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第5話 最悪の結末

せっかくのOZの関係者を取り逃がしてしまったのに関わらず俺はあまり気にしていなかった。いや正確にはもうどうでも良くなっていた。

遂に見つけた、あの刺青男を。父と母を殺した張本人。

あいつさえやれば復讐は終わる。そんな事を大地は寝ずにずっと考え7区の裏組織のアジトを片っ端から襲っていた。もういくつ組織を潰したか分からない、学校にもいかずただただ斬りまくっていた。そうだ、最初からこうしてればよかったんだ・・・こう虱潰しに行けばあいつが居る

完全に復讐心にかられた大地は血溜まりのできた部屋から出てまた次の場所えと向かっていく。


昨日力を使った反動で鈴音は6割がたしか調子が出せずにいた。

水戸家の奥義である鬼の角は一時的に肉体強化を促し鬼の如し力を得るが水戸家の修行で体が出来上がってないものが使うと体が耐えきれずに壊れ、運が無ければ死ぬ諸刃の剣である。使えば確実に寿命を縮める奥の手である。

今回は使ったのがたった数分だった為体を休ませれば大丈夫な程度で済んだ。


「また無茶しましたね、しばらく休んでなさい」

支部長の榊がやれやれといった様子で去っていく

鈴音も直ぐに部屋を出て特捜二課まで足を運ぶ、そこには大地しかいなかった

一声もかけずに横を通り過ぎていく

「・・・貴方、血の匂いがする。殺したの?」

「悪いか?相手は犯罪者だそれにお前も言ってたじゃないか捕まるくらいなら死んだ方がマシって、あともう俺に構わなくていいから」

そう言い残し大地は捜査に戻って行く


気持ちが落ち着かずただ街を歩いている、目にはクマができ今までの面影は今の大地にはなかった、それ程まで彼の復讐心は強いのだ。

しばらく歩いていると見知った男に声をかけられる

「随分と荒れていますね。宮本くん」

榊だ

「榊さん?何か用でも?」

機嫌が悪い俺は遂榊さんを邪険に扱ってしまう


「宮本くん、戦いに必要なものはなんだと思いますか?」


急に何の話だ


「それは冷静さですよ、常に冷静な者が優位に立ち勝利する事が出来る。今の君なら簡単に殺すことが出来るね」


笑顔でいるが明らかに挑発している、おもしれぇ買ってやるその喧嘩


「試してみます?」

そう言うと俺は腰から刀を抜き榊に切っ先を向ける

今の宮本は修羅の如く力を発揮していた、普通のヤクザやチンピラでは手も足が出ない程である、だがそれが戦闘屋なら話は別で冷静さを欠いた相手など相手にすらならないのだ


宮本が体をユラっと傾け地面を蹴り一気に榊まで詰め寄る

殺った!!そう確信した宮本は気付くと目の前に空が見えていた。

何だ?何が起きた?倒れた?


思考が上手く働かず自分が投げられた事に頭が追いつかなかった。


「雑念ばかりの君には指1本触れられる気がしませんね。」

まるで落ち着きのない子供を相手にする様な話し方をする榊


「っそがぁ!!」

果敢に挑むが何度も投げられ、躱され、叩きのめされる。

もう何回やられたか分からない、身体中が痛み息が上がり足に限界が訪れ地面に倒れる。


「そろそろ頭が冷えましたか?君は僕の若い頃に良く似ている、無鉄砲、自信家で直ぐに頭に血が上る」


倒れている宮本に語りかけ、その隣に腰を下ろし話を続ける


「僕は10年前のテロで妻を無くしていてね、荒れましたよ相当、妻を殺された怒りと、娘を自分一人で育てて行くことが出来るかという不安でね。」

このご時世、家族、友人がテロで死ぬ事は稀ではなくよくある事だった。

「榊さんは、何故普通でいられるんです?」


榊はゆっくりと息を吸い宮本が最も知りたい答えを言う


「受け入れたんです、憎しみは憎しみを生む。自分を曇らせるだけです。」


「僕はこの事を受け入れるのに長い時間をかけしまい、娘の事もろくに相手をしてあげることもしなかった。君にも大切な人が居るでしょう?その人の事を考えれば復讐なん馬鹿馬鹿しく思えるんですよ。結局は自己満足でしかないんですよ。だから君には僕と同じ道を歩んで欲しくない。その若さでそんな重みは背負う必要は無い。」


あぁ馬鹿だ俺は妹の為、父さん母さんの為にって復讐を決意していたけれど誰もそんなこと望んでいなかったんだ。分かってた事じゃないか、復讐なんてただの自己満足だと、それで死んだ人達が生き返る訳でもないのに」

宮本の目からなみだがぽろぽろと流れ始める


榊はそれを優しい顔で見守ってくれた


「見つけたぜぇ榊」


暗闇から男の不気味な声がし、二人とも警戒する


「日本に来てると聞いて探してたが殺し屋は引退してガキのお守りでも始めたかぁ」

キヒッと不快な笑い方をし、男が姿を現す

そこに居たのは金髪、短髪でやや猫背。スーツをだらしなく着崩していて首には人の指が数本付いているネックレスを身に着けている、悪趣味な装飾だ。


「誰でしょう、僕には君のようなお友達はいませんが?」


「初めて会うんだからなぁ知らないのも無理はねぇ、自己紹介がまだだったなぁ?俺は左翼のオーグ、あんたの大ファンなんだ。

組織はお前が邪魔らしくてねぇ、恨みはねぇが殺らして貰うぜ」


左翼のオーグ!?確か王族殺しのイカレ野郎か。前に署のリストで見た事あったけどこいつのランクはたしかSS!


