(7)病堕
今回の投稿に合わせて、これ以前の回のWITCHの綴りを修正しております。
―― RiRiRiRi
タイミングがいいのか悪いのかはわからないが緊急を告げる呼び出し音が支給された通信機から流れる。
が、およその内容は予想できるのでソレを後回しにし、アリスの突然の豹変に目を奪われている少年たちへ近づき首筋へのチョップでその意識をを刈っていく。
報復の名目でウサギに害そうとした奴らだ。今から起こる事を理由にアリスをいじめないとは限らない。
それに口封じも面倒だ。事が起こる前に意識を奪っておくに限る。
”とっとと出なさい!”
強制的に繋がった通信機から胡桃の焦った声が響いた。
「すまんな。立て込み中だ」
ちなみに通信機の、胡桃の声は俺以外には聞こえない。機密保持のためそういう風になっている。
”なら手短にいうわ。昨日預かったハンカチの血、結論から言うと陽性。明らかに感染しているたわ”
「だろうな」
”だろうなって、あなた。そんなのんきな事を言っている暇があるんならさっさと対象を保護――”
「それはムリだ」
”はっ?”
「現場は俺の母校。目撃者は男3名。既に全員を気絶処理済み。発祥原因は、他者への暴力に対する怒りってとこだな」
”……もしかして、もう?”
「まさに目の前で」
”ワクチンは? 《WITCH》候補は用意はできているの?”
「いや、できていない」
”じゃあ、さっさと誰か見つけて――”
「ムリだ。さっきも言ったとおり目撃者の3人は既に気絶済み。発症の経緯から考えて、放置すれば真っ先に狙われるのはこいつらだ。自業自得な面もあるが流石に捨ておけない。あと言うまでもないが、男だから当然候補には入らない」
それにおそらく相手は獣病人ではなく獣病魔女。魔女の力を持つ《MONSTER》。訓練をしていない《WITCH》が勝てる相手じゃない。
”それじゃあ――”
「ああ、俺が出る」
”ムリはしないでよ?”
「分かっている。だから、後始末は頼む」
”……うん。分かった”
何か言いたそうな雰囲気と共に了承の意を受けとると、プツンという音と共に胡桃との通信は切れた。
これで大丈夫。胡桃のことだ。最悪の事態を考慮してくれるはず。安心して治療に専念できる。
通信を終わらせアリスへと目を向けた丁度その時、アリスの病状に変化が現れた。それまでは表だった病状は見受けられなかった。多少病みが濃くなったぐらいだ。だが、偶然にも俺を待っていたかのように加速度的にそれは始まった。
「OutBreak Of Viris ”Arice”」
闇が弾ける。前日《WITCH》を発症したときと同じように、唯一病みに侵された光が闇となって、変異が始まった。
辺りが闇で包まれる。少女の背が伸び、胸が大きく膨らむ。服は闇となり、闇は新たな服となる。踊るように繰り広げられるその光景は、どこか淫靡で見るものすべての眼を奪う。
髪が驚くほどのボリュームを帯びながら、自然と結われ本来ならあり得ないような髪型を実現させる。
最後に妖艶なメイクを施された少女が軽くステップを踏みポーズを決めた。
「Gru。獣病魔女アリス。……破壊」
その姿は昨日|《WITCH》をよく似ているが白色であった部分が黒色になっているのを初め全体的に暗い配色に変わり、露出部分も多くなった。何よりそう宣言したアリスの頭には一対の兎の耳と、長く尖った角が生えていた。
変わり果てたアリスを見つめ、そして覚悟を決めた。俺が俺自身の手で、《WICTH》となりアリスを治す覚悟を。