依頼達成
町に帰ってくると空はすっかり赤くなっていて、いくつか星も見え始めていた。
(あんまり遅いとトリアに心配かけるしな。急ぐか。)
そう思い、少し歩調を速めつつも冒険者ギルドへと向かう。
その横を子犬状態のジーズが小走りについてきていた。
しばらくすると、見慣れた石造りの建物が見えてくる。時間の影響もあり人通りの少ない回りとはうってかわって、ここはいつも通り活気に満ちていた。
単純に依頼帰りの冒険者がいるからと言うのもあるが、夕方になるとギルド酒場が開くので人が増えるのだ。
このギルド酒場は冒険者ギルドが経営している酒場で、ギルドを回すための資金集めの他に冒険者同士の情報交換の場としての意味も持っている。酒が回って喧嘩なんかが起きることもしばしばあるが、その辺りの警備もしっかりしているそうだ。
─────まぁ俺は言ったことはないがな。
そんなことは置いておくとして、俺はギルド内の換金所へと向かった。受付と違い、依頼達成の報告と必要であれば納品をしてその分の報酬を受けとる。また、依頼とは関係なくともある程度の素材は買い取ってくれる。
今回はゴブリン討伐に合わせてオークの素材の方もここで換金するつもりだ。
受付の大きさからも想像できるように、換金所もそれなりの数がある。どこもそれなりに混んでいるようだったが、一ヶ所だけ空いていたのでそこに進んだ。
そこのカウンターにいたのは、薄々感じていた通りあのやる気の無い男がいた。
「換金したいんだが、」
「そうすか、あ、ゴブリンすね。」
「覚えてたのか?」
「思い出しただけなんで。とにかく、ちゃっちゃと出してください。」
極力何もしたくないのかそう急かしてくるので、俺は依頼表と討伐部位であるゴブリンの耳を取り出した。
「えーと、1⋅2⋅3⋅⋅⋅⋅⋅⋅合計13匹すね。なんで、6シルバー5ブロンズになるすね。」
そういって机の下から11枚の硬貨を取り出した。
「ついでに換金して貰いたいものがあるんだが」
「はぁ、オークとかすか?」
「なっ!?なんで知ってるんだ?」
言ってないはずなんだが、まさか臭いとかあるのか?気づいてないけど、めっちゃ臭かったりするのか?
そんなことを考えていると、いつのまにか何処かに行っていたらしいジーズが顔に貼り紙のようなものをくっつけて帰ってきた。
抱きかかえて張り紙を外してやると、その貼り紙にはこう書かれていた。
──────────────────────────────────
《よだか森林》付近でオークを確認。一定期間Cランク以下の冒険者の立ち入りを禁ずる。
──────────────────────────────────
「はぁ!?」
よだか森林、それってあの森じゃないのか?
