ファルカの隠し事?
トリアがお風呂に入った(逃げ込んだ?)後、俺は言われていた通り晩御飯を食べていた。
キッチンに準備されていた晩御飯をテーブルに運ぶ。ご飯を前にテーブル横に座ると、下で丸まっていたジーズが膝の上へと移動する。
また猫みたいな⋅⋅⋅⋅⋅⋅(以下略)
今日のメニューはシチューだ。パンも一緒においてあったので、ちぎってシチューにつける。そして、汁をこぼさないようにしつつ一口で頬張った。
─────ゴクッ
「ふぅ、相変わらずうまいな。」
今度はスプーンでシチューその物を食べてみる。
口に入れると、パンのときとは違う、肉や野菜のうま味が広がった。
宿屋の娘ということもあってなのか、やはりトリアのご飯はうまい。
料理以外に関しても家事全般得意なようで、いつも部屋は綺麗な状態をキープ、それどころか日に日に綺麗になっているようにも見える。
それでもってあれだけ可愛ければ、将来もさぞ美人になることだろう。
トリアの将来の夫となるであろう誰かはとても幸福者だな。
そんな娘の成長を見守る父親のような気分で思いにふけていると。
─────ゴンッ
「ん?なんの音だ?」
どこからともなく鈍い音が聞こえてきた。回りをキョロキョロと見回すも、それらしいものも見当たらない。
─────ごぉんっ!
「ほ、ほんとに何が起きてるんだ?」
ほとんど中身のなくなったシチュー皿にスプーンを置く。
今度の音はさっきよりもくぐもった音だった。が、やはり出所が分からない。
さすがに気になったのか、重い頭を気だるそうに持ち上げるジーズ。
『何とかしてよ』と言わんばかりにこっちを睨んでくる。
「そんな顔されてもなぁ。」
原因も分からんからな。
そう伝えると、ジーズは渋々といった感じで再び俺の太股を枕にして寝始めてしまった。
「ん、ご馳走さま。」
すっかり冷えてしまったが、それでもなお美味しいトリア特製シチューを食べ終え、不機嫌そうなジーズを一旦押し退ける。
シチュー皿とスプーンをキッチンに片付け、未だに上がってこないトリアをジーズと待っていると。
─────ドンッ!
「また⋅⋅⋅⋅⋅⋅という訳じゃ無さそうだな。」
何かが落ちるような音。さっきまでとは違い、今度はすぐに出所を感知できた。
目が覚めてしまったのか、強い人の気配を感じたからか、徐に俺の足から降りたジーズが音の出所へと向かう。
行く先は、寝室の扉だ。
順を追うようにして俺も立ち上がったところで、寝室の扉が開く。
「んくぅぅ~、んん~?」
「やっと起きたか。ファルカ。」
─────クゥ、わふわふ。
その奥には、いつもの綺麗に伸ばした茶髪はどこへやら、あっちこっちに跳ねまくり、やや目の回りを赤く泣き腫らしたファルカが寝ぼけ眼で立っていた。
足元には、ファルカは仲間だと理解しているようでジーズが纏わり付いていた。
当の本人はというと、俺の顔を見てコテンと首傾げたのも束の間、状況を理解したようでいつものキリッとした目に戻り、尚且つ急激に青ざめていった。
「わ、わわ私は、なぜこんなところに⋅⋅⋅⋅⋅⋅!」
「人のベッドで勝手に寝ておいて、こんなところとは酷い言い方だな。」
「ひ、人のベッド!?」
「そうだろ。さっきまで俺のベッドで泣きながら寝てたじゃないか。枕も涙でびしょじょだしな。」
「⋅⋅⋅⋅⋅⋅っ!」
一瞬の間の後、青ざめていた顔が嘘かのように、今度は耳まで真っ赤に染まっていく。
「ほ、ほんとにすまない!ちゃんと洗濯代も出す!」
「いや、それは大丈夫だ。軽く洗えば済む。」
別に汚いものでもないしな。
「で、でも、よりにもよってリヴァルのベッドででこんなことを⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
何やらボソボソと呟いていたが、あまり聞き取れなかった。
とにかく、顔を真っ赤にして『恥ずかしい』と思って貰えたなら良かった。
パーティーメンバーとは言えまだ互いのこともほとんど知らない赤の他人、且つ異性だ。
俺はそうでないにしろ、まだ信頼の置けない男の家で寝ているなど襲われてもおかしくない。
ファルカほどの冒険者ならば返り討ちに出来るかもしれないが、万一のことも考えて今回のような行動はするべきじゃないだろう。
