平石わかばは決められない2
芸今日はわかばちゃんの付き添いで大手芸能会社に来ています。ひなこたんの会社じゃ無いので全く面白みもありません。
ビルの中に入っても勿論、芸能人はいません。私の知っている芸能人なんて両手で数える程度しかいないのですが。
「お嬢さん達、今日はなんの予定で来たの?」
な、なんと、受付の美人のお姉さんが定位置から出て来て話しかけてきてくれました。
ちょっと、この芸能事務所の評価があがりました。
勿論、お姉さんの評価はばくあがりです。
「えーと、近藤プロデューサーという人にこの子が呼ばれていて」
わかばちゃんは私の後ろに隠れていましたが、前に出します。
「近藤さん、平石 わかばちゃんね」
なんなんと、今日訪問する人の名前をいちいち覚えているのですか!?
お姉さん凄いです。
「ちょっと、お待ちください。今呼びますね」
少し待つと、イケメンのおっさんとちゃらそうなおっさんが歩いてくる。
イケメンのおっさんは驚いた顔をするとこちらに早足で歩いてくる。
そして、私の方にくると
「来てくれたのか」
「………」
「誰ですか?」
「君をアイドルに誘った男だよ。覚えて無いかい?」
「よく誘われるので覚えてないです」
そりゃ、街中歩けばプロデュサーを語ったたやつらに片っ端から声かけられるから、そんなの覚えているわけが無いのです。
「今日はわかばちゃんだろ」
ちゃらそうな男がイケメンの男の肩にてをおいて慰める。そういや、りかさんってこっち系もいけるのだろうか?
「すまない、えーと、君はわかばちゃんが言ってた友達かな?」
「そうですよ」
「じゃあ、会議室まで行こうか」
自分からわかばちゃんを呼んどいて、本人の前に項垂れてるなんて最低なイケメンは置いといて、なんとなく可哀想なわかばちゃんの頭をかなさんのやり方を思いだしながら撫でてあげてからちゃらそうな男についていく。
「えーと、二人って同級生なの?」
廊下はこの芸能事務所に所属しているメンバーの写真がずらりとはってある。
「ナイト36とか知らない。この事務所のアイドルなんだけど」
ちょくちょくテレビで顔を知っている人達がいるのはなんか楽しい。
「家でテレビとか見ないの?」
この芸能人の名前ってこんな名前なんだ、知らなかった。今度、誰かに自慢しよ。
「着いたよ」
「ありがとうございます」
中の部屋は安物のパイプ椅子と机である。
未来のトップアイドルになるかもしれないかもしれないわかばちゃんにこの扱いは無いと思う。そこら辺の家具屋で買ってきた1マン円位の椅子が欲しいよ。
「これが契約用紙となります」
渡された紙に細工が無いか念入りにチェックする。
そして、契約内容を目を皿にしてみる。
「普通ですね。種も仕掛けもないコピー紙の上に普通の契約内容が乗っているだけです」
面白くない。小説だったら、この紙から超能力バトルが始まるのに。
「御社は誠実をもっとーに働いていますので」
ちゃらいおっさんがにこにこしながら言う。
「JCにおっさん二人で対応させる時点で誠実さの欠片もないと思いますよ」
「………」
決まった。
私のやりたいこと3125位、大人を正論で叩きつぶす。
あー、気持ちいい。実年齢はこいつより絶対年上だけど、気持ちいい。
打倒チャラ男。慈悲はないぞ。
「ということで、女性のマネージャー付けないとこの契約は認め無いです」
「けど、わかばさんのご意見も有りますし」
わかばちゃんはスースーという寝息をたてながら気持ち良さそうな顔で私の肩にもたれながら寝ている。
多分、初めての場所に来て疲れたのでしょう。
何で、わかばちゃんがアイドルみたいな人前に出て行う職業を出来ているのか不思議でしょうがない。
「私が言い聞かします、女性マネージャーじゃないと契約するなと、そもそも現役JCに女性マネージャーを付けないとか倫理上問題有りすぎですしね」
「ぐうのねもでないな、わかばを」
「わかばさん」
ほぼ初対面で呼び捨てするとかこの人、本当に大丈夫なのか。
「分かった。俺達としてはどうしてもわかばさんが欲しい。それは、絶対に彼女がこの先の芸能界を引っ張って行く存在になるからだ」
「誰にでも言ってそうですね」
絶対、こいつ女の子をくどくとき言ってますね。
「誰にでもじゃない。だからお願いします」
頭を下げられても困るのだが。
「別に私はマネージャーを女の人にしてという当然の要求をしただけで、わかばちゃんが決めた道をとやかく言うつもりは有りません」
自分の好きなことして生きていくのが一番良いよ。
「ありがとう。これからもわかばさんのことを考えて行動して欲しい」
私は苦笑いをする。
その後、契約は滞りなくすまして帰った。
帰り道、イケメンのプロデューサーを名乗る男が現れたが、勿論無視して帰った。