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第1話 プロローグ

 わたくしは、シェリー・ハロウィン。ハロウィン公爵家の長女でアストリア王立学園の新入生。


 卒業まであと三年。今回こそは無事卒業!目指せ卒業!

 なんでこんな事になっているかと言うと、このルートは既に4回目。


 ここは、私が前世で大好きだった乙女ゲーム【ハロウィンナイト】の世界。


 私が前世の記憶に目覚めたのは、ゲームの終盤、お決まりの婚約破棄イベント。


 本来ならわたくしと、王太子アルファード様の結婚告知となるはずだったのに、ヒロイン、カルーアに対する今までの嫌がらせが暴露され罵倒された。


 カルーアは泣きそうな顔でアルファード様の背中にかばわれて、高位貴族が居並ぶ中でわたくし一人青ざめて立ちすくむ。何度も見たゲームのあの場面。


 これってけっこう酷いよね、容赦ないし、確かにプレイヤーによってはかなり、意地の悪い悪役令嬢になるらしく、どれだけヘイトを稼げるかとかの、グランプリまであったらしいけどね。


 なんでも、悪役令嬢として際立つほど、ヒロインのカルーアが、天使のような性格になり、王家から聖女認定され、末永く幸せに暮らすらしい。


 でも、私のプレイでも確かにシェリーは悪役令嬢の立ち位置だったけど、シェリーはどうでも良かったの、私は攻略対象とのエンディングを見たかったの! 最後に甘々なプロポーズをしてくれるんだもの、そこが大事だったのよ。


だから、私の場合はそこまで意地悪キャラとしては育ってなかったんだよね、王族に次ぐ公爵家のご令嬢だから、世間知らずのワガママ娘だっただけなんだよね。


 それなのに、このイベントでは、これでもかと罵倒されるんだよね、どんなルートを選んでも、そう、こんな風にあること、ないこと、散々言われてさ、ちょっと可哀そうだなって思って見てたんだ。

 ……って、私、だれ?   私が、シェリー?   あれっ?



 不意に沸き上がった違和感と疑問。それを深く考える間もなく、場面は進む、カルーアを階段から突き飛ばした罪を問われたが、そんなの知らないよ、いつ、どこで? やってないし。


 学校の階段って、だから、どこの階段なのか、といくら聞いても、カルーアはあまりのショックに記憶が混乱してるだの、こんな怯えて泣いているカルーアを嘘つき呼ばわりするなんて信じられないと。


 私がいくら言っても、何を言っても、カルーアが正しい。

 彼女はアルファード様の御子を身籠っているとの理由で、

 私は、王族の殺害未遂。王位反逆罪。   つまり斬首刑だ。


 弁護士もいないし、公平な裁判なんてある訳ないし。

 カルーアが正しい前提が成り立ってるから、何を言ってもムダなんだよね。


 私の死刑が確定し、執行されるのは三日後。それまではこの暗い地下牢に閉じ込められたまま、差し出される食事も、固いパンと冷えたスープだけ、一度だけ、家族からの手紙が差し入れられた。


 監視人が大きな宝石を見せびらかしながら、手紙を投げ捨てるように渡された。きっと家族の誰かが買収してやっと差し入れも可能になったのだろう。


 家族は必死になって、私の無罪を証明しようとしてくれてるらしい、最後まであきらめない、絶対助けるからあきらめないでと書かれていて、誰もいない牢獄で大声で泣いたよ。


 前世の記憶が戻っても、この世界での家族の記憶もちゃんとあるから、親バカだけど優しい両親とちょっとツンデレな弟の顔が、浮かんでは消えていく。


 なんで、私、死ななきゃいけないんだろう?  

 ゲームの強制イベントだから? 


 ……これ、現実なんだよね。


 大好きだったゲームの世界、寝不足のまま学校に行ってママに怒られた。


 でも、ここはゲームじゃない、私はこの世界で生きているの。


 私、なんで何も出来ないの?   ここで死刑を待ってるだけなの?

 ログアウト、……出来る訳ない、選択肢を選ぶことも出来ない。


 死刑なんて絶対ヤダけど、 どうしよう?   どうすればいのか分からない、


 やり直すことが出来たら(シェリー)だって悪役じゃなくなるかもしれないし、もっと違うルートも絶対にあるはずなのに。


 答えが見つからないまま、いつの間にか疲れて眠ってしまったらしい。


◇ ◇ ◇ ◇


 真っ暗なはずなのに、目の前に何かいるのがわかる。何者かが私に問いかける。


「やり直したいのか?」

 

こくん、と頷く。


「いいだろう、お前の願いを聞き届けよう。但し、お前の代わりに誰も死なないことがやり直しの条件だ。」


 金色の瞳が大きくなり、私を呑み込んだ。


 二度目のループは、私がいい人になりすぎたのか、皆に優しくと心がけていたら、騎士団長の息子のルドルフが、アルファード様の私への扱いがあまりにも酷い、けれど王族には逆らえない。


ならば、あの世で幸せになろうと、私と無理心中をしようとして、(私の意志はまるで聞かれなかったよ)止めに入った王太子が屋上から落下して死亡。


 三度目は、王太子とカルーアが順調な滑り出し、いい感じに、好感度が高まってきた頃、まさかの郊外へのお出かけイベント失敗、焦ったカルーアが私の悪口を言いふらしたが、タイミングが悪かった。


 あっと間に炎上し、追い詰められたカルーアが私の誘拐を企てて、犯人は捕まり、カルーアも逮捕され、不敬罪で絞首刑。



 そして、振り出しに戻る。


 気が付いたらアストリア王立学園の寮で明日は入学式。


 私にとって4回目の入学式だ。



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