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イノセント・フラワー  作者: 聖 刹那
春季章 《凍てついた花の雪解け》
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第一章《運命の邂逅》 Ⅱ   (挿絵あり)

魔族の男が出てきますが、魔族の男が望んでるような展開には絶対ならないです。

 この街は【世界・ルミナシア】の東の【都市・アルカディア】。

 【和国】と呼ばれる独特の文化を持った島国の影響を色濃く受けた街で、『和の心』を大切にしてる。

 『和の心』とは、『個人を重視するのではなく、集団における秩序や調和、また礼儀を重んじること』という事らしい。


 住んでる人は『和国人』が殆どで、髪の色や目の色は黒色の人が多く。

 使われる言語は『和国語』と言い、『平仮名』とも呼ぶ。

 この言語は、世界でも使われている。


 しかし、この【都市・アルカディア】は【和国】以外の国とも交流が盛んで、異文化を多く取り入れている。

 観光客も多く、賑やかで発展した街である。


 わたしの通う【アルカディア学園】は【都市・アルカディア】の外れにあり、男女共学の小中高一貫校で、校則が緩くのんびりとした学校であり。

 わたしはそこの高等部の三年生です。


 そして、わたしの家は【アルカディア学園】のさらに外れの森【まどろみの森】にあって、通学が大変だといつも思う。

 なんで、カーラママたちはこんなところに家を建てたんだろう? 『エルフ』だから森の中が落ち着くのかな? まあ、わたしも静かで好きだけど・・・・・・。

 【まどろみの森】は危険な『魔物』が生息しておらず、一般人でもなんの装備もなくてもお散歩できるぐらい穏やかな森である。 


 『魔物』とは、人に害をなす危険な生物のことで、『魔力』を行使できる為、男性では太刀打ちできない。

 女性でも、凶暴な『魔物』は手に負えない場合がある。

 種類によっては、『魔獣』や『幻獣』と呼ぶこともある。


 春の木漏れ日が心地よく、なんだか眠たくなる・・・・・・って、寝てる場合じゃなかった!?

 しばらく森の中を走っていると、あたりの異変に気付く。 

 空気が重たく、なにか嫌な感じがする。

 それでも学園に向かう為、歩き出す、すると、数人の男と女性の話声が聞こえてきた。

「おい、こんな森の中に本当にあの女がいるのか?」

「ええ、最後に目撃されたのがこの森よ、なにか手掛かりがあるかもしれないわ」

「そうだな、今日こそ、あの忌まわしき小娘どもを、あの魔女どもを捉えて、我々、魔族に歯向かったことを後悔させてやる」

「「「ククク・・・・・」」」

 わたしは木の後ろに隠れ様子を伺った。

 そこには、黒衣の女性と、黒鎧の剣を腰に下げた男が三人と、狙撃銃を持った男がいた。

 『魔族』!? 【魔界・ニヴルヘイム】の『魔族』? とにかく見つかってはいけない。

(なんでこんなところに『魔族』がいるの!? 『魔族』はもう千年近く【ルミナシア】で目撃されてないはずなのに・・・・・・)

 わたしは息を殺した。


 確かに、人間の女性は男性より強い。

 しかし、それは人間においての話であって、『天族』や『魔族』は別で、両者は人間より基礎能力が高く、訓練を積んだ女性でなければ到底かなわない。


 学校の授業で戦闘訓練を受けているが、わたしは実戦経験が全くない。

 とてもではないが、『魔族』と戦うなんて無理だ。

 カーラママに「『魔物』や『魔族』に会ったらすぐに逃げなさい」と口を酸っぱくして言われていた。

(ここは逃げないと・・・・・・)

