loopXX パティの提案
思い付きに近い内容なので整合性がとれていないかも。
「スィゼ! ハーレムを作ろっ!」
「………………お前は一体何を言っているんだ?」
広い屋敷の一室、ゆったりと休むことのできるゆとりのあるへやでゆっくりと休んでいたスィゼに対し、いきなりパーティキュラーが発生した一言が先の内容の物だった。現在スィゼは何十かのループを経由し、竜殺しを行っている。この世界の竜はもともと世界の力の一端ともいえる存在であり、その存在を殺してその力を奪うことで自分の力を高め、パーティキュラーに言われた神になるという目標に向けて進んでいる。
しかし、何十もループをしていればその間に最適解の存在と追及をしたり、その逆で最も多数を巻き込む形での最低効率をしてみたり、今まで手を出したことのないことに手を出して何をすればより良い結果を出せるか、逆に悪い結果になるかなどを調べたりもしている。それは別に誰かのために良い結果を求めたからということではなく、スィゼやパティが何度も同じことを繰り返す形で退屈の感情が生まれたことによるものだ。
その中の一つに竜を倒した功績で貴族位を貰ったり、領地経営を行ったりがある。当然最初は内政の具体的内容も知らずうまくいかなかったが、何度もやっていればある程度は形になるし、同じことを繰り返していればどういった運営を行えばいいのかが分かってくることだろう。そうして幾らか前のループから相当に良い領地経営が行える状態となっている。もちろんそれはあくまで同じ領地を経営する場合に限るのだが、ループ状態であれば余程変なことをしない限りはほとんど同じ結果を導き出せる。些細な変化はあれども最終的な結果はさほど変化しないものだ。
そして今回、パーティキュラーが言い出したこともまたそういった新しい試みに含まれるものと思われるものである。しかし突拍子もないということもあるが、スィゼとしては今までとは方向性の違う内容だったと言うこともあってかなり戸惑っている様子だ。
「ほら、英雄色を好むって言うじゃない? だからほら、男の夢でしょ女の子侍らすのって」
「…………そういう願望がないとは言わないけどな。でも、夢と現実、理想と現実、妄想と現実は違うものだ」
そういったことを思い描かない男子は少ない。いないかどうかは不明なのであくまで少ないと言う表現になるが、程度の差はあれそのことを考えない人間はいるのだろうか。別にハーレムとまではいかなくとも、女の子にモテたいと思う男は少なくないはずである。しかし、それはあくまで理想や妄想、願望でありそれが本当になることはそこまで考慮に入れていないものだ。むしろいきなりモテ出したら困ると思う方が強いのではないだろうか。そういった状況に突如陥って対処できる人間は最初からその手のことに関して対処できる性質を持つ人間だろう。
「えー? でも、ほら、ここおっきな家だし、スィゼもお偉いさんでしょ? 現実問題子供がいないと困らない?」
「困らない。そもそも俺がここの領主やってるのは特例だし、一代限りって話だろ。仮にセリアと子供ができてもその子供が跡を継ぐことはない。それに……ハーレムをするにしても、現実的な問題がある。俺の側によって来る女性は基本的にいない」
スィゼの人間関係はかなり狭い。まずループの初めの時点で家を出ることになるので家族との縁が切れ、その後は冒険者として登録をして一人での活動を続ける。そしてセリアと戦争で戦いを行いセリアを引き入れ、その後竜との戦いを行うことになる。この間に人間関係を作ればいいとも思うのだが、スィゼは最初に家を出た時点から相当に強い状態である。何度もループを行い、スィゼの強さは極めて高い状態となっている。魔力の量もそうだが技術も最適化されており、達人のような強さを持っている。肉体が初期状態なので少々奇妙な形となるが、それでも冒険者となったばかりの人間とは思えないくらいの強さだ。それを隠して付き合いを持つのは難しい。ゆえにスィゼはある段階からずっと一人での活動を行っている。
そして竜を倒した時点で、スィゼは半ば化け物扱いをされる。その状態でスィゼと付き合いのできる人間はループ中でスィゼの師匠であったメハルバくらいなものだ。それ以外はある一定以上からは近づこうとしないし、畏怖や畏敬の感情が強くまともな人間関係とは言えない歪な関係になるだろう。メハルバですらかなり関係性は難しいくらいなのだから。
