晩御飯
「いやぁ、旨かったなぁ」
「でしょぉ!」
トリアがどや顔で無い胸を張る。
トリアが作った晩御飯は「肉じゃが」だった。ポピュラーな料理ではあるが、煮崩れや味が染みないといった問題のある、少々手強い料理でもある。
これをトリアはさっきの短時間で、且つ理想的な肉じゃがを作り上げたのだ。
「料理が得意だなんて、意外だったな。」
「し、失礼な!私だって料理ぐらいできるもん。」
正直、意外ではあったのだが、普通に店を出せるレベルじゃないだろうか。
「それに、新婚で料理って言ったら肉じゃがだしね~。」
「新婚ではないけどな?」
「冗談に決まってるじゃん。まぁ、リヴァルがしたいってゆうなら、してあげても⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
何か言っていたようだが、最後の方はごにょごにょとしか聞こえなかった。
なぜかトリアが俯いてもじもじとしてしまったので沈黙ができる。
(結婚かぁ)
そんな中、俺はさっき『新婚』という言葉について想像を膨らませていた。
(冒険に行って、帰ってきたら『おかえり』って迎えてくれる人がいる。それに、温かいご飯⋅⋅⋅⋅⋅⋅。)
「結婚、いいなぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
「え?」
つい漏れてしまった心の声に、トリアが反応する。
「け、けけ、結婚、したいの!?」
「あ、すまん。ちょっと想像が言葉に出てしまった。」
「な、何想像してたのよぉ!」
耳まで真っ赤にして、トリアは後ろを向いてしまった。
う~ん。どうしたものか。
たぶん今話しかけても逆効果だろう。そう思い悩んでいると、ジーズがこっちを見て「まかせろ」とでも言いたそうな顔をしていた。
まぁ俺の主観ではあるが。
すると、ジーズはトリアのところへトコトコと歩いていき、
ペロッ
「ひゃぅ!」
頬っぺたを舐めた。突然だったからか、トリアが変な声を出して驚いていた。
それでも止めず、ジーズはペロペロし続けた。
「ひゃっ、や、やめてぇ~。あは、きゃはははは⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
そんな光景を見ていると、ジーズがチラッ、チラッとこっちに目配せした⋅⋅⋅⋅⋅⋅ような気がした。
(そうゆうことか。)
やっとその意図を理解した俺は、トリアに近づいてペロペロしているジーズを抱き抱えた。
「はー、はー、リヴァル、ありがと。」
笑いすぎて息が上がったのか、トリアは途切れ途切れでそう言った。
「いや、大丈夫だ。うちのジーズがすまない。」
「もぅ、ジーズはここで飼うんだから、私のペットでもあるんだよ?」
まぁ、そうだな。
とにかく、ジーズのおかげで変な空気を脱することが出来た。
心のなかで感謝しておく。
肝心のジーズのほうは、肉じゃがの皿を鼻でツンツンしていたが⋅⋅⋅⋅⋅⋅
それを見たトリアが、何か納得したようで
「急にペロペロしだしたと思ったら、お腹が減ってたんだね。」
そう言うと、再びキッチンで何かを作り始めた。しばらくすると、手に小皿を持ったトリアが戻ってきた。
「ジーズ、晩御飯だよ。」
そう言って出されたのは、
「炒飯か?」
「正解!味は薄くしてあるから犬でも大丈夫なの。じゃあ、ジーズ、おすわり!」
わふ、
「待て⋅⋅⋅⋅⋅⋅よし!」
かふかふかふ⋅⋅⋅⋅⋅⋅
可愛い音をたてて炒飯を食べていく。
「やっぱりお腹が減ってたんだね。」
「みたいだな。」
そんなこんなで、あとは他愛もない話をしてから寝ることになった。
ジーズは俺が寝るより先にベッドに潜り込んで丸くなっていた。猫か?
因みに二つ並んだベッドについてだが⋅⋅⋅⋅⋅⋅
「場所もないし、仕方ないじゃん?それとも、二人で寝るの、恥ずかしいの?」
とのことだった。いや、恥ずかしい訳ではないのだが。ただ、女の子としてどうなのかと思っただけであって、
そう弁解しようと思ったのだが、その時には、
すー、すー
ふすー、ふすー
ジーズと同様に寝てしまっていた。
仕方なく、俺もジーズを起こさないようにしつつ寝ることにした。
◆
翌朝、トリアが作ってくれた朝食を食べた後、ジーズを連れて朝から出掛けていた。
行き先は、冒険者ギルドである。
町の中心部にある冒険者ギルドは、石造りの頑丈な建物である。何かしら災害があったときに臨時避難所として使うから、とのことらしい。
俺が冒険者ギルドにきたのは、ある目的があってなのだが、まぁ後でいいか。できるだけ早く済ませたいしな。
ジーズを抱き抱えてギルドの中に入る。すると、ざわざわとしていた回りの雰囲気が突然変わった。
ざわざわとしているのは変わらないが、耳を澄ませてみると、
『あいつまた来てるのか?』
『この前もパーティーを追い出されたらしいぜ。』
『いい加減やめるべきよね』
こんな感じである。俺の噂、所謂めっちゃ弱いって話だが、この町にも広がってしまっている。
俺自身がそこまで気にしている訳ではないのだが、気分が良くはないからな。
陰口は叩かれるが、直接言われる訳ではない。なので、無視しておけば普通に受付までたどり着⋅⋅⋅⋅⋅⋅。
「お、おい!」
あ、前言撤回だ。こいつ以外は、話しかけてこない。
「お前、またパーティー追い出されたんだろ?」
「そうだが?」
どうでも良さそうに答える。
短く切り揃えた茶髪に鷹のように鋭い目をしている。背はスラッと高く、腰には構えたらとても似合うんだろうなぁという細い長剣をつけている。
彼女はファルカ・ホークス。出会うたびにこんなことを言ってくるめんどくさい女だ。
俺のイメージではそんなところだが、冒険者としては一流らしく、数少ないAランク冒険者の一人とのこと。
「まだ冒険者を続けるのか?」
「それがどうした?」
「はは、可哀想なもんだな!もしそうなら、私とパーティーでも⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
「もういいか?俺は急いでるんだ。」
何か言いかけたようだが、わざわざ聞く必要もない。俺は無視して受付に向かうことにした。
「あ、あぁ⋅⋅⋅⋅⋅、」
早足で受付に向かう。空いているところを選んで受付係の人に話しかける。
「ちょっといいか?」
「依頼っすか?」
受付はやる気の無さそうな若い男だ。
「いや、違う」
「じゃあなんすか?」
そして、少し前から考えていたことを実行にうつす。
「適性ジョブを調べたいのだが。」
「はい?」
次話、適性ジョブが分かります。
やっとお話の始まりに立つ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。
小説のタイトルが少し分かりにくいかなぁ、と思います、何か言い案があれば教えてください!