2話 サンドクイーン
どうやら旅を始めて2週間。
1人で旅をするのもいいものだと思い始めた。
疾走感ある風に煽られながら、今日もバイクのスピードを上げる。
「おにいちゃん!一杯どうよ?飲んで行かない?」
酒場のキャッチーなお兄さんに声をかけられながら、歩いて行くとお金がないことに気がつく。
「そろそろ冒険者でもやってみるか」
このご時世での冒険者は、ある種旅職業の一つでもある。国境がない今は、冒険者ギルドが依頼を受けて、報酬金として依頼を張り出す。
キャッチーなお兄さんの声をきいて、柏木も冒険者ギルドに向かうことにした。
木製の小屋の中に入ると、バーカウンターのようなところにウサギの魔人族が立っていた。
そして笑顔で僕を対応してくれた。
「冒険者ギルドへようこそ。新規登録ですか?ご依頼でしょうか?」
彼女は少し怯えながら、丁寧に説明をしてくれた。
「新規登録だ。」
「では、こちらに必要事項の記載をお願いします。」
テンポのいい案内により、手順を進めて行くとある話が柏木の耳に入った。
『サンドクイーンの失踪』
ここは元々、砂漠の中に一つの王国があったのだ。
地球が滅んだ時の第三王女『サンドクイーン』の失踪したため、早く見つけたい当時の国王が、3人の王女の捜索をギルドに依頼した。1人は見つかり、1人は北方に隠居しているらしいが、サンドクイーンだけが見つからないらしい。
「受付嬢さん」
「何でしょうか」
「サンドクイーンってどんな人なんだい?」
「サンドクイーンは、ここを昔統治していた国王の3人の娘の末っ子に当たります。砂姫と書いてサンドクイーンと言うらしいです。魔法が得意で、砂の中にオアシスを作れるとか....」
柏木はサンドクイーンの話を頭の片隅にしまいこみ、冒険者ギルドの登録を終えた。
水や食べ物を最低限買い込み、麻袋にしまい込んだ。
バイクの燃料を補充していると、黒いローブの少女が走って近づいてくる。
「そ、そこのあなた!助けてください!!」
その高い声をする方を見るとそこには人影がなかった。
首をかしげる柏木は、作業に戻ろうとすると、胸元に黒いローブの少女がいる。
突然の出来事だ、驚きを隠せていない。
「だ、誰だい?君は?」
「サンドクイーン・・そう言えばわかる?」