(0)プロローグ
(2016/06/26)三人称から一人称へ変更。
(2018/07/22)WICHの綴りをWITCHに修正。
近頃、生き物が突如として凶暴化・異形化する事件が発生している。
その現象および異形化した生物は《MONSTER》と名付けられて研究が進められた。結果、未知のウイルスによる物との見解が示された。
地球外から流れ着いたのか、はたまた名も知れぬ生物学者が生み出した新種か。それはようとして知れない。
異形化・凶暴化のメカニック、感染経路、潜伏期間……。その殆どが分からぬまま、ただ1つだけ明確になったことがある。
それは《MONSTER》はウイルスである、と言うこと。その見解が正しかったと言うことだけだ。
《MONSTER》はウイルス。つまり《MONSTER》は感染する。
現在の所、1度に1個体の発症しか、別種の《MONSTER》が同時に発症したという報告もあるが、それでも2体までの発症しか確認はされていない。
だが、いつパンデミックが起こるかも分からない。何せ相手は感染経路も潜伏期間も分からず、検査も容易ではない。しかも《MONSTER》は明確な潜伏期間は定まっておらず、ある特定のトリガーによって発症すると提唱する学者すらいる。
もしそれが真実だとしたら、ただ1つの些細な出来事で一気に発症する事もあり得るのだ。
幸い、一次感染で人が発症する事例は現在確認されておらず、人での発生が確認されている二次感染以降ではその潜伏期間が短くなる事がこれまでの事例から予測され、ほぼ正しいとされてる。
つまりはパンデミックで人が《MONSTER》を発症する線は薄い。
だからと言って安心はできない。弱い人の身において《MONSTER》を発症した生き物は手に余る。人類滅亡への道は避けられないも当然だった。
《MONSTER》に対抗する術は多くない。
1つは、《MONSTER》が転移する前に発症した終宿主を完全に殺す事。
そしてもう1つが相対するウイルス《WITCH》の発症者、通称《魔法少女》の手によって浄化する事。
《WITCH》も未知のウイルスではあるが、《MONSTER》の様な凶暴化・異形化という症状はなく、《MONSTER》の浄化に特化した身体能力の向上、それに伴う一時的な成長・若返り、浄化能力の付与などが主な症状と見られている。ただ、発症と共に行われる着衣の変化などの未解析な点もまだあるが。
ともかくこの《WITCH》は《MONSTER》と比較して安全なウイルスと判断されている。
それはなぜか。
ウイルスと言う観点から見た場合、既知のウイルスと比べても非常に弱いからだ。
確かに《MONSTER》を発症した生物に対して天敵的な強さを誇る《WITCH》だが、それ自体は驚くほどに弱い。
人類の女性しか発症せず、発症者の体内での生存期間は長くて1時間と限りなく短い。また1度発生したら抗体ができるのか2度目の発症は確認されていない。
少なくとも公的には。
だが何事も例外は存在する。それが俺、大槻彰だ。
本来《WITCH》は潜伏期間中であっても生存期間は感染後24時間とかなり短い。だが俺の体内においては生存期限は確認されておらず、絶えず一定の量が保持されている事が確認された。
そのことが判明した俺はその特異性により対《MONSTER》の機密任務に就く事になった。
体内に《WITCH》を宿し生かし続ける俺は《保菌者》として現地民と協力し、時に《魔法少女》を発症させる役割を与えられたのだった……