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イノセント・フラワー  作者: 聖 刹那
春季章 《凍てついた花の雪解け》
20/22

第四章《災厄の種》 Ⅰ

 第四章に突入です、不穏な気配が漂っていますね。

 たまには、彼女たちにも息抜きさせたいです。

◇フレア・アデラード 視点


 夜の帳が下り、意識が深いまどろみに沈んでも、やはり彼女のことを考えてしまう。

 レイア。彼女は儚く散ってしまいそうな花のようだが、今という一瞬を命を燃やすように美しく鮮烈に生きている、その姿は多くのものを魅了する。

 わたしもその美しい彼女に惹かれているのだろうか? いや、それだけじゃない。

 彼女は儚い花のようでありながら、月のように柔らかい眼差しでわたしを見つめ、微笑んでくれる。

 そんな儚くも美しい彼女にわたしは恋しているのだろう。

 寝ても覚めても彼女のことばかり考えてる、一種の病気かもしれない。

 彼女の笑顔、彼女の声、彼女の全てが愛おしい、その全てを独り占めできたらどれだけ幸せだろう?

 ――いや、そんなこと考えてない、そんな独占欲なんてものは・・・・・・。

『ないわけないでしょ? アナタはあの女を自分だけのモノにしたい、って考えてるんでしょ?』

 わたしの思考は小馬鹿にするような高い少女の声に遮られる。


 聞き覚えのない声に違和感を覚えながら辺りを見回す。夢を見ているのだろうか?