 私は後ずさりするように後ろに下がったが、その拍子に木の枝を踏んでしまい、パキッと乾いた音が響いた。

「誰っ!?」

 黒衣の女性が叫び、魔族の男たちが一斉にこちらを振り向いてきた。

 わたしは全身から血の気が引き、恐怖で体が震えた。

 しかし、ここにいれば魔族に捕まるのを待つだけ、『魔族』に捕まればなにをされるかわからない。

 わたしは意を決して走り出した。


「目撃者は捉えろと言われているけど、始末しろとは言われていないわ」

「つまり、殺さなければ好きにしていいわけか?」

「いいから、さっさと捕まえなさい。捕まえたらあなたたちの好きにするといいわ」

 黒衣の女性が男達に命令すると、男達はわたしを追いかけてきた。

「捕まえられるものなら、ね・・・・・・」

 黒衣の女性は小さく呟いてから、男達の後に続いて走り出した。


「チッ、逃げ足の速い娘だ、不細工な娘だったらブッ殺してやる!」

「上玉だったらどうするの?」

「決まってるだろ、気持ちいいことしてやるんだよ」

「「「アッハハハ」」」

 下品な会話をして追い掛けてくる『魔族』の男達を尻目に、わたしは森の中を駆ける。


 もうどれくらい走ったかわからないくらい逃げていた。

「はぁ・・・・・・、はぁ・・・・・・」

 わたしは息を切らしながら走る。

 『魔族』の男達はまだ追ってくる。 

 わたしは逃げ足は速いし、体力にも自信があった。しかし、疲労でそろそろ限界だった。

 突然、足がもつれて、派手に地面に倒れ込んだ。

「いった~い・・・・・・」

 わたしは生まれつきドジだった。

 でも今回は疲れて転けただけであって、わたしがドジだからでは・・・・・・。

 そんなことを考えてる間も、男達は迫ってくる。

 足が震え立ち上がることができなかったので、上体だけ起こして後ずさった。

 しかし、背中が気がぶつかり、わたしは『魔族』の男達に囲まれた。少し離れたところで黒衣の女性が事の成り行きを眺めている。


「いや・・・・・・、来ないで・・・・・・」

 わたしは泣きながら、かすれた声でお願いしたが、そんな願いを聞いてくれる筈がなく、『魔族』の男達は笑いながら舐め回すようにわたしを見ていた。

「やっぱり上玉だったな、『魔力』も高いようだから連れて帰るとするか?」

「そうだな、帰るまで我慢できないから、つまみ食いするぜ」

 黒鎧の男が一人が近づいてくる。

「近寄らないで・・・・・・、離れてっ!」

 わたしは咄嗟に落ちていた小石を力いっぱい黒鎧の男に投げた。

「石ころなんて当たったところで・・・・・・」

「馬鹿、避けなさいっ!」

「はっ・・・・・・?」

 黒衣の女性の声に反応した黒鎧の男がわたしの投げた小石を避けると、小石が岩に当たり岩が粉々に砕けた。

「その娘の『魔力』が込められた石だったようね。当たるとあなたの鎧も体もそこに散らばる小石みたいになっていと思うわ」

「舐めたことしやがって、このクソアマァァ!」

 黒鎧の男が腰の剣を抜き切りかかってきた。 

 唐突すぎて、回避する暇もなく、わたしは目を閉じ、切られることを覚悟した。


「――アクアバレット」

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!」

 どこからともなく、水のように澄んだ少女の声がして、水が弾ける音が響き、男の悲鳴が聞こえたので、恐る恐る目を開けると――。


挿絵(By みてみん)


 一人の少女がわたしの目の前にいて、わたしはその少女に目を奪われた。

 外見は十七歳ぐらいで、澄んだ空のような碧色の長い髪は煌びやかな流水のよう。右目が髪に隠れミステリアスな雰囲気を醸し出す。左の瞳は宝石のようで紅色の輝きを放つ。端麗な顔立ちは気品を漂わせる。雪のような白い肌は雪国の少女を思わせる。背丈はわたしより少し高く、華奢な体つきながら豊かな胸が目に付く・・・・・・じゃなくて! 初対面の女性にいやらしい目で見て失礼だよね、うん。

