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ジョブ診断

キャッ、キャッ!あはははは───────。


ここはギルド内に設置されている《ジョブ診断施設》だ。ギルド内部なので、石造りであることは変わらないが、子供が多いため怪我防止のために床には淡いオレンジ色の絨毯を敷いてある。


ジョブ診断施設は名前の通りジョブ(・・・)診断(・・)する施設なのだが、ここでまず、ジョブ、とは何かについて話しておこう。


《ジョブ》とは、その人のスタイルを表すもの、と表現される。


普通は、幼いうちにジョブ診断をしてそれに合わせたジョブを使うようになる。ジョブを持ったからといって何かが変わる訳ではないが、適性以外のジョブを使う人はほとんどいないだろう。


例えばだが、診断によって筋力が優れていれば、《拳闘家》、俊敏に優れていれば《軽剣士》、魔力に優れていれば《魔術師》などがある。


これらは単純な例で、他の要素も含めてジョブは診断される。


勿論、ジョブは戦闘職だけではない。デバフを使う《黒魔道師》や戦闘とは全く関係のない《商人》といったものまである。


結局はその人の得意なジョブになるわけである。


さっき"普通は(・・・)"としたわけだが、それは俺がジョブ診断をしていないからである。


理由は考えてもらえばわかると思うが、少し前に話した通り俺が代々続く剣士家系だからだ。家族にも、回りの人にも『《剣士》以外ないだろう。』と言う風に思われており、事実、妹のほうはそれで上手くいったのである。


閑話休題、と言うわけでまずはジョブ診断をしようと思ったのだが、場違い感が異常値である。


回りには診断待ちの幼い子供たちがキャッキャッと遊んでおり、付き添いの親御さんたちからは『不審者かしら?』という冷たい目線が送られる。


下手に動けば本当に不審者扱いされる恐れがあるので、端にある椅子に座っておとなしく待っておくことにした。


ジーズは俺の膝の上でおとなしくしている。時々子供が『わんわんがいる~』といいながらよってこようとするが、親に止められていた。


『番号47番でお待ちの────ちゃん。お入りください。』


奥の扉から出てきた職員と思われる女性が手元の紙を読みながら番号を呼ぶ。少しして、一人の女の子とそのお母さんが部屋に入っていった。


それから30分ほどしてそれなりの人数が診断を終えた頃、


「番号63番でお待ちのリヴァルくん。お入りください。」


俺の番が回ってきたようだ。ジーズを抱きかかえ、席を立って扉の方に向かうと周囲から、そして職員の人からもギョッとした顔で見られた。


「え、えーっと、リヴァルくんのお父様ですか?」


「いや、俺がリヴァルだ。診断を頼む」


「え?は、はい。こちら、です⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


職員さんは、終始腑に落ちない様子ではあったが、(騎士団(警察)に通報されたりしないだろうか?)と内心少しひやひやしていた俺をちゃんと診断室まで連れていってくれた。


診断室は少し薄暗く、床には直径2メートルほどのジョブ診断用の魔法陣。その横には一人の女性が立っていた。


女性、というよりは少女と表記する方が正しいだろうか。肩まで届かない内巻きぎみの銀髪に黒縁のスタンダードな眼鏡をかけている。身長は165ぐらいだろうか、俺の肩ぐらいまであり、トリアよりは少し高いだろう。


「大きなお友達ですね。」


「そんな言い方をすると誤解される。俺は決してそんなやつではない。」


「うふふ、冗談ですよ。診断ですね?さぁこちらへ。」


「わかった。ジーズはここで待ってろよ。」


ワン!


掴みから冗談を入れてきたが、どことなく上品さを感じる彼女がジョブ診断をする《鑑定士》だろう。このジョブは、物の性質や材料、また今回のように魔法陣を使えば生き物の鑑定も行えるジョブだ。


彼女が指示する通り、俺は魔法陣の中心へと向かう。


「それでは始めましょう。」


彼女が魔法陣に手を置く。すると、足元に張り巡らされたそれらの線が白く輝き始めた。


「ほぅほぅ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。診断が終わりましたよ。」


輝きが消えると共に彼女はそう言った。


「結果は?」


「リヴァルさんの適性ジョブ、それは⋅⋅⋅⋅⋅⋅



      《加護師》です。」


「そうか⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


長い間の後聞こえた《加護師》という言葉に、俺は落胆の気持ちを押さえられずにいた。


《加護師》主に仲間の能力上昇、つまりバフを使うジョブである。バフを使うのは《白魔道師》もあるが、加護師のほうが種類が多く、最初から全ての加護が使用できる半面、威力が白魔道師に対して大きく劣る傾向にある。


