頑張ってもらわないと、ヒロインが引き立たないんじゃないかしら、だから、今回のこのルート、シェリーに逆ハーレムをつくってもらえば、敵役として申し分ない、ここは逃すわけにはいかないわ。
「と、言う訳で、あなたには頑張ってハーレムルートを完成させてもらいたいのよ」
「……なにが、と言う訳かなのか、全然わからないんだけど、あなたが魅力的になるために、なんで私がハーレムルートを完成させなきゃいけないの?」
いっけない、ちょっと焦りすぎたかしら、落ち着かないとね。
「こほん、皆がシェリーに夢中になれば、あなたのいう事は皆聞いてくれるでしょう、決して命をかけたり、相手を蹴落とすような真似はしてほしくないって言ったら、無駄な争いも減るでしょうし、何より誰も死ななくてすむでしょう?」
それは、そうかも……
「でも、本来のヒロインはカルーアなんだから、あなたがハーレムルートでエンドになればいいんじゃないの?」
それじゃダメなの、悪役が悪役らしくしてくれないと、ヒロインが際立たないでしょう!
男を誑かす魔性の女、シェリーから、ヒロインの私が皆を助け出す!
なかなかいいんじゃないかしら、うんうん、いいと思うわ。
「いや、もう、どう見ても四人ともあなたのことが大好きでしょう、あなたにはそれだけの魅力があるんだし」
しょせん、ヒロインは私、私の魅力には及ばなくても、まあ、なんとかなるでしょう。
「ねえ、シェリー、もう、誰も死なせたくはないでしょう?」
「それは、もちろん。でも、そんな事して、みんなの気持ちを弄ぶような真似なんてしたくないし、仮に皆に好かれたら、その後はどうすればいいのかな」
「ああ、まったく、もう面倒臭いわね、本来、あんたは悪役令嬢でしょう? 皆の気持ちなんて後回しにでいいのよ、一番大事なのは、誰も死なないことじゃないの? そうでしょう、今のままでは正規の攻略ルートが使えないのだから、あなたがハーレムルート完成させてよ、そこから、この私ヒロイン、カルーアが逆転するから! ね、後のことは私に任せてちょうだい」
……そう、そうね、私は悪役令嬢なんだよね。
男を手玉に取るぐらい……、出来るかな……?
で、でも、やらないといけないのよね、もう誰も、死んで欲しくないもん。
「わかったわ、どこまで出来るか分からないけど、私、やってみるわね、協力してくれるのよね?」
よっしゃー! これで、私のパラダイスはゲットだね。
「もちろんよ、シェリー、このハロウィンナイト・パーティをハッピーエンドで終わらせましょう」
私のハッピーエンドだけどね、シェリーもその気になったようだし、良かったわ。
「それじゃあ、早速だけど、四人は攻略済みってことでいいから、次のターゲットはシエンタとステーシアか、ああ、でも、教授のステーシアは時間かけたほうが良さそうよね、じゃあ、シエンタを攻略しましょう」
「えええっ、シエンタは双子の弟なんだから、無理があるよね?」
「何を弱気になってんの、攻略対象を外すなんて出来る訳が無いでしょう、規定ルートなんだからさ、それにこのゲームはR18指定じゃなかったから、関係なんか持たなくていいでしょう、常に気にしてもらうくらいになってもらえばいいんじゃないのかな、それか、シスコンにするとか?」
ちょっと、待って、なんか、眩暈が……、なんかくらくらしてきたんだけど、
「迷ってる場合じゃないのよ、シェリー、皆の命がかかってるんだから!」
ガシッと肩を掴まれ、力のこもった眼で私を見ている。
そうよね、みんなを救うために、誰も死なせないために、私は自分の役割を果たさなくちゃ。
「……でも、シエンタなんて、どうすればいいのかしら」
「大丈夫よ、私に任せて、全ルート攻略済みだからね!」
頼もしい味方のはずなのに、なんか、……不安なのは気のせいかな?