 服装は【アルカディア学園】の制服に近いけどスカートがフレアスカートなのが華奢な彼女にはとっても似合っていた。

 初対面のはずなのに、髪の色以外が夢で見た少女・レイアそっくりで思わず。

「レイア・・・・・・?」

 夢で見た少女の名前を呟いた。

 すると、少女がこちらを振り返り驚いた表情でこちらを見詰める。

「どうして貴女は私の名前を知っているの・・・・・・?」

 レイアに尋ねられわたしは困っていると、もう一人、少女の声が聞こえてきた。

「そんなところで、運命の出会いしてないで、さっさと『魔族』どもを片付けるわよ」

 声がする方を見ると本が浮いていて、そこから声がすることがわかった。

「本が喋ってるっ!?」

「私はレティシア。そこの貴女をいやらしい目つきで見てる娘が、知ってるようだけどレイアよ」

「別にいやらしい目つきで見ていないわ・・・・・・。ただ、可憐な少女だと思っただけよ・・・・・・」

「奇遇だねレイア。わたしも貴女のこと綺麗で見惚れて・・・・・・」


「「「お前らなにイチャイチャしてんだぁぁ!」」」


 わたしたちが内容がないような会話をしていると、痺れを切らした『魔族』の男達が横槍を入れてきた。

 そういえばわたし、『魔族』に襲われているんのだった、レイアに夢中で忘れてた。

「ちょっと~、私たちガールズトークの邪魔しないでくれない? そこで無様に倒れてる馬鹿連れて、さっさと【魔界】に帰って欲しいんだけど~?」

 レシティアの提案に『魔族』の男達が首を縦に振る筈がなく、『魔族』の男達は苛立ちながら答える。

「そうはいくか、やっと見つけた。《剣の魔女・レイア》並びに《運命の魔女・レティシア》、今日こそ我々魔族の積年の恨みを・・・・・・」

「少し黙っていてくれない? あなた達の声は耳障りよ・・・・・・」

 レイアが『魔族』の男達を睨みながら呟いた。 

 『魔族』の男達は一瞬、怖気づいた。

 すると、黒衣の女性が前に出て、フードを脱いだ。

「わっ、美人さんだ・・・・・・」

 わたしは呟く。


 そこには、おっとりした二十代前半の外見をした、長い金髪で碧眼の美しい女性がいた。

「初めまして~、麗しいお嬢さん方。私は【鍵錠(けんじょう)悪魔・クレイス・ベアトリクス】と申しま~す」

 さっきまでの凛とした声とは違い、穏やかで美しい声で挨拶してお辞儀した。

「あら、綺麗な人だこと。それに、『魔力量』からして『上級悪魔』といったところかしら?」

「そうね・・・・・・、一筋縄ではいかないようね・・・・・・」

 レティシアとレイアの会話を聞いて、クレイスは首を横に振った。

「私は貴女達と戦う気はありませ~ん。『魔族』で評判の『魔女』さんを一目見てみたかっただけで~す」

「それで、一目見た感想は?」

「可愛らしいお嬢さんですね~、人気なのも頷けま~す。そちらの赤い髪のお嬢さんもとっても可愛いですね~」

 なんだか話がよくわからない方向に進んでるけど、いいのかな?

「それでは、私は【魔界】に帰りますね~。また会いましょう~」

「お待ちください、クレイス様、我々では『魔女』どもに敵わない懸念が・・・・・・」

 【魔界】に帰ろうとしたクレイスを黒鎧の男が制した。

「『魔族』の積年の恨みを晴らすのじゃなかったの~? 私はあの娘達になんの恨みもないから戦う意味はないわ~」

「し、しかし・・・・・・」

 クレイスが呆れてため息をついて、一つの『魔石』を取り出した。


 『魔石』とは『魔力』が込められた石で、『魔力』を注ぎ込めば『魔石』が反応して、様々な事象を起こすことができる石。

 

「じゃあ、置き土産を残していくわ~。それでもんだいないでしょう?」

「わ、わかりました・・・・・・」

 黒鎧の男が渋々頷いたのを見て、クレイスが『魔石』を投げ。

「地獄の番犬よ――三位一体の獅子となり現れなさい《ケルベロス》」

 と唱えたその刹那――『魔石』から黒い光が放たれ、やがて収束し『魔物』が現れた。 

 その魔物は三つの首を持つ巨大な犬だった。

「じゃあ、そういうことで帰りま~す」

 クレイスがまた『魔石』を取り出し、その『魔石』が輝くと、そこには彼女の姿はなかった。


「消えた・・・・・・?」

「『空間転移』して彼女は魔界に帰ったようね・・・・・・」

 わたしの疑問にレイアが答えてくれた。


 『空間転移』とは、古代技術の一つで、対象の人または物を、離れた空間座標へ一瞬で移動させること。

 

「あなた達も『魔界』に帰ったらどう? 今なら痛い目にあわなくて済むけど・・・・・・」

「ふざけるなっ! 小娘が口の聞き方を体に教えてやる!」

「そう・・・・・・じゃあ、死んでも文句言えないわね・・・・・・」

 レイアの声は氷のように冷たく、背筋がぞっとする。

 そして、目を閉じ澄んだ声を響かせる。

「虚構の花園――【無原罪者の庭(フラワー・ガーデン)】」

 そして、レイアの掛け声と共に世界が硝子のように砕け、視界が一変した。



次回、下級悪魔数人とケロベロス、レイアとレティシアとフレアの戦闘開始です。


まあまあ編集しました。前から読んでいただいた方には、謝罪します。

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