「まぁ、分かってくれたならいい。とりあえず、座って話をしよう。」
これ以上この事に関して問い詰める必要はない。それに、最も重要なことを聞けていないので、ファルカにはテーブルの向かいに座ってもらった。
歩いていくファルカにトテトテとついていくジーズだったが、ファルカと俺が座ったのを見て俺の方に戻ってくる。
『撫でれ』とばかりに太股と手の隙間に顔を押し込んで来るので、一度抱えて脚の間に下ろし、頭や背中やらを撫でてやった。
ジーズが落ち着いたところで、やおら顔をファルカの方に向ける。
まだ顔は赤くなっているが、髪の方は気付いたのか手櫛でさっと直されていた。依然、所々跳ねてはいるが。
「それで?何で俺のベッドで寝てたんだ?それも泣きながら。」
一度体勢を直し、本題に入る。
「えっ⋅⋅⋅⋅⋅⋅それは、だな⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
聞いてみたは良いが、やはり言いにくい事なのか言葉が詰まる。が、ここで引くわけにもいかず、少し強めの姿勢で問い詰めた。
「なんだ、疚しいことでもあるのか?」
「はぅ⋅⋅⋅⋅⋅⋅そ、そうゆうわけでは、ない⋅⋅⋅⋅⋅⋅たぶん。」
なかなか口を割らない。
無言が続くこと数秒間、堪えかねたのかおどおどとしつつも話し始めた。
「リ、リヴァルと別れた後、トリアになぐさめ⋅⋅⋅⋅⋅⋅会いにここに来たんだ。」
その後の話を要約すると、やることのなくなったファルカはトリアと雑談をしているうちに眠くなってしまい、ふらふらと眠りに行ったのが俺のベッドだったという。
「ふ~ん。じゃあ⋅⋅⋅⋅⋅⋅なんで泣いてたんだ?説明がなかったぞ。」
「そ、それは⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
やはり作り話か。
いくらなんでも話に粗が目立ちすぎる。これなら相当鈍感なやつでもない限り引っ掛からないだろう。
ここで最後の追い討ちをかける。
「俺たちはなって短いにしても、パーティーペアなんだろ?隠し事は無しにしようぜ。」
根っからの真っ直ぐな性格のファルカのことだ。勿論騙すわけではなく、俺の本心でこう思ってはいるが、情に訴えるようなことを言えば、ファルカは本心を打ち明けてくれるはず。
そして、案の定うっすらと目を潤ませたファルカが、徐に口を開く。
「す、すまなかった、うぅぅ。⋅⋅⋅⋅⋅⋅分かった、ほんとのことを言おう!だが、それが何であっても、受け止めてくれるか?」
「それは、愚問だろう?」
「そうだな。じゃあ言わしてもらおう。私はな⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅好きなんだ!リヴ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「お、お風呂あがったよ~!」
ファルカがなにかを言い切る前に、お風呂場から寝間着に着替えたトリアがやって来る。
やっとファルカが本当のことを言ってくれていたというのに。まぁ、トリアにも聞いてもらえばいいか。
「トリア、今一度ちょうどファルカが何で泣きながら寝てたのか教えてくれてるところでな。」
「え?そ、そうなの?」
トリアがおどおどと不安そうな顔でファルカを見る。
ファルカのほうは、話の腰を折られたせいかそのままでフリーズしていた。
「話によると、ファルカは好きなんだとよ。」
「す、好きぃ!?」
トリアが、異常なほど焦った様子で叫ぶ。
「なぁ、ファルカ?」
そう問いかけると、やっと解凍されたのかファルカがぎこちなく話し出した。
「そ、そうなんだ!私はな、『武器』がすっごく好きで、すばらしい武器に目がないんだ。」
「なんだ、そうゆうことか。」
「え?どうゆうこと?」
所謂『武器フェチ』というやつだ。
分かっているとは思いますが、ファルカは武器フェチじゃないですよ?
最近繋ぎの話が長くなってしまっているような気がするのですが、大丈夫でしょうか?
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