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四十雀(シジュウカラ)

更新、遅くなりました。その分少し長めです。



ユーザー名変えました。

「おかえり~。遅かったねぇ、どうしたの?」


「まぁ、色々あってな。」


木の暖かみってやつだろうか。ほんわかとした雰囲気のあるこの建物は、《四十雀(シジュウカラ)》俺が拠点としている宿である。


部屋は少し狭くて少し古いものばかりではあるが、雰囲気もよくてやはりリーズナブルなのがいい。一泊朝食付きで4シルバー、夕食も追加でつければプラス5ブロンズである。


あ、因みにお金の単位について説明しておこう。したから順に、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨がある。過去は一番下に青銅貨もあったらしいが、価値が低いのでほとんど使わず、廃止になったらしい。


あと、金貨の上にも、大金貨、白金貨と言うのがあるらしいが、使ったこともなければ見たことすらない。どちらも国同士のやりとりで形として渡すぐらいにしか使われないからだ。


よって、俺たちが使うのは鉄貨から金貨のうちになる。それぞれ、アイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールドの単位を使い、一つ段が上がるごとに価値が10倍になる。つまり10枚集めれば一つ上の硬貨1枚に相当するわけだ。


閑話休題、目の前でクリッと大きな目を爛々と光らせているこの少女。耳を隠すぐらいの長さの髪は内側に軽く反っていて、その茶髪が天井の光をキラキラと反射している。


子供らしい髪や顔に合って身長も小柄で、俺の胸ぐらいまでしかない。まぁ俺の身長は180㎝近くあるのでそれなりに高くはあるのだが。


⋅⋅⋅⋅⋅⋅あと、彼女はアレ(・・)もない。所謂「まな板」というやつだが、言うと殺される。


「ちょっと、何か変なこと考えてたでしょ?」


「そんなことは⋅⋅⋅⋅⋅⋅ない。」


「何ですか~、さっきの間は~。」


言葉を濁した俺に、頬を膨らませて仏頂面をした彼女は、この《四十雀》のオーナーの娘であるトリア、16歳だ。


姓はバードルノで、この宿は代々バードルノ家で受け継いできているらしい。ちょっと古くさいのもそれが理由だ。


個人的にはこれぐらいが丁度いいが。


「何?隠し事ですか~?」


「そんなものなどない。あったとしても、あんたには話さん。」


あとちょっとしつこいやつだ。


俺は後でスライムの死骸を売りに行くので、他の荷物を置きに部屋へ向かう。といっても装備はないので、腰に着けた小さなポーションバッグだけなのだが。


なぜかトリアもついてくるので、軽くあしらいながら進んでいると、彼女は突然俺の前に回り込み、真面目な顔でこう言った。


「どうしたの?何か辛いことでもあった?」


「いや、特にない。」


実際はパーティーを解雇され、子犬も押し付けられ散々だったのだが、いちいち言う義理もない。


「その、悲しいことがあったんだったら、私でよければ使ってもらっても⋅⋅⋅⋅⋅⋅いいよ?」


「はい?何言ってるんだ?」


どうやって使えと?生憎他人を使って気持ちを静める方法など持ち合わせていない。


「そもそも俺は悲しくなどない。まぁ何もなかったわけでもないが、あんたに言う必要もない。」


「そ、そっか、あはは⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


非常に分かりやすい空笑いをしている。ん?これはつまり、


「トリア」


「は、はい?」


「トリアの方が、なんか悲しいことでもあったのか?そんな回りくどいことしなくても、話ぐらいなら聞くぞ?」


たぶんこれは「慰めようとしているふりをして、自分が悲しんでいることに気づいてもらおう」作戦だ。危ない危ない、気づかずに放置するところだった。


「で、どうなんだ?」


「⋅⋅⋅⋅⋅⋅あ、あったよ!ついさっきね!け、けど、リヴァルには言わない!ぜっっったい言わないから!」


と言って帰ってしまった。まぁ仕事中なのだから帰るべきなのだろうか⋅⋅⋅⋅⋅⋅解せぬ。


少し先の曲がり角でトリアの姿が見えなくなる直前、大事なことを思い出した。


「あ、トリア!待ってくれ。」


「はい。なに?」


「おぉぅ。」


あれ、さっきまでの向こうの角にいたよな?いつの間に俺の目の前まで⋅⋅⋅⋅⋅⋅。


「で、何か?」


「あ、あぁ、一つだけお願いがあるのだが、」


まだ言葉にトゲがあるが、気にしていてもしょうがない。


「後で少し時間をくれないか?二人(・・)で話したいことがある。」


「っ!⋅⋅⋅⋅⋅⋅ひゃ、ひゃい。わかりまひたぁ!」


あれ?どうしたんだろうか。


まぁ約束はとれたし、手早く荷物だけ置いてスライムを売りにいこう。外にはアイツ(・・・)も待たせてるしな。




その後、ここのオーナーから「娘が凄く嬉しそうにあなたの名前を呟いていたけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅なんかあった?」と言われて「は?」ってなるのは、また別の話。







「う~ん⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


魔物換金所 兼 冒険者ギルドからの帰り、俺は唸っていた。


別に換金がうまくいかなかった訳ではない。数も多かったおかげで1ゴールドの収入を得ることができた。まずまずの収入だろう。


そんな俺が今悩んでいること、それは⋅⋅⋅⋅⋅⋅


「やっぱり、ポチか?」


グルルゥゥゥ


「じゃあクロ」


ガウゥゥ


「タマ?」


フシャャァァ


それは猫の威嚇だと思うのだが⋅⋅⋅⋅⋅⋅。


そう、悩んでいるのはこの子犬の名前だ。いつまでも「子犬」じゃ大変だし、飼うなら名前ぐらいつけてやらないといけない。

ただ、これが異常に難しいのだ。


再び頭を悩ませていると、いつの間にか《四十雀》へと帰ってきてしまった。


「まぁ、後でいいか。」


ワゥッ!


