fragment (召喚型カードゲーマー)
「うぐっ……ここは?」
少年が辺りを見回す。彼のいる場所は森の中。
「……あれ? ここどこだ? 確か……俺はあいつと、グランドマスターと戦ってたはず……そうだ! 千恵子のやつは!?」
周りを見回すがまるで景色は変わりない。彼の言う千恵子、友人か恋人か何者かは知らないが、その女性、少女はいない。
「落ち着け、落ち着け俺……えっと、順番に整理しよう。俺は四人のマスターパートナーズを倒して……仲間が二人、やられたがそれでもあいつらを乗り越えて、残った最後の一人である千恵子と一緒にグランドマスターに挑んだ……その後……そうだ、グランドマスターは倒したんだ。だけど、最後の最後にあいつがカードを使ったんだ……確か、何のカードだったっけ…………そうだ、<異次元ワームホール>だ! あれを使って開いた穴に吸い込まれそうになったのを、千恵子をぶっとばして……俺はあの穴に吸い込まれた。そこまでは覚えてるんだが……」
腕を組んで改めて現在の状況を考える少年。彼がグランドマスターと戦った場所は宇宙のような暗い中にちらちらと塗された光に満ちた謎の空間。その足場は透明なガラスのようにも見える光の線が繋がり足場を作り出していた謎の舞台。そんな場所から一転して森の中である。
「……なんで森? いや、そもそもここは……どこだ? えっと、携帯携帯」
ごそごそと服を漁り少年はポケットから携帯電話を取り出す。最近の携帯電話は電話以外の機能もあるが、少年は電話以外の機能は苦手としている。しかし、少年が使えずとも機能しているシステムは存在し、GPSや電波の繋がり、そもそも電話ができれば今いる場所がどこであれ心配する必要はない。少年はグランドマスターを倒し世界を救った仲間だ。まあ、それを知っている人間は恐らく少数だが、彼の仲間たちならば彼を助けるのに手を貸してくれるだろう。
「最悪自分で戻れるしな……これが使えるなら全く問題ない」
少年は首から下がっている長方形の透明な水晶のようなものに触れる。
「さて、携帯は……圏外? え? これ確か衛星通信で世界中のどこでも電話できる奴だよな? えっと、GPS、GPS…………えっと、GPS、GPS……………………よし、表示された! え? 場所が分かりません? 何この表示? GPSって場所を教えてくれるんじゃないの? 電波繋がらない……ってことはないよな?」
困ったように頭を抱える少年。そんな少年の側に三人の男が近寄ってくる。横に大きい男、小さい男、細長い男。典型的なキャラクター性の強い三人組。しかも、彼らは明らかに素性がよくない感じである。物語におけるごろつき、盗賊とかそういう感じの。
「おう、兄ちゃん」
「ん? 何だよ?」
「何か良さげなもん持ってるじゃねえか。俺にくれよ」
「やだよ」
「ああん!? 兄貴がよこせって言ってんじゃねえか! とっととよこしやがれ!」
「いきなりなんだよこいつら……」
少年の感想ももっともなところかもしれないが、彼らの見た目的に思う所はないのだろうか。身なり、と言う点でもそうだが、腰に下げている物がある。剣、刀、分類はともかく人を殺せるような凶器である。
「おい。着ているもんから持っている物、特にその首から下げている物を含め全部置いてけ。じゃねーとぶっ殺す」
「っ!」
剣を抜き脅す細長い男。その言葉に少年は怒り出す。
「てめえ……これをよこせっつったのか?」
「ああ、その綺麗なもんは金になるだろうからな」
「金だとっ! ふざけんじゃねえ!」
「ああ?」
少年が何に怒っているのか、男たちには理解できない。
「これは竜札の珠だ! それをよこせとか、売るとか冗談でも質が悪いぜ!」
「竜札?」
「……知らねえのか? 世界中でみんなやってるはずだぞ?」
「はっ! 知るわけねえ。よこさねえっつーなら殺して奪うだけだ。おい、お前ら」
「へい!」
「おう!」
二人を伴い、細長い男が少年を襲おうとする。
「っ! くそ、後で何言われるわかんないけど、やるしかない! 来い! <フラワティック・フェアリー・ナイト>!」
少年の言葉と共に彼が首から下げている水晶のような宝石が光り、その光から木製の鎧を着こんだ一人の騎士が現れる。そのいでたちは男性か女性かはっきりしない中性的な印象を持ち、体つきからも推測は出来ない。しかし、その存在は騎士と呼ばれる存在であることは間違いない。ただ、携えているのはその鎧と同じ木製の剣だ。
「殺さずあいつらを追っ払え!」
「……!」
騎士は言葉を発さず、己の意思を伝える。騎士はその名にたがわず、正々堂々と騎士としての強さを見せ目の前の三人を叩きのめす。
「くっ! 覚えてろっ!」
そんな捨て台詞を残して三人は去っていく。
「ふう……今セットしているのが『樹妖精の竜』でよかった。『霞花の竜』だとちょっと不安だったな……あっちはあっちで逃げるつもりならよかったかもしれないけど。あ、ありがとう<フラワティック・フェアリー・ナイト>。お前が使ってるのが木剣で正直助かったよ」
「…………」
何も言わず、騎士は少し頭を下げる。感謝の言葉に礼を示したのである。寡黙な騎士、しかし少年にはその寡黙さが今回はネックである。彼にとっては存在できる相手が欲しいところであったゆえに。
危険に対処できるように騎士を伴い、少年は歩き出す。森の中、行く当てもなく方角も定かではなく。そうして彼らは開けたところに出た。傍に明らかに怪しい洞窟があり、野営の跡も少し残るような、そんな場所。そして、少年は出会った……先ほど倒した三人組と再び!
