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god slayer後日話 人の立場と恋愛事情

 アルツが貴族となり、自分の領地を持ち、その領地を治めることとなった。全く経験のないアルツが領地を治めると言っても、あたりまえだができるはずもない。そういうことなので、アルツともともと仲間であり、領地が隣であるマルジエートがその支援をしている。人をやったり、何か必要なことや事件などがあればその相談にのったり、場合によってはこちらが直接訪れて話を聞いたりなど。

 最も、幾ら隣の領地と言っても結構な距離がある以上、簡単に行き来は出来ないが。それでもいろいろと情報や人をやり取りする手段はあるので、なんとかなるものだ。そういったこともあって、俺もずっと実家で領地経営を学ぶと言うこともなく、アルツの領地に近い街なんかに滞在したりして対応している。まだ領主を継ぐには早いと言うことだが、いつになったらリフィと一緒になれるのだろう。

 そんなんこんなで、今日もアルツの収める領地、ドラッケンから人が来て話をしているのだが。


「……正妻が誰になるかって、問題が起きてる?」

「そうそう。ほら、カリンとシェリーネがそういうことになったし、そういう結婚の話が上がってるのよ」


 その話を持ってきたのはミエラだ。ミエラはアルツのところに仕えると言うことになっているが、エリナが気になると言うことで度々こっちに来る。そのついでに、互いの情報共有などをミエラに頼んで行っている。最も、ミエラはエリナのところでしばらく滞在するので、どうしても少し情報としては遅れるのだが。


「それ、おかしな話だと思うけど。貴族の結婚はいろいろ事情があって貴族じゃないと正妻にはならないんだが」

「そう言われてもねえ……」

「まあ、そういう話なら直接行って聞いてみるよ。そろそろ向こうの領地を直接見に行った方がいいかもしれないし」


 最も、この話を持ち込まれてから行くと言うことなので、領地を見て回るほうがついでになるだろう。元々アルツの収める領地なのだから、俺が見て回ったところで関与するわけでもないし、少し助言の類ができるくらいだろう。まあ、俺もあまり人に教えることができる程わかってるわけはないが。それに、ドラッケンとマルジエートではまるっきり土地に関して同じというわけではない。助言と言っても本当に簡単なものくらいか。


「ところで、エリナは……」

「いつもと同じ、うちの実家」


 こちらに戻ってくる際に、ルティが話を持ち出した側室話だが、最終的にエリナはその話に乗っかることにしたようだ。本人の気持ちや事情、色々とあるようだが、恋愛的な意味合いではないが好意は持っているし、うちに世話になっている以上、下手に相手を探すの難しいと言うことでそうなった。別にうちの世話にならなければ問題ないのでは、とは思ったが、まあそういう話はいいだろう。

 ちなみいリフィは全然問題ないようだ。もともと貴族ということで、側室とかそういう話に理解はあるし、本人の気質的にもその手の事柄に対して厳しいタイプではない。むしろ、一緒になる人間が増えることに対して歓迎する意図があるように見える。


「まあ、いつも通りゆっくりしていけばいい」

「そうさせてもらうわ」


 さて……うちの実家よりアルツの領地に近いとはいえ、そこそこ時間を使うし、馬車で行くか、馬に乗っていくか。馬車だな。









「あ、いらっしゃいませ、ハルト様」

「……いつも通りでいいけど」

「そうですか? ならいつも通りにしますね、ハルトさん。でも、わざわざここまで来るのは久しぶりですけど、何の用ですか?」


 アルツの家、ドラッケンの領主の家だが、そこそこ大きい家だ。現在、メイドの類は少ししかいないため、出迎えの対応をメリーが行っている。そのあたりは色々だが、前の問題を起こした領主のせいだったりとか、色々とあるのだが、とりあえずは今は募集を駆けている所であるらしい。


