第二章《破滅の死神》 Ⅰ
第二章突入です、この章では強敵が現れます。そしてレイア依存症のフレアは大丈夫なんでしょうか?
どうして彼女のことばかり考えてしまうのだろ?
都市外れの森の中で、碧色の長い髪に右目が隠れた少女がもの憂いげにため息をつく。
それを見た碧髪の少女と瓜二つの蒼い髪の幽霊のような半透明の少女が口元に笑を浮かべて尋ねてきた。
「また、彼女のことを考えていたの?」
碧髪の少女は無言で小さく頷き、頬を赤く染めた。
「そんなに会いたいなら会いに行けばいいと思うんだけど~?」
「私だってフレアに会いたい・・・・・・。でも、フレアを危険な目に遭わせたくないから・・・・・・」
碧髪の少女は寂しそうな顔で俯いた。
蒼い髪の少女は半透明な腕を伸ばし碧髪の少女の頭を撫で呟いた。
「もし、フレアが貴女と一緒にいることで危険に巻き込まれるとしても、フレアは貴女と一緒にいたいと思うんだけどな~」
「レシティアはフレアのことを知っているの・・・・・・? 私もフレアのことを懐かしいと思ったけど・・・・・・」
碧髪の少女が頭を押さえて、苦しそうな表情を見せる。
蒼い髪の少女――レティシアが気遣わしげな視線を向ける。
「フレアのことを思い出そうとすると・・・・・・、頭痛が・・・・・・」
「無理に思い出さなくていいのよレイア・・・・・・。少しずつ思い出せばいいから」
碧髪の少女――レイアは紅い瞳で空を見上げ、フレアという少女の顔を思い浮かべる。ウェーブのかかった赤い髪に、青く丸い瞳。そして、彼女の顔一面に浮かべた花笑が頭に焼きついて離れない。
「フレア・・・・・・、もう一度、貴女にに会いたい・・・・・・」
彼女の呟きは風に乗って消えた。
◇フレア・アデラード 視点
わたしは彼女のことばかり考えている。
【アルカディア学園】の三年花組の教室の休み時間。
数日前、わたしのことを魔族の男達から救ってくれた少女――レイアのことを考えていた。
「フレアまた考え事ですか? 貴女には似合いませんよ」
教室の机でうなだれていると、淑やかで透き通るような少女の声に顔を上げる。
長く絹のように美しい黒髪。紅玉のように紅い瞳。清らかで凛とした顔立ち。華奢な体つきの少女が私を心配そうに見ている。
「渚~、私はレイアに会いたいっ!」
「また、レイアさんの話ですか? 翼、聞いてくださいフレアが・・・・・・」
黒髪の少女――紅月渚。
撫でるように愛しい子『大和撫子』という言葉が相応しく、成績優秀、品行方正、容姿端麗の生徒会長でみんなの憧れの的。
努力家で秀才。そして剣の腕も一流のわたしの友人。
「フレアまた、レイアって奴のことかいい加減に忘れろよ」
「忘れるわけないじゃないっ! 私とレイアは運命の出会いだったのよ」
渚に呼ばれてきた、鈴が転がるような声だが少し言葉遣いが荒い少女に答える。
短い黒髪が猫の耳のようにぴょこんと二つにはね。瞳孔が縦長で猫ような青い瞳。端整な顔立ち。スラリとした長身の少女。
猫のような少女――天希翼。
男子生徒の制服を着ている上に、一人称が『俺』だがれっきとした女の子であって。
気が強く、猫のように自由奔放だが渚に懐いてる『黒猫』とみんなに呼ばれてる、本人は知らない。
「そのレイアは『魔女』て呼ばれてたんだろ? フレアの体目当てだったかもしれないんだぞ?」
「体目当てですって!? 翼そんな破廉恥なこと言ってはいけませんっ!」
「渚・・・・・・、なにか勘違いしてないか? 俺はフレアの高い『魔力』が目当てだって言いたかっただけで・・・・・・」
「そ、そんなことはわかっていますっ!」
「いや、わかってなかっただろ・・・・・・」
「あのさぁ・・・・・・」
「なんですか? フレア」
「なんだよ? フレア」
本当に息ピッタリでこちらを振り向く二人。
「夫婦漫才なら向こうでやってくんない・・・・・・?」
「だ、誰が夫婦漫才ですかっ! わたくしたちはフレアのことを心配して・・・・・・」
「そ、それにしても、甘い物のことばっかり考えてたフレアが、まさか恋する乙女になるとは思わなかったな・・・・・・」
「失礼な、そういう二人はどうなの?」
渚と翼は一瞬目が合って、すぐに視線を逸した。
「ま、まあ、人並みだな・・・・・・」
「は、はい、人並みです・・・・・・」
本当にこの二人は仲良しなんだから。
(あ~あ、わたしもレイアとイチャイチャしたいな~)
「ああ、レイアが転校してくるみたいな展開にならないかな~?」
「そんなベタな展開が・・・・・・」
そう翼が言いかけたると、クラスの女子の話し声が聞こえてきた。
「ねぇ、聞いた転校生の話」
「知ってる~、凄い美少女なんだってね。見てみたいね~」
それを聞いた瞬間、わたしは反射的に立ち上がりそのクラスの女子二人組に駆け寄った。
「ねぇねぇ! その話聞かせて~?」
「えっ、いいけど・・・・・・」
「フレア姫だ、今日も可愛い・・・・・・」
わたしはのほほんとしてるらしいから、『フレア姫』とか言われてる。
多分、授業中とかよく寝ているから『眠り姫』など呼ばれ始めたから、そこからきているのだと思う。
「なんでも下の学年に人形みたいな可愛い娘が転校してきたみたいでね~」
「その娘が凄い人気なの」
(人形みたいな可愛い娘? レイアは可愛いというより美人だったような・・・・・・?)
「その娘、名前は・・・・・・?」
「確かアリスって名前だったと思うけど・・・・・・?」
その言葉に、わたしは膝を突いて俯いた。
「そうだよね・・・・・・、そんなベタな展開ないよね・・・・・・」
「アリスって娘、凄い可愛いらしけど・・・・・・?」
「馬鹿、最近、フレア姫はレイアっていう美少女に助けられて、その娘のことで頭いっぱいなのよ・・・・・・」
「うぅ・・・・・・、教えてくれてありがとうね・・・・・・」
「ど、どういたしまして・・・・・・」
わたしはふらりと立ち上がり、教室を出ようとして、渚に呼び止められた。
「フレア、どこ行くのですか?」
「ちょっと、外の空気を吸ってくるね・・・・・・」
教室を出て、私はおばつかない足取りで歩き出した。
「あれは、重傷だな・・・・・・」
「ええ、フレアは大丈夫でしょうか・・・・・・?」
「さぁ、どうだろう・・・・・・?」
翼と渚は心配そうにフレアがいなくなった方向を眺めていた。
いったい、アリスという少女は何者なんでしょうか?
少し編集しました。そんなに違いはないです。