癒し系(?)
アホウドリの自慢話⋅⋅⋅⋅⋅⋅ゴホンッ、依頼のお話を聞いた後、俺はそのまま真っ直ぐ家に帰ろうとしていた。
まだ空は明るく今からでも簡単な依頼のなら受けられるが、ファルカにさっきのことも伝えないといけないのでまずは家に帰ろうというわけだ。
⋅⋅⋅⋅⋅⋅自慢話に疲れたというのも一理⋅⋅⋅⋅⋅⋅いや、8割ぐらいある。どうせファルカに伝えるのなんてまた後でもいいし。
そんなことを思いつつもギルドの出入り口へ歩いていると、何やらひそひそと話し声が聞こえてくる。
訂正、陰口が聞こえてくるのはいつものことだ。今回特筆すべきことは、その内容が少しばかり違うようだ、と言うことである。
耳を澄ましてみると⋅⋅⋅⋅⋅⋅
『あれ。あのファルカさんとパーティーを組んだ男じゃない?』
『あぁ。それに、よく見たらあいつ、最弱冒険者のやろうじゃねぇか。』
『なんであんな男と⋅⋅⋅⋅⋅⋅。っ!絶対ファルカさんの弱味を握ってるのよ!それでパーティーにさせてるんだわ!』
『な、なんてやつだ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。』
おぉ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。悪評が独り歩きしてるな。
『愛しのファルカ様を穢すとは⋅⋅⋅⋅⋅許すまじぃ!』
⋅⋅⋅⋅⋅⋅こいつは違うな。
それにしてもあれは陰口なんだよな?陰口に見せかけてわざと聞こえるように話しているんじゃないかと思うぐらいに聞こえてくるぞ。
この地獄耳(?)が戦闘に活きることはないのだろうか。
とにかく、このままだと俺は最弱冒険者から『ファルカ様を穢した最弱且つ最低冒険者』にクラスアップしてしまう。ん?この場合はクラスダウンか。
ここらでちゃんと説明しておくべきか。
「あー、これには理由があって⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
─────ササァー
「そこの人も、話を聞い⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
─────サササァー
くっ⋅⋅⋅⋅⋅⋅ここまでとは。渡る世間に鬼は無しと言うではないか。一人ぐらい話を聞いてくれてもいいのに、ぐすっ。
瞬く間に噂が広がったのか、俺が動くと磁石がついてるかのように冒険者たちが離れていく。
どうにもならないか。
噂もある程度日がたてば薄れていくだろう。そう願いを込めて、俺は心身ともに疲れきったまま帰路についた。
◆
「はぁ~。ただいまぁ~。」
「あ、おかえりなさーい!」
家に帰りただいまと言うとおかえりと返事が帰ってくる。少しして、ふんわりと可愛らしいエプロンを身につけたトリアが⋅⋅⋅⋅⋅⋅ってこれじゃあ新婚夫婦みたいじゃないか。
とは言ってみたものの、やっぱり癒されるなぁ~。
俺がじっと見ているのが変だったのか、トリアはコテンと首を傾げる。はぁ、可愛い。いつも可愛いけど、今日は癒し系の感じに可愛い。
「あぁ、可愛い。」
「か、かわ、可愛い!?」
あ、つい言葉に出てしまった。これじゃあ変態みたいじゃないか。でも可愛いしなぁ。
「り、リヴァル大丈夫?疲れてるみたいだけど、熱があるんじゃない?」
トリアは慌てた様子で自分と俺の額に手を当てる。柔らかくて、あったかい。
「熱は⋅⋅⋅⋅⋅⋅無さそうだね。」
だろうな。トリアの手、あったかかったし。
「俺は大丈夫だ。」
「ほんとに?」
「あぁ、ちょっと疲れただけだ。」
心身共にな。だからあんなに可愛いを連呼してしまったに違いない、うん。
「そっかぁ。じゃあ晩御飯作ったから、食べて元気だしてね。」
「ありがとな。」
トリアがリビングに向かってくるっとUターンする。それに合わせてエプロンの裾と、スカートがフワリと広がる。癒される。
こんな人と結婚したいわ。
切にそう思う。
「こんな人と結婚したいわ。」
「ひゃ、ひゃいぃ!?」
あ、思っただけじゃなく言葉に出してしまった。
「や、やっぱり熱があるんじゃ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「いや、ないぞ。」
「じゃ、じゃあさっきのは、ほ、ほほ、本心ってことで、そ、その、結婚ってぇ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
「まぁ、そうだな。」
トリアみたいな人だといいな、って訳だ。
「け、けけ、けっこん⋅⋅⋅⋅⋅⋅! きゅぅぅ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
そう伝えた直後、なにかを呟いてから『きゅぅぅ』と言って倒れてしまった。
「おぉっと。」
怪我をしないように抱きかかえる。見ると、顔を真っ赤にして目を回している。はて、何故だろうか?
とりあえずトリアをリビングまで運び、床に並べた座布団の上に横たわらせる。
「これは⋅⋅⋅⋅⋅⋅熱が出てるか?」
寝室まで運んでも良かったが、熱があるなら氷袋も作らないといけないしまずはここに居てもらおう。暫くして起きたら話を聞いて、ダメそうなら寝室に寝てもらおう。
そう考えつつ、氷袋の準備をする。あれ、これって額に当てるんだよな。どうやって固定するんだ?置きっぱなしとかだめだよな。
リビングに戻ると、いつの間にかジーズがトリアの腕と体の隙間に入って丸まっていた。そんなにずっと寝てて、猫みたいじゃねぇか。
俺が近づくと、目を開けて頭を上げる。こっちを少しみた後⋅⋅⋅⋅⋅⋅また寝てしまった。
⋅⋅⋅⋅⋅⋅気にしていても仕方ないか。とにかく、手に持った氷袋をトリアの額に当てる。冷たいのか、トリアが一瞬身を捩らせる。
仕方ない、このまま待とう。
これ以外方法が思い浮かばないので、俺は氷袋を持つ手を交互に変えつつトリアが目を覚ますのを待った。
因みに、寝顔とときどき漏らす寝言に癒されて疲れも吹き飛んだのは、言うまでもないことだ。
遅くなりました。すいません。
今回は閑話的な感じです。次話からファルカとの絡みも入ってきます。
え?家にいるのにどうやってファルカと話すのかって?それは⋅⋅⋅⋅⋅⋅色々あるのさ。ふっ。
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