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短いです。
※今回特に駄文注意
太陽が高く昇り、街に活気が満ちている時間帯。アスタロスたちは王都への街道を一台の馬車を囲う様に進んでいた。
御者はアスタロス。馬車の右側にはアイシャ。左側はクルレル。後方はリノアという配置だ。エミリアは戦闘には向いていないので馬車の中でフェルディナントの話し相手を務めている。
因みにリノアを同行させる事には誰も反対しなかった。人が増えると報酬の山分けが減るが、確実性は増す。それに今回は、アスタロスの報酬の半分をリノアに渡す事になっているので、他のメンバーにはデメリットはない。
第三都市ネイノスから王都は大して離れていない。半日もせずに着く。そして既に、ネイノスを出立してから、8時間ほど経過していた。そろそろ到着する時間である。
「おお、あれが王都か・・・」
先頭を進んでいるアスタロスは王都をはっきりとその目に捉えた。
そのまま街道を進み王都の門へ到着。門番にフェルディナントが身分証明書を見せ、アスタロスはフェルディナントからの依頼書を提出した。確認が完了すると、門がゆっくりと開いていく。
門が開き、一行は都市内へと入る。
「皆さん、この度はありがとうございました。報酬の支払いをさせて頂くので儂の屋敷まで来て頂けますでしょうか?」
馬車から降りたフェルディナントが呼びかける。
「了解しました。では、案内をお願いします」
「では、こちらです」
暫くフェルディナントの案内に従って歩くと立派な屋敷にたどり着いた。
「こちらです。お入りください」
フェルディナントの促されるままに屋敷に入る。
そのまま屋敷内の応接室らしき部屋まで案内され、
「こちらの部屋でお待ちください」
そう言われ、アスタロスたちは部屋で待機する。
その部屋は豪華でありながら、華美ではなく、とても手入れが行き届いている部屋だった。
部屋に見蕩れていると、ドアが開いた。フェルディナントが戻ってきたのだろうと、ドアの方を向く。予想通りフェルディナントが戻ってきていた───────────が、フェルディナントの隣に不気味な男が立っていた。見知らぬ男────────の筈なのだが・・・アスタロスはその男に既視感を覚えていた。
「久しいな。我が息子よ」
その言葉でアスタロスは既視感の原因を、そして自分の愚かさを理解した。
「アゼル・・・!!」
(あれほど憎んでいた男の顔を忘れているとはっ!!)
「今日はお前に提案があってな・・・」
「失せろっ!!お前の話など聞きたくない!!」
「私の元に戻れ・・・」
「断る!!!!誰がお前の元になんか!!!」
「そうか・・・残念だ・・・なら」
アゼルは懐から禍々しい掌大の塊を取出し、隣にいたフェルディナントの背に埋め込んだ。
その瞬間フェルディナントの体がドクンと脈打つ。
アスタロスたちは動けなかった。逃げるべきだと、危険だと本能が強く告げているのに、体が金縛りにでも罹っているかの様に動けなかったのだ。
「あ、アゼル様?約束が・・・ちが────────」
「お前の娘を殺さないという約束だろう?安心しろお前の娘は一生地下牢で飼ってやるから・・・」
残忍な笑みを浮かべそう告げるアゼル。
「あ、ああ、ああああああああ・・・・・・」
その言葉を聞いたフェルディナントの目から大粒の涙が次々と零れ落ちた。
────────ドクン
ともう一度フェルディナントの体が脈打つ。すると徐々に体が膨らんでいき、涙は血に変わっていく。
「では、息子よまた会おう・・・」
そう言い残し、アゼルの姿は掻き消えた。
アスタロスにアゼルを追える精神状態ではなかった。
その間にもフェルディナントは変化していた。黒い皮膜が体を覆い、その皮膜の奥でフェルディナントが別の生き物に作り替えられていく。
被膜が破れ、フェルディナントだったものが屋敷を破壊しながら立ち上がる。立ち上がったそれは、一言で言い表すなら、黒い巨人。全身真っ黒で、目だけがフェルディナントが流した血涙のように赤黒い。
それを見つけたのであろう悲鳴が聞こえ、アスタロスたちは漸く正気に戻った。
「アイシャ!クルレル!エミリア!リノア!動けるか!?」
「何とか動ける!!」
とアイシャ。
「僕も問題ありません」
とクルレル。
「わ、私も動けます」
とエミリア。
「先輩私は大丈夫ですよ!!」
とリノア。
「それはよかった。ならこいつを倒すぞ!!・・・・・・すみませんフェルディナントさん・・・」
アスタロスたちは巨人との戦闘を開始した。
感想等々お待ちしてます。