回想 《桜散りし記憶》
碧の追憶、レイアとレティシアの過去の話の詳細です。
重要な話なので追加させていただきます。
私は、私たちは七年前に、セツナ・エンフィールド、という『桜』のように美しく優雅な女性と出逢った。
私たちは生まれたばかりなうえに特異な存在だったが、セツナも普通の人ではなく、身寄りのない私たちの母親となってくれた。
私はレティシアがいないと生きることもできない不安定な存在。そんな私でもセツナやレティシアは私を家族として、温かく迎い入れてくれた。
だから、彼女たちのことが家族として好きだった。血の繋がりよりも確かな、家族の絆で繋がっていた。
もっとも、レティシアはセツナのことを母としてではなく、一人の女性として見ていて、彼女に恋愛感情を抱いていた。しかし、セツナにも想い人である女性がいたようで、私は少し複雑な気持ちで見守っていた。
セツナの義妹の、セシル・ヴァレンタイン。その妻の、ユリア・ヴァレンタイン。二人の養女の、クレア・ヴァレンタイン。
そして、街の人々に見守られてながら、私たちは毎日を平穏で幸福に満ちた日々を送っていた――あの日までは・・・・・・。
ある冬の夜にレティシアは『セツナが殺される』という夢を見たと喚いてた。私もセツナもどうせ夢だろうと間に受けなかった。
その反応を見て、レティシアは一人家を飛び出していった。私もセツナはレシティアを追って家を飛び出す。
私の住んでいた街の外れの森は深く、月の明かりだけを頼りにレシティアを捜す。
やっとの思いで、レシティアを見つけたと思ったが、それは偽者で触れた瞬間に砂のように崩れる、触れていたセツナは呪われ一時的に『魔力』を全て封じられた。それでもレティシアを引き続き捜す。
そして、本当のレティシアを見つけたが、『魔族』の女に追い詰められていた、セツナが、スヴァルト・アールヴ、と呼んでいた。
セツナが来てレティシアが安堵する、その時を狙ったスヴァルトがレティシアに銃弾を放つ。そして、レティシアを庇ったセツナを銃弾が貫いた。『魔力』が全て封じられた彼女はか弱い女性だ、それでもレティシアを守りたかったのだろう、私もそうしただろう。
私は狼狽しているレティシアの体を借りて辺りを霧に包み、セツナを横抱きしたまま逃げ、ある程度、スヴァルトから離れたらレティシアの体から幽体離脱した。私はレティシアが寄り代で憑依すれば短時間だけこの世界に『霊体』ではなく『実体』として存在できた。
レティシアは相変わらず冷静さを失って適切な判断ができなかったため、私はレティシアを説得することにした。しかし、すぐにスヴァルトに追いつかれレティシアも重症を負わされた。
そして、『魔族』の男たちが瀕死状態のセツナとレティシアを穢そうとした。だから、私は激情を抑えきれず、レティシアの生と死の境目の体を強制的に動かし、激痛で張り裂けそうな体の神経を凍らせて痛覚を遮断して、凍てついて動かない体を人形のように操り。『魔族』の男たちを皆殺しにしてしまった。
私の瞳には彼らの怨嗟の色が見えた。しかし、大切な家族を傷つけられたことを許せるわけがなく、狂いだした歯車が止まることはなく、私の狂気に等しい感情は、命を奪うことになんの躊躇いもなかった。スヴァルトは強く、殺されることはなかった。
そして、スヴァルトの仲間の神鬼という女。セシルとユリアにクレアがこの場に駆けつけた。
不利な状況と判断したスヴァルトと神鬼は魔界【ニヴルヘイム】へ撤退することにした。そこまではよかった、しかし、彼女たちはセツナを連れて行こうとした。私は是が非でもセツナを取り返そうとした。私の異常な精神状態に不安を覚えたセシルとユリアは私を制した。そして、セツナは連れ去られてしまった・・・・・・。
レティシアに『冷静になれ』と言った私もまったく冷静じゃなかった。私が冷静だったら全員で協力してセツナを奪還できただろう。私があのとき冷静だったら、レティシアの夢を信じていたら、と後悔が降りしきる雪のように積もる。
私たちは住んでいた街から旅立つことにした。
セシルも、ユリアも、クレアも、街の人たちも私たちを引き止めることはなく、心配そうに私たちを見送ってくれた。
旅をしても、私の瞳に映る世界は無機質で、心を動かすことはない・・・・・・。それは、私の心が凍りつつあるから。
体は痛みも、温もりも、何も感じることなく冷え切っている。
心まで何も感じることがなかったら私は完全に人形となってしまう。だから、まだ私は人であるといえるのだろう・・・・・・。
・・・・・・本当にそういえるのだろうか?
私はあの日を境に、一つの存在としてレティシアから分離した。とはいっても彼女が体の宿主で、私は体を借りていることに変わりはない。変わったのは私が人の在り方ではなくなったこと。
私の体は凍結して温もりを失って、温もりを感じなくなり、痛みを感じなくなった。そんな私は人であるといえるのだろうか? いつしか私の心も痛みも温もりを忘れて、何も感じなくなってしまうのではないだろうか? そのときが訪れても私は人であるといえるのだろうか? そんな不安が心を埋め尽くす。
セツナ。彼女は色んなことを私たちに教えてくれた、私たちを導いてくれた。でも、もう彼女はいない、『桜』のように美しい微笑みを見れることはない。艶があり透き通る声を聞けることはない。彼女の温もりに触れることも感じることも、もうできない・・・・・・。
花は散り、春は終わり、永い冬へと私を誘う。私の心も少しずつ凍てつき氷に閉ざされていく・・・・・・。
レティシアがいてくれる。けれども、私たちは触れ合うことはできない。彼女を一番近くに感じているのに、一番遠くに感じる。
――ねぇ、レティシア。私はもう二度と温もりに触れることなく心すら氷に閉ざされてしまうのかしら・・・・・・? もし、そのときが来たら貴女だけでも私を愛してね? 凍りついた人形のような私を・・・・・・。
最後のレイアさんが病んでるんですけど・・・・・・だ、大丈夫です問題ない、と思います。
今まで投稿した話をかなり編集することになり、ご迷惑をお掛けしますが、ご了承ください。




