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クレーデレ

作者: Sio2
掲載日:2020/03/24

夕日が射し込む教室に、二人の男女がいた。

「信じてっ! (きょう)、私じゃないの…… 私じゃない!」

恭と呼ばれた男子は目を見開いている。

普段の彼女からは想像もできない、声の大きさや表情、焦燥に駆られる姿を見て、驚愕しているようだ。

状況が掴めていない恭は一歩、後ずさると彼女は(うつむ)いた。

拒絶されたと思ったのだろう。小さな笑い声を上げる。

どこかのネジが外れたように不気味に笑う姿は、恭にとって恐怖でしかなかった。

だが、このままでは話も進まず、彼女が何の疑念を晴らそうとしているのか、わからない。

まずは彼女を落ち着かせるために恭は優しく微笑み、話しかけた。

「美結、落ち着いて話をしよう? 大丈夫、ゆっくりでいいから」

「え、でもっ早く、違うって、わかってもらわないと」

「俺はわかってるから、だいじょ……」

「わかってないっ!! ちゃんとわかってたらっ、恭あんなこと言わない……」

大丈夫の言葉は彼女の怒号で遮られ、萎縮してしまった。

恭の微笑みが堅くなり、自身も怖気づいてしまう。

静寂が場を支配する。

彼女は焦点の定まっていない瞳を右往左往していた。

恭は困惑と恐怖に押し負けそうになるが、彼は決して屈しなかった。

彼を支えるのは、彼女への想いと自身への怒り。

心優しく、穏やかな彼女は分け隔てなく接してくれるため、みんなから好かれている。

そんな彼女が時折、自分にだけ浮かべる照れた笑顔を見て、恭は意識するようになった。

気づけば彼女を目で追い、考え、すきがあれば話しかける。

誰よりも信頼していると彼女が言ってくれた。

それなのに、こんな状態でやっと気づく自分が、許せない。

彼女の信頼を裏切るようなことは、これ以上したくなかった。

恭は大きく息を吐き、話しかけながら彼女へゆっくりと近づく。

「僕は、君を否定しないよ。多分、勘違いしてるんだ」

子供を諭すように、優しく、笑顔を浮かべて。

「うそっ! うそつき!! 恭はうそつきだ! 私をもっと傷つけるために、またそんなこと言って! グルなんでしょ!?」

目を見開き、彼女は力任せに叫ぶ。

心臓が縛りあげられる苦しみを味わいながらも、恭は歩みを止めない。

「僕は味方だよ、誰がなんと言おうと、君を信じ続ける」

二人の距離はあと一歩でぶつかる所まで縮まった。

「なんで? たくさん、うそついて楽しいの? 私が苦しいのを見て、楽しい?」

「嘘じゃない! 僕の目を見て、確かめろよっ!」

恭は彼女の俯いた顔を持ち上げる。

急に怒鳴られた彼女は放心状態になり、恭の目をまっすぐ見つめていた。

しばらく見つめ合うと彼女は涙を浮かべる。

雫が1つ頬を伝う。

すると次々に涙があふれ、声を上げて彼女は泣き出した。

嗚咽(おえつ)混じりの泣き声は聞いてる方も苦しく感じる。

見ていられない恭は彼女を抱き寄せ、落ち着くまで優しく声をかけた。


彼女が落ち着きを取り戻した後、机に座って何故あんな状態になったのか事情を聞いた。

1つ1つ詳しく教えてくれるが、彼女は今も苦しいのだろう、話すたびに顔が険しくなっている。

「大丈夫? 苦しいならゆっくりと休んでから聞くよ?」

「ううん、大丈夫。私が話したいと思ったから話すの。それに今は、隣に恭がいるから心強いよ」

そう言うと彼女は恭と繋いでいる手を強く握った。

素直な彼女に恭は照れる。

恭は嬉しい気持ちともう1つ強い想いが込み上げてくる。

「こんな状況で少しずるいと思うけど……」

恥ずかしくて、彼女の顔が見れない恭。

しかし、弱腰ではいけないとまっすぐ瞳を見つめた。

「ずっと、前から……好きでした。……僕と付き合ってくれませんか?」

そう言うと恥ずかしさのあまり、ギュッと瞳を閉じる。

すると、唇に柔らかい感触がした。


月の光が射し込む教室に、二人の恋人がいた。

三人称とセリフの練習

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