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イノセント・フラワー  作者: 聖 刹那
序章 《出逢うための追憶》
3/22

碧の追憶 《桜散る、永い冬の訪れ》

この話はレイアとレシティアの過去の話です。

7年前彼女たちが生まれてから、セツナという女性と幸せに暮らしていましたが。

『魔族』が彼女たちの住んでる街を攻めてきた、という内容です。

 紅く染まった月が照らす街外れの深い森の中。月明かりの下、今まさに美しい桜が散り逝く――。

「お願いだから・・・・・・死なないで・・・・・・」

 蒼い髪の少女が涙を流しながら、燃えるような紅い月と同等に紅い血潮に浸る桜色の髪の女性を抱いている。

 蒼い髪の少女は年端もいかない少女は、幼い容姿に不釣り合いな妖艶な雰囲気を放っている。しかし、泣き崩れたその面持ちは年相応に感じる。

 桜色の髪の女性は二十代前半ぐらいで年相応に落ち着きがあり桜のように優美だが、その美しさが相まって、まさに『桜が散る』それほど世にも美しくも儚い光景であった。

「レティシア・・・・・・、あたしはもう千年以上生きたもう十分だよ・・・・・・。心残りはあるんだけどねぇ・・・・・・」

「そんなこと言わないでっ! 私たちともっと一緒にいてよ・・・・・・」

 桜色の髪は女性は小さく微笑んで、ゆっくりと瞼を閉じる。

 桜色の髪の女性はセツナ。蒼い髪の少女はレティシア。

 そして、幽霊のように半透明な私はレイア。『実体』がない私は宿主であるレティシアに注意を促す。

「レティシア、落ち着いて・・・・・・。『魔族』が私たちを探している、見つかるのも時間の問題よ・・・・・・」

「どうしてレイアはそんなに冷静でいられるのっ!? レイアはセツナがこんなことになってなんとも思わないのっ!?」

「そんなわけないでしょっ! 私が言いたいのは冷静にならないと助かるものも助からない、ってことよ・・・・・・」

「だけど・・・・・・」

「まだセツナは死んだわけじゃない、セシルやユリアを呼ぶことができればきっと・・・・・・」

「――生憎だが、セシルやユリアは今頃、神鬼(しんき)と遊んでいるだろう・・・・・・」

 女性にしては低くはっきりとした声。私たちは恐る恐る振り向く――瞬間、乾いた銃声が響く。

「――あっ・・・・・・」

 銃弾がレティシアの左眼を貫き血飛沫を散らす。続く三発の銃声、三発の銃弾にレシティア心臓は撃ち抜かれ、そのままセツナの上に重なるように倒れ込み更に紅い血の海が広がっていく。

「レティシアッ!?」

「戦場で泣き喚く乳臭い小娘がしゃしゃり出るからこうなるんだ・・・・・・」 

 皮肉を口にしながらレティシアを撃った女が姿を現す。練色の髪はウェーブがかかっており肩に触れるくらいのミディアム。尖った長い耳。整った顔立ちに白藍色の鋭い眼光が射抜く。艷やかな褐色の肌を包む黒いローブ。そして、彼女の両手に握られた拳銃に似た銀色の『魔導銃』が紅い月光を反射している。

 美しい女性だが、そんなことはどうでもよかった・・・・・・。

 ――私の大切な家族を傷つけた・・・・・・絶対に許さない。

「お前たち、そこの二人を回収しろ」

「へへ、わかりました。この女は俺らの好きにしていいですがねぇ~?」

「・・・・・・お前たちには勿体ないが、好きにしろ」

「こんな上玉なかなかいないぜ、聞いたのは俺だから、俺からやるぜ」

「じゃあ、俺はこの小娘にするか」

「後で交代しろよ」

 十人ぐらい『魔族』の男たちがセツナとレティシアに群がる。瀕死の婦女子に暴行しようというのだろう、なんて下劣な行為をしようとしているのだろう。

 ――そんなこと、絶対にさせない・・・・・・絶対に許さない。

「・・・・・・絶対に許さない」

 私はレシティアの体に憑依し、瀕死の体を強制的に動かし立ち上がる。撃ち抜かれた左眼や心臓から血潮が溢れ出て、激しい痛みが体を駆け巡る。

 ――痛い。けど、大切な人を傷つけられた心の痛みに比べれば何てことない・・・・・・。

 体の神経を凍らせ痛覚を遮断する。体の熱が徐々に失われていく、やはり、そんなことは些細なことだ。

 潰れた左眼は紅い月となり、現状を映す。髪は蒼い蒼天から碧い碧海(へきかい)へと染まってゆく。

「なんだ? こいつまだ動けるみたいだぜ」

「腹でも殴ったら大人しくなるだろう」

「はは、違いねぇ」

 男の一人が私を大人しくさせるため前に出る。小馬鹿するようにへらへらと笑ってる。

「お嬢ちゃんは大人しく俺らに腰でも振って、なっ!」

 私の腹部を殴打しようと重心を低くして殴りつける、が――男の拳は私に届くことなく、地に倒れ伏す。

 男の左胸から血がじわじわと溢れ出る、その心臓を穿ったのは私の血を凍らせて作り出した、『紅い剣』。

 十三本の『紅い剣』が私を中心に空中でくるくると旋回する。その中から二本の剣を掴み、切っ先を『魔族』たちに向ける。

「・・・・・・私の大切な家族を傷つけた、あなたたち絶対に許さないっ!」

 私は剣を握り締め、果敢に『魔族』に切り込んでいく。

 そして、紅い月に照らされた世界をいっそうに紅く、紅く染め上げていく・・・・・・。

 



この話の内容をざっくりと説明します。

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