列車から手を振って
列車に乗っているときに手を振って貰えるとなんだか嬉しいものである。これはそんな思い出である。
私がブルートレインに乗りに行ったときのことである。列車が上野から札幌に向けて出発した直後、進行方向左側を見ると同じく上野を北に向けて出発した列車が走っていた。
その列車はE5系新幹線。おそらく「はやぶさ」だろう。行き先は新青森か仙台か。
私たちブルートレインの乗客が手を振ると、それに気づいた新幹線の乗客たちが手を振り返してくれた。
のんびりとしたこちらと違い、速さが命の新幹線。客層も大きく異なる。しかし手を振り返してくれ、車内は明るい気分になったのをよく覚えている。
少しすると、新幹線が速度を上げて先に行ってしまった。だが、一心不乱に手を振り続けていた間、両列車の心は一つになっていた。そんな気がするのだ。
もう一つの思い出も書こう。
いろいろな性格の列車がある中、やはり観光列車が一番沿線の人に歓迎されやすい。さらに言うと、その存在感からかSL牽引列車が一番人が集まる気がする。
SLが運行される日は多くの人が駅に集まり見送りに来る。沿線でもたくさんの人に手を振ってもらえる。
SLは汽笛を鳴らして応え、私も手を振り返す。
道路に沿って建つ家々から、踏切待ちの車から、通過駅から、あちこちから手が振られる。山に入っても撮影の鉄道ファンがいる。さらに、道路を走る車からも手を振ってくれる人がいる。
停車駅でも地域の方や所謂ゆるキャラが集まり歓迎してくれる。
まさに地域全体で歓迎してもらっているという様子である。こうしてまた乗りに行きたいと乗客は思い、地域の方も列車の運行に協力してくれるという好循環が生まれるのだろう。
私は手を振ってもらえたら、こちらも手を振ると決めている。何かが繋がるような気持ちになるからだ。そして、この好循環を絶やさないようにするためでもある。
皆さんも機会があれば是非手を振るようにしてほしい。
車から手を振るとき、運転する人は安全に気をつけてください。
とにかく前を見て運転してください。