そして、最大の難点はジョブレベルを上げるのが難しいことにある。


ジョブレベル、一般に熟練度などとも呼ばれ、ジョブに関する動作を行うことで上昇、それに応じてジョブの能力も上がっていく。


戦闘職であれば、魔物を倒す、鍛練する、などで上がるのだが、非戦闘職は魔物を倒しても上がらないのだ。


白、黒魔道師の場合、効果が大きいため仲間も見つけやすい、またそれらは自分の魔力が関係するため、魔力を増やす鍛練などをすれば自然とレベルも上がる。


しかし、加護師は加護する人数、範囲、同時使用数の制限がある代わりに魔力を消費しない。つまり、魔力トレーニングでもレベルは上がらないのである。また、自分には加護をかけられないので、やはりレベル上げはできない。


こういった理由から、加護師はハズレジョブ(・・・・・・)とされる。


今回のジョブ診断で何かが変わるんじゃないか、という淡い期待を抱いていた俺にとっては、落胆せざるをえない結果だった。


「次に、細かい能力について調べますね。」


そういって、彼女は再び魔法陣に手を置いた。


細かい能力というのは、さっきの加護する人数、範囲、同時使用数についてだ。


加護師は、加護を使用する際に《指命加護》と《範囲加護》を選ぶ。《指命加護》は対象を選んで加護し、加護できる人数が決まっている。《範囲加護》は、自分を中心とした円の中であれば人数制限なく加護でき、その範囲が決まっている。ちゃんと敵対しているものにはかからないようになっている。


前者は離れていても使用可能、後者は人数による制限がないことがメリットだ。


そして、同時使用数というのは、一度に使用できる加護の種類の制限である。


これらは、一般的に3人、半径10メートル、2つ、ぐらいで、高くても5人、半径15メートル、3つ、といったところだろう。


また、加護による能力上昇も最初は×1.1ぐらいしかない。そのせいでレベルを上げる機会すら得られないのだ。


因みに白魔道師は×1.5ぐらいである。


白く輝いていた魔法陣が徐々に光を失っていく。どうせ散々な結果になるだろうと予想していた俺は、鑑定を終えた彼女の様子を見て驚愕した。


なんと、彼女はうつむいてわなわなと震えていたのだ。


「ど、どうした!?」


「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅で⋅⋅⋅⋅⋅か⋅⋅⋅⋅れは。」


「な、なんだって?」


か細い声で何かを呟く。それは俺の問いに答えようとしたのではなく、単純に今の彼女の気持ちを表しているのだと思われた。


そして、少しして震えていた彼女が突然の顔をあげたと思えば、俺に向かって、


「な、なんですか!この化け物みたいな能力は!」


「ば、化け物?」


初対面にその言い方はないだろう。だが、さっきまでの上品さはどこにいったんだと言わんばかりの豹変ぶりに、俺は何も言えず彼女の話を聞いていた。


「あ、あり得ないです!加護人数50人!加護範囲半径200メートル!同時加護使用数5つ!そ、それに能力上昇率が×3.0!?化け物ですよ!」


「は、はぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


わふ?


機関銃のようにまくしたてられ、なんと返したらよいか分からない。いつの間にかジーズもこっちに来ていて、『どうしたの?』というかのように首を傾げていた。


ただ、彼女がこれほどまでにおかしくなっている理由も理解することができた。


俺の加護師としての能力が異常であったということだ。つまり、俺は才能がなかったのではなく、剣士としてはダメだったが、加護師としてなら最強だったというわけである。


「こ、これは報告が必要ですね!またこんど話を聞かせてもらいますので、その時はお願いしますね!では!」


そういって、彼女は部屋の横にあった扉から出ていった。


ガチャ


戻ってきた。


「こ、これ、忘れてました!私冒険者ギルドオナガ支部鑑定士、ハシビロ・コウカルです。それでは!」


戻ってきたや否や素早く名刺をわたされ、すぐにに扉から出ていってしまった。


わふわふ!


ジーズが俺のズボンの裾を引っ張る。『早く帰ろ』といったところか。


「そうだな。今日はもう帰ろう。」


やることも終わり、俺はそのまま宿《四十雀》へと帰ることにした。


因みに、また今度会うと言っておきながら俺の居場所を聞かれなかったことを思いだし、後日もう一度ここに来ることになったというのは余談である。

ジョブ診断が終わりましたよ!

次回からはそろそろ戦闘リヴァルはできないけどに入りたいと思います。


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『ワン!』だけでも良いから感想をください!



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