「お前!」
「ん?」
「くそっ! おい、お頭と仲間たちを呼んで来い!」
「お頭呼べるっすか!?」
「知るか! お頭呼べなくてもいいから仲間を呼んで来い!」
「へいっ!!!」
小さい男が中へと戻っていく。
「ふっふっふっ……今度こそ、お前らはお陀仏だ!」
「……なんだこのノリ」
割と慣れている所ではあるが、少年はこの流れについていけていない。もともと巻き込まれるのに慣れていると言うこともあるし、場合によっては自分が引き起こすこともある。ただ、その流れに逆らうことはせず、殆どは流れに従いその事件に対処する。そう言うことに慣れているがゆえに、彼はその場から逃げることも、その場に残っていた二人を倒すこともしなかった。
そうして待っていると、十数人の男と、一人の格が違う男を小さい男が伴って現れる。
「てめえが俺の部下を倒した奴か……」
「そこの男が部下ってならそうだが……」
「よくもやってくれやがったなあ!」
「先にやったのそっちなんだが……」
「だからなんだ! 俺らは泣く子も黙るブラッドオーガ盗賊団よ! それがてめえみたいなガキにやられて帰ってくるなんざ舐められるじゃねえか! 話を聞いて絶対に報復しなければならねえ相手なんだお前は!」
「ええー……」
一方的に恨まれるあたり少年にはいい迷惑である。
「……!」
「お前ら! そいつらを殺せ!」
「おおー!」
戦闘開始、その掛け声が上がる。
「っ……しかたない! <茨蕾竜>! <フラワティック・フェアリー・ナイト>! 乗れ!」
新たに茨の竜が現れる。その竜に騎士が乗った。いわゆる竜騎士というやつだ。だがそれでどうにかなるか、と言われると分からない。ただ、そもそも戦うために乗っているわけではない。
「<竜騎一体>! <開花の刻>! <フラワティック・フェアリー・ナイト>と<茨蕾竜>よ、その身命を一体とし、大いなる花妖精の魂を宿せ! 花開け!」
竜と騎士は一体となり、そして光に包まれる。茨の竜は開くにように広がり、その茨が光となった騎士に巻き付き、大きな花の蕾の形になる。そしてそれは大きく開いていく。開いてく中、その蕾が形を作っていく。作られる形は花ではなく、大きなから、翼、角、尾、爪、牙、鱗……すなわち、竜。
「現れろ! <フラワティック・フェアリー・ドラゴン>!!!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
竜の方向が響く。現れた竜は御伽噺、伝説に聞くような巨大な竜。
竜札。少年の世界で親しまれているカードバトルである。カードバトル、と言っても単なる遊戯ではなく、竜札の珠を用いてモンスターを召喚しそれを戦わせる危険な戦闘行為である。現在では竜札の珠に守りの力を組み込んでおり、それによってある程度の安全性は確保されている。
竜札はその名の通り、竜の召喚が大きな要素である。ただ、召喚できるモンスターに竜はいるが、あくまで力の弱い竜しか存在しない。本当の意味での竜の召喚を行うのに必要なのはコンボと呼ばれる技術である。モンスターとは別のスキルカード、アイテムカードの活用。それらを利用し、モンスターを組み合わせたり、モンスターを強化して竜を呼び出す。
たったそれだけだが、竜を呼び出すようなコンボを持てる人間は少ない。カードバトルではあるが、それぞれに現れるカードは個人で違ってくるからである。誰かと被ることもあるが、ほとんどのカードは一点ものであることが多い。それらをうまく使い、カードをつなげ、そして生み出されるコンボにてようやく竜が現れる。その竜の償還まで行きついた者は数少ない。
少年はそんな数少ないドラゴンを使える一人。しかも、複数の竜使いである。もっとも彼よりも上の使い手は彼に知る限り二人、同じくらいの使い手は三人いる。世界に目を向ければもっといるだろう。その程度、というには少年は強者であるのだが。
某遊なんとかが元ネタイメージ。あの召喚台詞のようないい感じの台詞が思い浮かばない。