 辺りは暗闇に閉ざされている、その中に一輪だけ『向日葵』が光を放ちながら咲いていた。 

 暗闇の中に咲くその花は道しるべのようで、わたしの足は吸い寄せられるように『向日葵』に向かって行く。

 『向日葵』にそっと触れてみる。すると突然、『向日葵』が輝き、光が収まるとわたしの姿をした少女がそこに立っていた。

『ようやく『器』を手に入れられたわ』

 彼女の声は先程聞いた声と同じだった。

「貴女は誰?」

 わたしは疑問に思ったことを口にする。わたしの姿をした少女は口角を上げて笑う。

『今のワタシはアナタそのものよ。簡単に言えばアナタの感情の一部かしら? まあ、ワタシのことは【アスモデウス】って呼んでくれたらいいわ、アイツもそう呼んでいたし』

「わたしの感情の一部・・・・・・? 【アスモデウス】・・・・・・?」

『まあ、そういうことだから、よろしくね~』

「あ、うん? よろしく」

 そこで【アスモデウス】と名乗る少女は右手を差し出したので、わたしはおずおずとその手を握り握手をする。

『それにしてもたまってる体よねぇ? 他人どころか自分で慰めたことないなんて純情気取りもいいとこだわ』

「たまってる・・・・・・? 純情気取り・・・・・・?」

『いや、この様子だとなんにも知らないみたいね、まあいいわ・・・・・・』

「【アスモデウス】ってよくわかわないね?」

『アタシからすればアナタの方がよくわからないわ・・・・・・』

 【アスモデウス】は呆れたように頭に手を当てため息をつく。

『じゃあ、話を戻すわ』

「うん、眠いから手短にね~、ふぁ~」

 わたしはあくびをしながら話しの続きを促す。

 これは夢だから現実のわたしは寝ているのだろうか? まあ、考えてもわからないし仕方ないか。

『と、とにかく、アナタはレイアという女を独り占めしたいって思っていたのよね?』

「そ、そんなことは・・・・・・」

 否定しきることができず、言葉に詰まる。そのわたしの姿を見て満足気に【アスモデウス】が笑う。

『そうよね、アナタはレイアという女の全てが欲しいのよねぇ? 手に入れて身も心も自分色に染めてしまいたいのよねぇ?』

「違うっ! そんな酷いことレイアにしたくないっ!」

『でも理性が邪魔して、彼女に手を出せない。今すぐにでも彼女を滅茶苦茶にしたいのにねぇ?』

「ち、違う・・・・・・・、誰でも美しい花に心惹かれるように、私は美しいレイアのことが好きなだけ・・・・・・」

『どんなに綺麗な言葉で装っても、心の醜い感情を隠しきることはできない・・・・・・』

「わたしは・・・・・・」

 心の奥底に眠る感情の種が芽吹く。

『だから、理性という名の衣服は脱ぎ捨てて、本性をさらけ出して裸になればいい』

「わたしは・・・・・・」

 芽吹いた感情が黒い『向日葵』の花を咲かす。

『きっと、彼女はアナタの全てを受け入れる。だから、何も心配しなくていいわ』

「わたしは・・・・・・レイアが欲しい、レイアの全てが欲しい、レイアをわたしの色に染めてしまいたい・・・・・・」

 自分でも隠したい醜い感情、今はそれをされけ出す。

 心の中で芽生えた黒い感情、それに身を委ねることすら心地よく感じる。

「レイア、待ってね? わたしが迎えに行くから・・・・・・」

 『悪魔の囁き』とも言える言葉を疑いもせず鵜呑(うの)みにする。

 この時、自分のことばかり考えていたわたしは、彼女を傷つけることになるなんて思いもしなかった・・・・・・。


 


◆レイア・エンフィールド 視点


「フレア・・・・・・?」

 彼女に呼ばれた気がして読んでいた本を一旦閉じる。

 窓の外に視線を向けても、月が闇夜を照らしているだけだった。

「どうしの~? フレアが恋しくて、切なく彼女の名前を呟くレイアさん」

 半透明の『霊体』のレシティアが私をからかうように声をかけてくる。

「フレアのことが恋しいのはいつものことよ・・・・・・?」

 本に手を添えて小さく笑う。自分でも今の発言はどうかと思うが、事実だから仕方ない。

「いや~、夜も熱々ですね~、二人で熱い夜を過ごす日も近いのかしら~?」

「貴女は何を言ってるのかしら・・・・・・?」

 恍惚な表情を浮かべるレシティアを冷ややかな視線を送り、椅子から立ち上がり窓の外に夜空を眺める。

「フレアに何かあったのかしら・・・・・・? 胸がざわつくの・・・・・・」

「それは・・・・・・」

「それは・・・・・・?」

「・・・・・・恋ですね」

「貴女に相談した私が馬鹿だったわ・・・・・・、私がフレアに恋してるなんて今に始まったことじゃないじゃない・・・・・・」

「それもそうね」

 胸の中にある不安な気持ちは消えることはない。

 しかし、レシティアのお陰で少し緊張が和らいだ、場の空気を和ませる、レシティアのこういう性格は好きだ。

 今日、学校でフレアに会って彼女の笑顔を見れば不安も完全に消えるだろう。

 太陽のように眩しく光輝な笑顔を見れば、きっと大丈夫・・・・・・。

「レイア、読書もいいけど、そろそろ寝なさいよ?」

「ええ、罪を犯した少女の全てを許して、彼女の全てを受け入れた少女の話しが、感動的でつい夢中になってしまったわ・・・・・・」

「罪ねぇ・・・・・・、もしフレアが罪を犯したら貴女はどうする・・・・・・?」

「フレアが罪を犯したら? そうね、その罪を彼女ごと背負っていくわ・・・・・・」

「そう・・・・・・」

「とはいっても、彼女に罪を犯させなんてしなけどね・・・・・・」

「まあ、貴女ならそう言うと思ったわ」

 少し不安な表情をしていたレシティアはいつものように妖艶な微笑みを浮かべていた。

 レシティアはよくわからない質問をたまにする、彼女なりに何か考えがあるのだろうし深く詮索しない。

 流石に徹夜は体に堪えるので、少しだけでも体を休めるため、わたしは浅い眠りにつく。


 罪、それは誰しも必ず犯してしまうもの、そして罪には罰が与えられる。

 しかし、フレアが罪を犯してもわたしは許してしまうのだろう。

 例え彼女が私を殺そうが、世界を滅ぼそうとも・・・・・・。


 

 次回、太陽フレアレイアは巡り会えるのでしょうか?

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