「あー……ミエラから話を聞いてきたんだが、カリンとシェリーネが喧嘩してるって」

「別に喧嘩はしてませんけど……正妻がどちらになるか、という言い合いはしてますけどね」

「それ、できないのはメリーはわかってる?」

「一応は。理由は知りませんが」


 じゃあ、何故二人にそれを言わないのかという疑問はある。


「……とりあえず、二人と話をしたいんだけど」

「そうですか、なら案内しますね」


 そう言って家の中を案内される。今のところ、シェリーネは家の中のことを主にしており、カリンは兵士などを鍛えたりしているようだ。シェリーネはどうも、領主側としてできることが少ないというか、能力がないわけではないのだが、性格的に向いていないというか、そういうこともあって、基本家でメイドがやることをしているようだ。今はメイドも少ないのでちょうどいいということだ。カリンは戦士としての能力を生かして兵士を鍛えている。最も、ある程度鍛えられたらそういうことをできなくなるだろうとのこと。なお、それにはゼスも参加しており、ゼスの方は兵士のまとめ役……兵士長とかそんな感じの立ち位置になっているらしい。男尊女卑の類はなくはない社会観であることと、そもそもカリンはアルツの側室になるだろう人物である以上、戦士業から引かざるを得ないと言うことだろう。

 そろそろ昼食ということで、二人とも家にいた。そして二人に正妻に関する旨について話す。そもそもこの二人の背中を押したのは俺だったような気もするが、こういうこともわざわざ言いに来なければいけないあたり、深入りしているというか、深くかかわりすぎているというか、そんな感じがする。


「……いきなりな話ね」

「えっと、何でわたし達が正妻になることはないんですか?」


 二人は微妙に不満気だ。最も、不満そうにしていながらも、怒ってはいない。こういう恋愛事で理性的に話を聞いてくれるのは実にありがたい。


「……二人は貴族のパーティーの類、でられるか?」

「え?」

「パーティー……ですか?」

「そう。別にパーティーの類に限った話じゃないが……貴族の女性と相対して、ちゃんと話をできるか?」


 貴族の女性……別に女性だけではない、男の方も貴族間の付き合いというものはある。アルツがそれをできるとは思えないからかなり不安がある。もし、アルツが何か問題を起こしたらかなり厄介なことになるだろう。そういったことを起こさないようなフォローができる人間がついている必要がある。通常、そういう男性のフォローをするのが貴族に嫁いだ女性の役割だ。他にも、貴族間、派閥間の女性同士の付き合いをしたりもするし、いろいろと貴族の女性には必要なことがある。

 ちなみに、母さんがその役割をしっかりこなしているかというと、絶妙なところでこなしている。ただ、それが絶妙すぎると言うか、微妙なところで敵を作るようなものなので、フェリスさんがそのフォローに回ることも多い。ただ、なんだかんだで母さんは見方を作るのがうまいらしい。

 エリナが実家の方にいるのはルティがリフィの助けになるように教育をしているためだ。フェリスさんの例もあるし、側室が全くそういうことに参加できないわけではないが、相応の知識や礼節、対応能力は必須だ。


「貴族って大変ね……」

「……つまり、貴族の教育を受けていないと正妻にはなれないんですか?」

「まあ、そうなるな」


 最も、今のアルツのところに嫁いでくる貴族の女性がいるかは難しい。アルツは新興の貴族という形で、他の貴族との関係性はまっさら、ある意味他の貴族とつながりがないというメリットとも考えられるが、多くの場合はデメリットだ。

 単純にアルツを取り込む形で嫁ぐと言うことも考えられるが、武威の貴族はそういう所が微妙だったりする。最も、武威の貴族だからそれだけでも嫁ぐ価値はあるが……今すぐ、と決められる貴族は少ないだろう。冒険者上がりという所も判断が難しい要因だ。


「……もし、アルツが結婚したら、私たちはどうなるのかしら」

「…………」

「貴族は側室がいてもおかしくないから大丈夫……だとは思うが、確実なところは言えないな」


 嫁いできた女性が追い出す可能性もある。最も、恐らくだがアルツの方が立場が上だから、嫁さんが完全に仕切ると言うのは無理だろう。


「あ、でも、多分大丈夫じゃないですか?」

「なんでそう思うの?」

「だって……その、アルツさん……」


 シェリーネが真っ赤になりながらもごもごと言う。俺の方ではいまいちその意味が不明だったが、カリンは理解したようで、頬を染めた。何なのかはわからなかったが、二人が真っ赤になるようなことであるということは、推測はなんとなくできる。


「あ、えっと、そ、そうね、大丈夫……ね」

「まあ、二人が納得してくれてるならいいけど……」


 そんな風に話は終わった。昔の仲間とはいえ、男性一人で他所の女性と一緒にいると下手な勘繰りがあるかもしれないので、一度メリーを探してどこか休む部屋があるかを尋ねようと移動する。メリーを探していると、ぱたぱたとメリーが急いでいる。