ちなみにセリアは何度ループを繰り返してもスィゼに対しての反応は変わりがない。彼女は生まれからして少々特殊なうえにずっとスィゼのループについてきている立場なので他の人間とは比べられない特殊な関係である。使い魔であるパーティキュラーと同じく、絶対に裏切らないその関係性はスィゼにはありがたいものだだろう。
「そもそもセリアがいるのに他の女性がいるか、って話だろ」
「でも、七夕ってあるじゃない。ずっと同じ女性ばかりと一緒にだとつまらなくない?」
「あれは一年に一度しか会えなくて思いを募らせる系の話で別物じゃないか」
「あれ? そうだっけ?」
なお、この世界に七夕はない。星も違うしそもそも月日の概念も別物である。
「ただいま。何話してるの?」
「セリア、おかえり」
「おかえりー」
外で色々としていたセリアが部屋に入ってくる。スィゼとパーティキュラーの会話が聞こえていたが、その内容についてはわかっていないようである。
「パティがハーレムを作れ、とかいきなり言ってきてな」
「そーそー。だいじょーぶ! セリアちゃんが一番目だから!」
「そういう問題じゃないだろ」
「…………はーれむって? 何?」
「……あー、そういえばこっちにはその手の物はないのか?」
「概念くらいはあってしかるべき。まあ、ハーレムじゃわからないだろうけど後宮とかの言い方ならわかるかな? あ、それとも単にセリアちゃんがその内容について知らないだけの可能性があるね。じゃ、具体的に……」
そうしてパーティキュラーのハーレムについての話がされる。ハーレムについては具体的にどういうものかというのは厳密なものではないゆえに、パーティキュラーが思い描くものがその内容となる。
基本的にその内容は男性一人に対して女性が複数の相互の好意を持つ間柄で明確な恋愛関係や肉体関係を持つことで発生する集団状態、みたいな感じの話をパーティキュラーは行った。厳密にその人数や、どの程度の関係性からハーレムと呼ばれるかは不明だが、人数に関してはパーティキュラーは四人以上からと明確に設定しているようだ。二人では二股、三はもっともバランスのいい数字という扱いでそれが崩れる四人目からがハーレムと呼ばれる集団状態ということになるらしい。実際二人の女性を侍らすことをハーレムと呼ぶことは少ないような気もするが、三人が含まれないのは理由が不明だ。そのあたりは彼女が持っている独自の考え方によるものなのだろう。
「へー」
「反応薄いなー。もうちょっと何かないのー?」
「別にないけど」
「……えっと、セリアは否定しないのか? 俺が別の女性と、っていうのは」
「何で否定しないといけないのかわからないかな?」
セリアは特に何も感情を見せることはなく、普段と変わらないように言う。それはその手のことに対する否定の感情を押し隠しているとかそういうものではなく、本当に心の底からそう思っている様子である。
「私は、スィゼがそれを望むなら応援するよ?」
「いや、べつに望んでいるわけじゃないんだけど」
「……やっぱりそういう子だよね、セリアちゃんは」
セリアのスィゼへの想いは単純であり、同時に複雑な様相を見せるものである。
セリアはスィゼを愛しているわけではない。セリアの一番はスィゼであるが、それは正確には一番というよりは唯一という言葉の方が近いのだろう。セリアは先祖返りとして生まれ、家族に捨てられる形で王宮に流れ、そこで王族を含めすべての人間から化け物として、人間として見られない生き方をしていた。そしてその結果、セリアは自分を倒した人間に自分のすべてを渡すことを決めたのである。その結論に至る理由は、自分が敗北を迎えることで自分が化け物でなくなるからだ。人に負けることで、自分は化け物ではなく人だと思えるようになる。自分を人として認められる、認めてくれる相手、自分と対等に立てる相手。そして、恐らくはセリアを倒せる化け物として他の人気から見られるだろう相手。自分は人なのだと思うことができるようにしてくれて、自分のように化け物とみられるその相手に、セリアは自分だけは、その相手を化け物だと思うことはない。自分を人として肯定してくれた相手に、自分の全てをささげる。
恐らくその想いは愛や恋とは別物だ。しかし、真っ直ぐにスィゼへとその想いを向けているのは間違いない。そしてその想いは何度も繰り返した自分を重ねてより強くなり、セリアにはスィゼ以外に想いを向けるものは存在しない。スィゼからの物であれば、否定すらも、拒絶すらも受け入れる。そして他の者がスィゼと何をしようとも、スィゼが他の者に何を想おうとも、セリアは気にしない。セリアが思いを向けるのはスィゼのみであり、セリアが想いを聞き入れるのもまたスィゼのみであるのだから。