「まさか貴方みたいな有名人に狙われるとは、僕もまだまだ捨てたもんじゃありませんね。

宮本くんどうやら彼の狙いは僕のようです。君は早く帰りなさい」


「おぉとそいつにも一応用があるんだよぉ、日本最強と言われた古流剣術の宮本家の末裔宮本大地、上の奴らがお前を欲しがっててなぁ大人しく来てくんねーかぁ?」


「生憎ネクロフィリアの変態イカレ野朗と同じ組織には居たくないんでね。」

親指を真下に向け申し出を断る


「なら・・・力ずくでいくかぁ?」

ナイフを取り出し突っ込んでくる


「っふ!」

同じタイミングで宮本もしかけていく


キィン!

金属同士が当たる音が路地に響く


こいつ!?型にはまらない攻撃ばかりで全然予測がつかねぇ


互角に見えるが宮本は少しずつ、一つ一つと傷を付けられていく

「宮本君!」

後方から榊が弾丸を撃ち込む、オーグのナイフに当たりそれを破壊する


勝機!!そう確信した宮本は一気に畳み掛ける。その時僅かにオーグはニタァっと不気味な笑みを浮かべた


「!?いかん!宮本君!」

榊が叫んだ時にはもう遅く、宮本はオーグの絶好の攻撃範囲内に入ってしまっていた


「いけねぇなぁ、丸腰になったからって容易に近付くなんてよぉ。持ってる獲物が出した物だけとは、限らねんだぜぇ」

オーグは隠し持っていたナイフを宮本の周りにばら撒き、止まらぬ速さで宙に浮くナイフで宮本を斬りつける。

数秒の出来事だった、体に数本のナイフが刺さり地面に横たわる宮本と服の埃を掃うオーグ

「半殺し完了ってとこだな、!?」

榊の撃った銃撃を避ける為後方に逃げる


榊は宮本のもとに行き傷の具合を確認する

本当に半殺し状態ですね・・・


「よくもここまでやってくれましたね。貴方なら、本気を出せそうだ・・・」


「そうかい・・・じゃあちょっと本気だしちゃおうかな」


一瞬だった、オーグが榊に詰め寄った刹那に銃を握った腕が宙を舞う


「っぐ!?」

榊は腕を押さえよろめく


「はぁぁぁぁ、これこれ!これだ!この瞬間は本当に気持ち良いなぁ!」

空を仰ぎながらびくびくと体を仰け反らせる

はぁはぁ悶ええていたオーグはピタっ、と止まり冷静になる


「飽きたしそろそろ殺そう」

再びナイフを構え榊に向かっていく


ズガァン!と大きな音を立てオーグの指が吹き飛び弾は貫通しそのまま建物のコンクリートを粉々に破壊する


「んだぁ?そりゃぁ?」


「残念でしたね私は義手でね、もう痛みは感じないんですよ。そしてこれは仕込み銃、NN最先端の技術を使った奥の手です」


肘から伸びた口径5cmほどの筒から煙が上がっている、先ほどの大きい音はこれだったのだ


「おもしれぇ・・・」

吹き飛んだ指を全く気にせず尚突進してくるオーグに対して応戦するが徐々に押されぎみで時が過ぎていく

どれくらいの時間が経過しただろう、榊は疲弊しているにもかかわらずオーグはまだ余力があるようだ。

宮本はやっと立てるまでに回復してきたが戦闘に参加出来ずにいた。

仮に参加できたとしても次元が違いすぎて役に立たないだろう、それを一番理解している宮本は奥歯を鳴らし自分の弱さを恨む


決定的な一撃が榊に入った、ナイフが胸に深く刺さり再起不能寸前まで追いやられてしまった。


「はぁはぁ、まさかここまでとは・・・侮っていました、私のミスだ。宮本君聞きなさい、時間を稼ぐので出来るだけ遠くに逃げてください。これは命令です。」


「榊さんあんたまさか!?」


「格好くらい付けさせてください、私が死んだとしても私の意志を継いだ者たちが残っている限り、私は君たちの中で生き続ける。さぁ行くんだ!」


宮本は振り返らず逃げた、痛む体に鞭を打ち一目散に逃げた。宮本は自分の弱さが許せず自然と涙がこぼれる

絶対に応援を呼んで戻ってきます!だから、待っててくれ。榊さん!


「あーあ、逃げられたかぁ。まぁいいや、あんたさえ俺のコレクションに出来れば」


「タダでは私も死にませんよ、刺し違えてでも貴方を止めます」


数十分が経過し鈴音が戦闘のあった現場に到着する

辺り一体は血痕が残り激しい戦闘の跡だけが残っていた。

奥に進むとそこには榊が、榊であろう死体が無残な姿で横たわっていた、耳は削がれ目はくり抜かれている。

目を背けたくなる様な光景に鈴音は行き場の無いこの感情をどうすることもできずただ空を仰ぐしか出来なかった。顔に大粒の水が当たりそれは徐々に増えていく


雨か・・・確かあの時もこんな土砂降りだったかな・・・



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