「あ、ハルトさん! 少し手伝ってくれませんか!?」

「……いや、他所の事なのに俺が首突っ込むのはどうなんだ?」

「それはそうなんですけど…………ちょっと、お願いします。流石に、他の貴族の人相手だと私じゃ厳しいので」


 貴族、他所の貴族相手だと確かにメリーでは対応に困るか。


「アルツは?」

「ゼスといろいろなところに行ってます。やることが多いので……」


 前の領主の部下を引き継ぐ形であれば楽だったが、そういうわけではない。うちや王様のほうから人を出してはいるが、何れは引き上げる。後進の育成、自分たちも学ぶ必要性もあるということで、忙しいようだ。

 しかたないので、メリーに連れられて貴族の相手をする。一応マルジエートは協力体制をとっているので、駄目というわけではないだろうけど。


「……またか」

「それはこっちの台詞よ、ハルト・マルジエート」


 メリーに連れられて行った先、そこに行ったのはティリアリア・シャーネイレ、これで会うのは……ちゃんと会うのは三度目か。


「アルツに会いに来たんだけど」

「わざわざ来たところ悪いんだが、今はいないらしいぞ」

「そう……なんでわざわざあなたが対応しに来たのかしら? あなたは隣の領地の人間でしょう?」

「アルツと俺は元々冒険者の仲間だしな。貴族としても協力関係にある」


 そう答えるとティリアリアは考えこみ始める。


「……協力関係……それなら……」


 ぶつぶつと一人でつぶやいている。何を考えているのが気になるところだ。


「結局、何の用なんだ?」

「……あなたに言っていいことかは不明だけど……いえ、どうせなら相談したほうがいいかしら」


 そう言って、こちらに来た事情を話し始めた。内容そのものはまったく難しい話ではない。アルツに対する、ティリアリアの嫁入り話である。メリーもそうだが、俺もその内容に困惑している。いくらなんでも、アルツに対する嫁入り話を持ってくるのが早い。アルツの立場としてはフォローなんかを考えてむしろいたほうがいいのだが、それにしたって動きが早い。


「それ、納得しているのか? アルツは武威の貴族になったばかりだろ」

「問題ないわ。そもそも私から言い出したことだから」

「……え? 何で?」


 流石にその話を聞いて驚く。いや、驚いたは驚いたが、納得する部分もある。ティリアリアはアルツに助けられたことからそこそこアルツに対して好意を抱いていたのはわかる。前から、お礼をしたい、という話はしていたし。しかし、それでもそう、本当に貴族としての人生を使ってまで関わるものかと思う。


「お礼……いえ、それはある意味理由づけとしてだけど。単に私がアルツを好きだから。それだけよ」

「……そうか。まあ、それなら別にいいんじゃないか? そもそも、今のところ結婚相手が……正妻はいないから、問題はないだろうな」


 この世界の人間はどうも一途で感情の向け方が直球という感じなところがある。かなり時間を置いたのに、まだ前に隙になった気持ちが残っていたっぽいマリエッタとか。


「……へえ。話、聞かせてくれないかしら?」

「え?」

「正妻はいないって言いなおしたでしょう? 詳しく話を聞かせてもらおうかしら」

「あ……」


 どうやら、先ほど結婚相手がいない、ではなくわざわざ正妻がいないと言いなおしたことに疑問を持たれたようだ。いや、疑問というか、半ば確信というか、側室の立ち位置になるだろう人間がいると言うことがわかったのだろう。いつの間にかメリーがいない。逃げたか。


「話を聞かせてもらうわ、ハルト・マルジエート」

「……わかった、本人らも交えて話をさせてもらおう」


 諦めるしかない。とりあえず、俺からの伝聞ではなく、本人らを交えたうえで話をすることにしよう。面倒ごとの巻き添えは増やすべきだ。










 アルツ・ドラッケンに対し、シャーネイレの令嬢、ティリアリアの嫁入り話が届いた。アルツはそもそも、そういった事情には明るくなく、どうすればいいかとハルトに相談する。メリー、カリン、シェリーネを含めたメンバーの話し合いの結果として、アルツはそれを受けるべきだという決定になり、アルツはティリアリアを嫁に迎えることが決定した。