「で、セリアちゃんから許可はでたわけだけど、本当にハーレム作る気はないの?」
「ないって。先にも言った通り、相手がいないだろそもそも」
「むう……それを言われるとなー」
スィゼの側にいる女性は今までループから考えても非常に少ないと言わざるを得ない。そもそも交流関係が少ないのだが。
「むむむ、例えばハンナちゃんは?」
「今はクルドさんのところと知り合いになることはないだろ」
「でも一度告白されたでしょー?」
「それは事実だが、何度もあったなかの本当に一回だけだ。大半はロック相手だし。あの時のは本当に偶然の結果だろうと思ってる。結局いまはクルドさんのチームには入れないんだからどっちにしても無理だろ」
「むう」
クルドのチームに入ること自体は難しいことではない。スィゼが冒険者ギルドに登録をするタイミングを調整するだけでハンナが誘いをかけてくるのでその誘いに乗るだけだ。しかし現実的にクルドのチームでスィゼが活動するのは問題が多すぎる。何故かというとスィゼが強すぎるためだ。クルドはともかく、ハンナを含めた他のメンバーは冒険者登録したばかりの初心者。そんな中で冒険者として最上位と言ってもいいくらいのスィゼが入ればバランスが悪いどころの話ではない。どう考えてもクルドから他のチームに行くべきだと言われてチームから弾かれる未来しか見えないだろう。クルドとそのチームはスィゼにとっては初心、心のよりどころであったが、もう関わることはできない。強さを得てしまったゆえの結果だ。
「じゃあ、えっと、エリュちゃんは?」
「……そもそも関係性が薄いのと、他国の人間であると言う点が厳しくないか? あの時と違って今関わることになると仲良くなるよりも危険視の方が強いかもしれないだろうし。ほら、俺みたいに強い人間が国境付近にいるといろいろ怪しいしさ」
「ちくしょー! 強さか、強さのせいかー!!」
魔銀入手の時に関わった二人、その二人の妹の方であるエリュ。一番最初の時は彼女と少し仲が良くなる雰囲気もあったのだが、それ以降は順当に進めた結果吊り橋的なかかわり方もなくなり特にかかわりが強くなることもなくあっさりとした関係だった。そのせいもあってスィゼの中ではそこまで強い思い入れはない。そして竜も倒して力を得た現在、世界鉱を使いまわせるようパティの保管能力を駆使した結果、魔銀を回収する必要性がなくなり関りがさらに薄くなっている。また今のスィゼの強さで魔銀回収に赴くとそれはそれで疑問視や不安視されることだろう。そもそも戦争を一人で止める戦力であるスィゼが国境付近に行くとそれだけで不安になる。なので積極的に近寄ることもできない。
「じゃあ、ほら、適当に村娘でも攫ってこよう!」
「何を言っているんだお前は……せっかくまとに領地経営してるんだから面倒ごとを作ろうとするな」
もう相手は何でも言いとばかりにパーティキュラーが言うが、スィゼはあっさりと斬り捨てる。まあその対応も当然だろう。
「くー……やっぱり、ここは男の夢ハーレムでも作ろうって思ったんだけどなぁ。まさかスィゼの交友関係の狭さ少なさと、人間関係の構築の不備やそのあまりの強さ故に忌避されているせいで不可能になるとはああああああ」
「いや、お前女だろ……っていうか性別以前に使い魔じゃないかお前。主人の望んでいないことを積極的にしようとしてどうするんだ」
「何をおっしゃる兎さん。ほら、こういうののお約束でしょ、ハーレムって」
「どういうもののお約束だよ……」
結局突如パティが言い出したハーレムを作ろうと言う提案に関してはその前提条件やそれを作るべき対象である本人の思考、立場的な問題など様々な要因から根本的に否定されて成就することはなかった。それ以後もパーティキュラーは時々なにか変な提案をしてくるのだが、基本的に現実の状態に即していないことが多くその内容の多くは却下されておわることとなったのであった。
この作品はあくまでおまけ的なお話。前々からパティがいずれハーレムに関して何か言い出すだろうなーと考え、そうなった場合実際どうなのかと考えた結果から生まれた内容の作品。
そもそも登場する女性キャラが少ない。もともと登場キャラを限定して書いているのもありますが。まあ最初期だとまともに登場する名前ありのキャラが主人公とパティ含めて六人くらいだったりもしますし。