分からないものは仕方ないと思い、宿の中に入ろうとすると扉の前にトリアが立っていた。


「あ、リヴァル。そ、その、時間はとって貰ったけど、今からでもいいかしら?」


「あ⋅⋅⋅⋅⋅⋅あぁ、丁度いい。他にも聞きたいことが出来たからな。じゃあちょっと裏に来てくれ。」


「う、裏!そ、そんな人気の無いところで、もしかして、リヴァル、私を襲う⋅⋅⋅⋅⋅⋅」


「早く来いよ。色々とあるんだから。」


「は、はいぃ!」




宿の裏に来た。人気もないし、ここならいいだろう。


「そ、それで、お願いって言うのは?」


「あぁ、まず聞きたいんだが」


トリアと向き合った形で話す。なぜかトリアがハァハァと荒い息をしているが、大丈夫か?


「この宿って、ペットは飼えるのか?」


「え?」


「だからペットは飼えるのか?」


なんでそんな「期待はずれ」みたいな顔するんだ。別に期待させるようなことをした覚えは無いぞ?


「あ、えーっと、ダメ、だったと思う。」


やはりそうか。


「ならもう一つ、近くにペットの飼える宿はあるか?」


「ペットの飼える⋅⋅⋅⋅⋅⋅《雷鳥》って宿だったら飼えると思うけど。急にどうしたの?」


「それが、これからこいつを飼うことになってな。」


そう言って地面から子犬を抱き抱える。


「わっ!い、犬?どこから出てきたの!?」


「え?ずっと足元にいたんだが?」


そういって足元を見ると、真っ暗だった。あぁ、たぶんこいつ黒だから同化してたんだろうな。


とにかく話を進めよう。


「それで、この犬を飼わなきゃなんないから、この宿を出ようと思う。」


「ええっ!」


仕方ないことだ。この宿は気に入ってたんだがな。雰囲気もいいし、オーナーとも仲良くなったのにな。そう考えていると、


「ちょ、ちょっと待って!お願い、出ていかないで。」


「え?でもペットが飼えないなら仕方ないだろ。こいつを捨てることは出来ないし。」


飼うことは決定事項だからな。


「それに、客がいない訳じゃないんだから、別に困らないだろ?」


別に俺以外に客がいないわけでもない。どちらかといえば繁盛しているほうだろう。俺一人抜けたところでさほど変わりはないのだが⋅⋅⋅⋅⋅⋅。


「わ、私が困るの!とにかく、お父さんとお母さんに聞いてくるから。」


そう言って数分後、トリアは走りながら帰ってきた。


「はぁ、はぁ、聞いてきたよ。」


「そうか、ダメだったか?」


「さすがに、客室ではダメだって言われた。」


やはりそうだろうな。物を壊されても困るし、臭いもつくだろう。


「けど⋅⋅⋅⋅⋅⋅私の部屋でならいいって。」


「は?」


「だから、その子を私の部屋で飼うならいいって言ってたの。」


なぜそこまでするんだろうか?これだと迷惑をかけることになってしまう。


「そうか。けど、それだと迷惑をかけることになるし、できればそいつは手元に置いておきたい。出掛けるときに連れていくからな。」


そうなると、トリアの部屋に預けて(・・・)おくのは良くないだろう。


「だから、やっぱりこの宿を⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


そう言いかけたところで、トリアに遮られてしまった。


「なら私の部屋に住めばいいよ。」


「はぁ?」


「そうすればペットを飼ったままここにいられる。二人で住む分宿泊代は半分でいいし、いいことずくめだよ?」


ふむ、確かにそこだけ見れば俺にとって良いことばかりだ。だが、


「それは、大丈夫なのか?俺の主観だが、トリアは他と比べても『可愛い』部類に入ると思う。それもだいぶ上位のところだな。」


「ひゃ、ひゃい!?」


「それなのに、そう簡単に異性を自分の部屋に住ませようなんて、大丈夫なのか?俺はする気はないが⋅⋅⋅⋅⋅⋅人によっては襲われるぞ?」


俺だって、嘘をついている可能性だってある。それに、途中で魔が差す可能性だって⋅⋅⋅⋅⋅⋅あるかもしれない。それをそう簡単に信用していいのか?


「そ、その、リヴァルならそんなことしないって知ってるもん。それに、リヴァルにならされても──────。」


最後の方は聞こえなかったが、思ったより信用してくれているようだ。


「そうか、なら信頼を裏切らないようにして、お言葉に甘えさせてもらってもいいだろうか?」


「ほ、ほんと!やった!」


なぜトリアがそこまで喜んでいるのかはよくわからないが、俺としては問題が一つ解決して良かった。


「じゃ、早速私の部屋に行こー!」


そう言って、トリアは俺の腕を掴んで引っ張っていく。足元には子犬がトコトコとついてきていた。


「あ、その前に、行きながらでいいから聞きたいのだが」


「なーに?」


あともう一つ聞きたいことがあるので、そっちも言っておこうか。


「こいつの名前、一緒に考えてくれないか?」

細かい描写、出来ているでしょうか?

次回から、ジョブ変更に入っていくと思います。



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