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slime閑話 掘り当てられたスライム迷宮

「ここなら見つかんねえか?」

「わかんねえ。でもかなり奥まで来たわけだからな……」

「人の来ねえような場所をわざわざ探したんだ。見つからないでほしい所だ」


 人の来ないような秘境……とまでは彼らがいる以上違うが、それほどまでに深い、森と山の奥。誰も来ないような場所に彼らはやってきていた。別に人殺しのような禁忌を侵そうと言うわけではない。黒魔術のような秘される儀式を行おうと言うわけでもない。まあ、犯罪は犯罪であるということになるのだが、密漁……いや、密掘? 本来ならば報告義務のある鉱石の採掘、掘った鉱石に応じ税金などを納めなければいけないわけだが、それを回避しようとしているわけである。つまり誰も掘っていることを知らなければ報告する必要はない。税金を納める必要はない。採掘して得た鉱石およびその売却金は全部自分たちの物である。うっはうはである。そんなわけなので彼らは誰にも見つからないような場所の山で採掘を行おうと言うわけである。


「しかし、ここにあるのか? なければ意味ないぞ?」

「実はな、ここに前に穴を掘った跡があるんだ」

「……何も見つからなかったからそれ以上掘られなかったんだろ、それ」

「そうでもないんだなあ。実はな……」


 そういって男はこっそりともう一人の男に懐から財貨を見せる。金銀財宝、そんな貴重で豪華で売ったならばとても高価に売れるような代物。もしくは売ったら確実に後をつけられ誰もいない場所で掴み上げられ他の物がどこにあるのか吐かされそうな稀少物である。


「お、お前それ何処で!」

「それがここなんだよ。これ一つだけってわけじゃないはずだ。他にも何かあるはずだぜ」

「……確かに実際に見つかっていればありえるかもしれないが」


 実際にこの場所で何らかの財宝、財貨を見つけている以上、他にもあるのではないか。掘った後にそのようなものがなぜ残っているのか、こんな何もない何も残っていない場所に何故そのような財宝類が埋められているのか、疑問点は色々ある物の、しかしその情報を持ちだしここまで来て何もしないでいるのもったいない。実際に行っている通り、この場所に財宝などがあるのならば、それを掘り当てれば億万長者……とまではいかなくとも、少しの間遊んで暮らせるほどのお金は手に入る。

 もちろんあまり過剰に売ったりすると勝手に掘ったことがばれるかもしれないのであまり沢山の掘り当てた代物を売るのは難しいが。それはそれで長い間ちょっといい生活ができる程度にお金を得られるのであればそれはそれでいいのではないか。


「よし、じゃあ掘るぞ!」

「わかったよ」


 二人は山を掘る。掘る場所は例の財宝を見つめた一度掘り返された場所、その付近。採掘と言っても簡単ではない。ただの露天掘りをするわけにもいかない。掘り進んで掘り進んで、洞窟のように掘り進めなければならない。まあ、その準備くらいはしているが、そもそもどの程度掘ればいいのか彼らもあまりあてはない。だからひたすら奥へ下へ、深い所を目当てに彼らは掘る。

 そうやって掘り進んでいると、いきなり大きな音と共に、岩が飛び出してくる。


「うおっ!?」

「なんだっ!?」


 岩が飛び出した、そこには穴のようなものがある。いや、その穴はなくなった。穴を埋める何かがそこに、そして消えた穴が飛び出してきた。いや、穴が飛び出してきたのではなく、穴を埋め尽くしている何かが飛び出してきた。それはそこにあった穴を覗きこもうとした男に降りかかる。


「うお!? なん、ななああああああああああああああああああっ!」

「だ、大丈夫か! おい! おい! くっ!」


 男に降りかかった何か。それは穴から湧き出し湧きだし湧きだし、もう一人の男にも襲い掛からんとその場所を埋め尽くしていく。流石にそれを看過するわけにはいかない。無事な方の男はその場から逃げ出す。穴の中を埋め尽くす何かから。

 外に飛び出し、ようやく男は一息つく。中に残してきた男のことは気になるが、しかし出てきたものが何かわからなければ危険すぎる。恐らくは液体ではない。液体にしては動きが遅いし流動的ではない。酸か何か、それも何か変だ。一体何が。


「な、これは……!」


 掘った穴を埋め尽くすように現れる。穴からも湧きだすように現れる。それはスライムである。

 スライムは最弱の生物、最弱の魔物とされている。スライムはその大きさ、強さ、倒しやすさゆえに最弱の魔物とされている。しかし、今目の前の穴を埋め尽くすような無数のスライムならばどうか。最弱の生物、最弱の魔物、しかしそれが無数の群れで場所を埋め尽くしたのならば? 特殊な攻撃スキル、全体への攻撃スキルを有さない一般人では対処が不可能だ。火を用いるなどある程度手間をかけても、群れたスライムであればその一部を犠牲に火を消してくるかもしれない。そもそも火を使おうとも対処できるのは一部のみ、火の当たる部分のみ。他の部分が襲い掛かってくるだろう。


「ほ、報告だ!」


 これほどのスライムを放置するわけにはいかない。場所が場所とは言え、危険度が高すぎる。男は冒険者ギルドにこの場所の報告をしに行った。






 後に、このとき現れたスライムのいくらかは周辺に散ったようだが、スライムの出てきた場所はある程度調査が進んだ。そうして、この山の中に迷宮が存在することが判明したようである。迷宮はスライムの迷宮であると言う話で、しかしスライムと言う最弱の魔物の名を冠しているが、他の魔物などがいないわけでもない。さらに言えば、スライムも無数に大量に多種多様に存在し、迷宮と言う場所を舞台がうまい具合に機能し、かなり危険な場所となっているようだ。

 それゆえに結構な危険な迷宮として現在は扱われている。攻略もスライムが多いゆえにあまり進められていない。スライムは冒険者にとって金回りの良い魔物ではない。武器防具ですら消化するスライムと戦うのはあまりいいものでもない。面倒ごとが多い。それゆえにスライムの迷宮は攻略が進められていない。


 彼らは知らない。その一番奥に、世界最強のスライムが未だ眠っていることを。それがいつか起きることを。

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