 この相談の前に、ティリアリアを含んだうえでの話し合いですでに嫁入りを推すという内容で合意されていた。ティリアリアとしては、側室がいること自体には文句はなかった。ただ、自分より先に関係を持っていると言うことには不満があったようだが。しかし、ティリアリアが正妻という形に収まるのならばそれ十分だと本人は考えているようだ。

 なお、ハルトは友人であるアルツの方が結婚が早いことを周囲にいろいろ言われた。ハルトは領主になってから結婚する予定なので、ある意味仕方がないのだが。


「……今日、ね。いえ、元々覚悟はできているけど……やっぱり、こういうのは緊張するわね」


 夜、ティリアリアは自室を出てアルツの部屋へと向かう。アルツはあれで寝るのが早いらしいため、ある程度急いでいかなければならない。彼女はアルツ結婚したはいいが、タイミングが悪かったのか、いわゆる初夜をまだ迎えていない。今日こそは、と意気込んでアルツの部屋へと向かっている。

 アルツの部屋へと向かっている所、たまたま自室に戻る途中のシェリーネとティリアリアが出会う。


「あれ……? ティリアさん、どうしたんですか?」

「シェ、シェリーネ……その、ちょっとね」


 出会った相手がすでにアルツと関係を持っているシェリーネだったためか、少々ティリアリアが同様する。そんなティリアリアにわずかに違和感を抱き、視線を向け、夜、眠る前とはいえ、格好が明らかに変であることに気づく。普段は大人しいシェリーネもなんだかんだで女性である。


「もしかして……アルツさんのところに?」

「え、そ、そんなことないわよ!?」


 明らかに図星をつかれて動揺しているティリアリア。バレバレのその行動に、シェリーネが真剣な表情でティリアリアをつかむ。


「だ、だめです!」

「ちょ、ちょっと? 何が駄目なのかしら?」

「一人じゃな駄目です! 死んじゃいます!」

「………………え?」


 真剣な表情で言うシェリーネの言葉の意味が分からず、ティリアリアが固まる。シェリーネが大きく叫んだためか、人が来たので、シェリーネがカリンを読んでくるように頼んだ。


「……それで、何の用?」

「カリンさん、ティリアさんがアルツさんのところに一人で行こうとしてたみたいで」

「ああ、それで止めているのね」

「……別にいったらだめというわけじゃないでしょう? それとも、これは側室に落とされたことへの意地悪かしら」


 ティリアリアとしても本気でそんなことをしているとは思っていないが、それくらいしかわざわざティリアリアを止める理由が思いつかない。


「これは経験しないと分からないから……ああ、そうね。アルツのところに行くんでしょう? 私たちも一緒位行くわ。シェリーネ、それなら問題ないわね」

「……そうですね」

「ちょ、ちょっと!? 何で一緒に……」

「いいから。行けばわかるから」


 そう言って、三人でアルツのところへと向かう。


 アルツの体力はとても高い。身体能力も高く、それまでずっと全力を費やしてきた神儀一刀に関しては、極めた時点でかなり費やす力が余っている形になっている。今でも鍛えないわけではないが、それでもかなりの情熱、体力、エネルギーが余っている形だ。アルツ自身はその手のことに疎く、今まで経験がなかったせいでそっち方面の事情は自分自身ですら不明だった。それが判明したのは、ハルトがカリンとシェリーネの背中を押した後、二人が一緒にアルツと結ばれた時である。

 アルツの持っていたエネルギーはとんでもなく、体力、精力が馬鹿にならないくらい高い。それが二人が朝までアルツに付き合った結果わかったことだ。なお、このとき体力的な問題でシェリーネが気絶している。カリンは何とか耐えたが、戦士として体力があるカリンでもギリギリなくらいである。もし、一人で相手をすればどうなるか。

 この後、アルツが領主になったことを知ったため、募集していたメイドにわざわざなりにきた別の領地にいる村娘や、奴隷から解放された弟子も巻き込まれる結果となったらしい。

貴族の嫁になった村娘や町娘の苦労って半端なさそうですね、という話。実際貴族教育や貴族の常識がない人間が貴族と付き合っていくのは難しそう

そして色々とアルツに先を越されているハルト……進展するのはいつになるやら

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