「そうそう、それすね。ゴブリン退治なら《ノビタキ平原》となると近くに《よだか森林》もあるすから、オークにでも出くわしたんじゃないかと思ったんで。」
さっきまでやる気の無さそうだった男は、何やら少し楽しそうだった。
「朝このこといい忘れたんで、どうなったかなぁとおもったんすけど、まさか倒してくるとは思わなかったすよ。どうやったんすか?」
「まぁ、色々な⋅⋅⋅⋅⋅⋅ってそもそも忘れたらアウトだろ!」
「まぁまぁ、大丈夫だったしいいじゃないすか。その分報酬はあげときますんで、ね?」
終始⋅⋅⋅⋅⋅⋅いや、始は違うけどずっとご機嫌な彼はそんなことを言いながら、カウンター下から袋を取り出した。
「んじゃ、ここに素材を入れちゃってください。」
どう見ても全て入る気がしないが、たぶん俺のアイテムボックスと同じようなものだと思われる。実際素材を入れてもいっぱいになる様子はなかった。
「えーっと、メーターの値に少し色をつけて、きっかり15ゴールドぐらいすね。どーぞ。」
「あ、どうも。」
そして彼は、今度は金色に光る硬貨を15枚取り出した。
「ではまた。」
「そうすね。では、」
簡単な別れの挨拶だけしておいて、俺は換金所を離れた。さっきの数分でよりいっそう人が増えたので、地面からジーズを拾い上げて冒険者ギルドを後にし⋅⋅⋅⋅⋅⋅
「お、おい!」
ようとしたら、あいつがいた。相変わらず「お、おい!」の定型文で話しかけてくるのは、ファルカ・ホークスぐらいである。
「はぁ、なんだ?」
「そ、そんなにあからさまに嫌そうにしなくても⋅⋅⋅⋅⋅⋅。と、とにかく、お前パーティーを追い出されてまだ冒険者やってるのか?」
「だからなんだ?」
「はは、可哀想なもんだな!もしそうなら、私とパーティーでも⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
「急いでるんだ、もういいか?」
「っ⋅⋅⋅⋅⋅⋅!」
朝会わなかったからすっかり油断していた。けど今は相手をしている暇など無い。早く帰らないとトリアが心配するからな。それに晩御飯も楽しみだ。
そんなわけで、今日も彼女を撒いて足早に家に帰ろうとするが、
「ま、待て!」
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅だからなんだ?用件があるなら早くしてくれ。」
「大切な⋅⋅⋅⋅⋅⋅そう!大切な話があってな!少しだけ時間を貰え⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「生憎忙しいんだ。」
嘘ではない。こっちは早く帰ることに忙しい。
「くっ⋅⋅⋅⋅⋅⋅な、なら家までついていくぞ!」
「はぁ!?ま、まさか、ストーカーか!」
「なっ、なわけないだろ!話があるんだ!⋅⋅⋅⋅⋅⋅ほら、そこの犬についての。」
そうやってファルカに指を指されたジーズは、こっちを見てきょとんとしていた。
「ま、まぁストーカーってのは冗談だが、ジーズについて、か?」
「そ、そうだ!」
なんの話かはわからないが⋅⋅⋅⋅⋅⋅仕方ない。
「わかった。こっちだ。」
「あ、あぁ!」
俺の答えに機嫌が良くなったようで、ファルカはスキップでもしそうな(してはなかったが)雰囲気で俺の後ろをついてきていた。
いつも通りの帰り道を通り、俺は《四十雀》に着いた。入って少ししたところの扉をノックすると、『はーい!』という高めの声が返ってくる。
「誰かいるのか?」
「まぁな。」
そうとだけ返事して少し待つと、扉が開きトリアが出てきた。
「おかえ⋅⋅⋅⋅⋅⋅ってだれ!」
「ただいま、あとこいつのことは気にしないでくれ。ちょっとしてから追い返す。」
「なっ!話が違うぞ!」
「違わないだろ。話があるならすぐに話せ、終わったら帰れ。」
「え⋅⋅⋅⋅⋅⋅?え?」
「トリア、ほんと気にしなくていいからな。」
「「いや、気になるでしょ!(だろ!)」」
「そ、そうか?」
別に話をするだけだから、いいと思うんだが。
「そんなに言いたくないってことは⋅⋅⋅⋅⋅⋅ま、まさか、彼女!?」
いつの間にかトリアはそんな結論を出していた。
「ほら、お前のせいで誤解を招いたじゃないか。」
「いや、絶対私じゃないだろ!これは絶対⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「あ、そういや話があるんだがあるんだったな。とりあえず中に入れ。トリア、入れてもいいか?」
「え、うん。」
「まだ私が話してる⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「さて、入ってくれ。」
「っ!くぅぅ!」
何がそんなに不満だったのか、俺に対して恨みがましい目を向けていた。
どうせ話が終わればおさらばだ。すぐ終わらせて追い返そう。
最初の方に書くつもりだったのですが、真っ黒で隻眼の犬の正体は、
「想像」スキルで異世界最強
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を読んでいただければ分かりますよ!(PRも兼ねて)
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