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slime閑話 ある集落の終わり

ある日迷宮に他のゴブリンよりも幾らか頭のいいゴブリンが生まれた。


ゴブリンという種族はそれなりに知能があり知恵のある種族である。複数の仲間でチームを組み、狩りをする。

もっともその程度のことは他の魔物でも行っている。例えば第二階層に存在する狼だって似たようなものだ。

ゴブリンたちは弱い。だから群れる。強い魔物は群れずとも強く、また群れた彼等ですら中々太刀打ちできない。

逆に群れすぎる魔物、鼠や百足、蝙蝠などにはゴブリンはなかなか勝てない。彼らは数匹の犠牲など無視できるから。

ゆえにゴブリンは同じ階層にいる蜥蜴かゾンビ以外を相手にするとなかなかつらい立場だ。


迷宮の魔物は住処を持たない。性格には住処を作る前に彼らは死んでしまう。

多くの場合、侵入した人間や魔物に狩られてそうなってしまう。それは住処を作っても変わらない。

住処を作ると魔物はそこを拠点にする。彼らはそこで生きる。ゆえにそこを狙えば確実に彼らを襲うことができる。

住処を作るのは本来迷宮に住む魔物にとっては危険なことだ。もっとも強力な魔物は無視できるのだが。


頭のいいゴブリンは考えた。住処が欲しい。安全な場所が欲しい。子供が欲しい。繁殖したい。

チームを作る。ゴブリンそれぞれに役割を持たせる。狙う魔物を限定する。

様々なことを考え、自分たちがまず安全に暮らせる場所が必要だと考えた。

彼は第三エリアを探し回った。そして隠れた穴を見つけ、その先を探索した。そこは安住の地だった。

鼠や蝙蝠、百足などの群れの魔物がいるわけでもなく、入り口は半ば塞がれ大きな魔物は入ってこれない。

群れの魔物がその穴を見つけ入ってきたら厄介ではあるが、それさえ阻止できればなんとでもなる。

それが分かった彼は周りのゴブリンを集め、その穴に連れて行った。


その結果、そこには多くのゴブリンたちの住処ができた。当然繁殖もできる。

穴はゴブリンが入って余裕のある大きさ、普通の人間は入りにくく、大きな魔物も入りづらい。

岩などを利用しそこには群れの魔物も入りにくくし、たまに一匹二匹の少ない数が侵入してくるのをどうにかする。

そうしてかれらは安住の地を確保したのだ。


さて、安全な場所を見つけた彼らが次に行うのは自分たちがより強くなる、自分たちがより充実することだ。

武器、防具、戦闘手段、餌、繁殖。様々なものに目を向ける。そして彼らが目を付けた一つが冒険者だ。

迷宮に挑む冒険者は強い。彼等ゴブリンでは勝てない冒険者が殆どだ。武器も防具も冒険者の方が強いことが多い。

だが逆に言えば、冒険者をどうにかできれば彼らの持ってる武器防具を奪える、彼らを餌にできる、彼等を犯せる。

リスクは高いがリターンが大きい。また、冒険者を相手に戦闘経験を積めば生き残ったゴブリンは強くなれる。

そうして考えられた冒険者を倒すゴブリンたち。しかしそれも簡単ではない。苦難の道だ。

斯くしてその試みは幾度か成功し、武器や防具、餌と繁殖の器。それらを彼らは得ることができたのである。


ある日、頭のいいゴブリンは変な報告を受ける。スライムにやられたという報告だ。

本当に変な話だが、ゴブリンの多くを襲って喰らえるスライムの存在がいたと言う話だ。

頭のいいゴブリンはそれが嘘であるとは思わなかった。自分のような他のゴブリンとは違うゴブリンがいる。

スライムにもそういうスライムがいてもおかしくない。そう考えた。そして、それは脅威であると言うことだ。

何故なら自分たちゴブリンが迷宮の穴で集落をつくり生活しているように、スライムも周辺の環境を大きく変えかねない。

だからゴブリンはスライムの討伐命令を出した。その襲ってきたスライムの特徴に合致するスライムを殺せと。

それが終わりの始まりだったことに、頭のいいゴブリンは気付かなかった。








ある日、頭のいいゴブリンは報告を受ける。外に出て行ったゴブリンたちが帰ってこないと。

一体何事か。外に何か出たのか。それを調べるために幾らか命令を出しゴブリンたちを外へと向かわせた。

しばらくしても、誰も帰ってこない。外に出ていったもの、外に出ていた物、集落の外にいるゴブリンは一人も帰ってこない。

外に出ている彼らは仕方がない。彼らは仲間が欠けるなどの事態にならなければ帰ってこない。

今までも、何度か被害を受けて帰ってきたり、逆に帰ってこなかったゴブリンたちもいた。だから返ってこないこともあるので気にはならない。

しかし、送り出したゴブリンたちは情報を集めすぐに帰ってくるはずだった。いったいどうしてか。


そんなふうに思い、どうしたものかと考えていると、びしゃりと天井から何かが落ちてきた。液体である。

なぜ天井から液体が? 空はない。洞窟の中、集落の頭上は岩の天井だ。穴も開いていないしそもそも迷宮。

水が落ちてくるはずはない。いや、そもそもこれは水か? 水にしてはどろりとして、まだまだ降ってきている。


天井を見上げるとそこにはスライムがいた。天井を覆いつくす程の超巨大なスライム。ヒュージスライムだ。

その名前をゴブリンは知らない。しかし、本能的に理解した。自分が殺せと命令したスライムであることを。

報復だ。それは確かにあり得ることだ。自分だって殺せと命令されて襲われた相手に容赦する気はない。

スライムに気づいたゴブリンたちの一部が恐慌状態に陥って外へと逃げようとする。

待てと声をかけるよりも早く、彼らは逃げ場を失った。入り口に逃げた彼らがスライムに襲われたからだ。

別のスライムではない。天井から続いているヒュージスライムの一部、それが集落の入り口に存在していたのである。

上から下から横から、襲い来るスライムが広がり飲み込み、彼らを殺して溶かし尽くした

外に出ていたスライムが帰ってこなかったのはそのヒュージスライムが原因だろう。

外に出ようとするゴブリン、戻ってくるゴブリンを絡めとり食らい殺したのだ。入り口はその場所唯一つ。

この集落の最大の弱点は外への出入り口が一つしかないこと。そこを抑えられれば彼らに逃げ場はない。


天井が降ってくる。いや、天井にいたスライムが振ってきた。スライムは集落を丸ごと飲み込んだ。

そして頭のいいゴブリンもそのスライムに飲み込まれた。息ができない、息ながらに溶かされる。

ああ、自分がやったことは結局実を結ばなかった。もしスライムに手を出すことをしなければ……

と、彼は最後に思った。そうしてゴブリンの集落はたった一体のスライムに飲み込まれ、その全てが消え去ったのであった。

スライム視点では書かれなかった話。

元々はゴブリン転生者にする気だったけど、別の転生者を悪人にするのはどうよ?

と、いう考えの結果頭のいいゴブリンが発生した、そういうのが生まれることもあるという感じに。

逆に、その設定利用ができるようになった方がおいしいかもしれない。

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