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イノセント・フラワー  作者: 聖 刹那
春季章 《凍てついた花の雪解け》
19/22

第三章《巡り合う花》 Ⅴ

 投稿がかなり遅れて申し訳ないです。

 過去に自分が投稿した話を納得できないので修正していますので、修正が済み次第、次の話に入ります。


 修正するにつきまして、誰々視点とか、読みやすくしています。

◇紅月渚 視点


 保健室のベットの上で上体だけ起こし、窓の外の夕日を眺めている。

 茜色に染まる空、長く伸びた影、赤く染まった街並みに溶けていく数々の思い。

 レイアに敗北したこと、翼がわたくしの為に怒っていたこと、そして彼女達が今、戦っているであろうこと。

(どうして、翼はあんなに怒っていたのでしょう・・・・・・?)

 そんなことを考えていると、保健室のドアを二回ノックしてからフレアが入ってきた。

「渚、もう大丈夫?」

「ええ、もう大丈夫です。心配をお掛けしましたね」 

 フレアはわたくしが寝ているベットに近づいて来る。

「聞いてよ~、渚~」

「どうしました?」

「レシティアが翼を怒らせて、今、喧嘩中だよぉ~」

「え・・・・・・?」

「なんか、レシティアのことだからわざと怒らせたっぽいんだよね~」

「ど、どういうことですか・・・・・・?」 

(翼はレイアに対して怒っていたのに、レシティアと戦っているなんて・・・・・・)

「でも、心配ないよ」

「どうしてそう思うのですか?」

「レシティアにはレシティアの考えがあるんだよ」

「そう、でしょうか・・・・・・?」

「うん、だから大丈夫っ! きっと、喧嘩の後はみんな仲良くなってるよ」

「そうですね、わたくしもそう思います」

 フレアが満面の笑みでそう言ったので、わたくしも穏やかに微笑で返す。 

(フレアがレシティアを信じているように、わたくしも翼を信じていますから)


 わたくしは夕日に沈みゆく空に彼女達が無事に仲直りして戻ってくることを願った。



◆天希翼 視点


 崩れゆく校舎の上でレシティアの姿を探す。

「こそこそ隠れてないで出てきやがれっ!」

 右腕を仰ぐように水平に振り、辺りに旋風を発生させ、立ち込める砂埃を振り払う。

 そこには、無数の青い蝶が月明かりに照らされながら舞っていた。

(青い蝶・・・・・・? これもアイツの『魔術』か何かか?)

 舞っていた無数の青い蝶は集まり青い光となり収束してレシティアの姿となった。

「まったく・・・・・・、乱暴な子猫ちゃんね~」

「また、子猫呼ばわりしやがって・・・・・・」

 レシティアに肉薄しようと地を蹴ろうとする。しかし、目前に広がる光景に驚愕し立ち止まる。

「なっ――!?」

 屋上に次々と出現する青い蝶、その全てがレシティアの姿となり、十数人のレシティアに囲まれていた。

「『幻影』か・・・・・・?」

「「「さあ、どうかしら? 全部、本物かもしれないわよ?」」」

 一斉に十数人のレシティアの声が響く、妖艶でありながら嘲笑うように笑みを浮かべる。

「上等だ! 全員ぶっ飛ばす!」

 再び臨戦態勢を敷き構える。そこに、四人のレシティアが『氷の剣』を出現させて迫る。

 四方から同時に振り下ろされる剣、その瞬間に体を回転させながら『風の爪』より刃物のように鋭いかまいたちを起こし、剣を振り下ろされる前に四人のレシティアを切り裂く。

「――風刃爪」

 切り裂かれたレシティア達は蝶の姿となり消えた。

「やっぱり『幻影』か――」

「「「まだ、終わってないわよ!」」」

 今度は五人のレシティアから氷塊や水弾などの『初級魔術』が一斉に放たれる。

「チッ・・・・・・」

 地を蹴り真上に跳躍して、なんとか回避するが、それを待っていたように三人のレシティアが空中で剣を構えていた。

「しつこいっ! エアロショット!」

 風を塊を発生させ、三方向から迫るレシティアに飛ばす。直撃したレシティア達はやはり蝶となって消える。

 校舎に着地し、レシティア達から距離をとりながら思考を巡らせる。

 レシティアの『幻影』は動きが単純だ、剣を振る、『初級魔術』を使用するなどはできるが、回避や防御などをしようとしない――いや、できないのかもしれない。

 レシティア本体が全ての『幻影』を制御しているなら、複数の『幻影』に複雑な動きをさせるのは神経を使う。 

 それなら、新しい『幻影』を作り出す方が『魔力』の消費は多いが安定している。

(ということは、複雑な動きをするのが本体だな・・・・・・)

 辺りを見渡す、五人となったレシティアの少し離れた所に青い『魔法陣』を輝かせて詠唱してるレシティアの姿を捉えた。

(見つけた、レシティアの本体・・・・・・)

 地を蹴り、レシティアの本体に一気に接近する。当然、五人のレシティアの『幻影』に行く手を阻まれる。

「偽物に用はねぇ!」

 行く手を阻む『幻影』を『風の爪』で文字通り道を切り開きながら進む。

 そして、レシティアの本体が目と鼻の先というところでレシティアの詠唱が終了する。

「しまっ――」

「青藍の檻に閉じ込めよ――プリズム・ブライド」

 周囲が鮮やかな藍色の光に包まれる、その光の中で俺の意識は遠のいていく・・・・・・。


 気がつくと元の世界に戻っており、沈みゆく夕日が照らす屋上で横になっていた。

 屋上で横になっているのに頭に柔らかい枕を敷いているような感覚に違和感を覚える。

「あら、気がついたみたいね?」 

「翼、大丈夫?」

 頭上にレシティアの顔があり、その隣に『霊体』のレイアが俺を見つめていた。

 どうやら、俺はレシティアに膝枕で寝ていたようだった・・・・・・。

 反射的に飛び上がり、レシティアから離れる。

「お前、何やってんだよ!?」

 少し声を荒げてしまった。

「何って? 膝枕じゃない?」

「そんなもん見ればわかる! 俺が寝てる時に何をやっただよ・・・・・・?」

 レシティアのことだ、俺が寝てる間に何をされていたかわからない。

「ええ、貴女のほっそりとした体と着痩せした胸を撫でるように・・・・・・」

「安心して、レシティアは貴女に『治癒術』を使用してから、膝で寝かせていただけよ・・・・・・」

「ちょっと、レイア~、本当のこと言わないでよ~」

 レイアの言葉に胸を撫で下ろす。それと同時に自分が敗北したことを思い出す。

「そうか、俺は負けたのか・・・・・・」

 自分はレシティアに負けた、その事実を実感して悔しい気持ちになる。

「まあ、経験の差だから仕方ないんじゃない?」

「上から目線で腹が立つな・・・・・・」 

 レシティアの反応に俺は率直な感想を述べる。それを見てレイアが苦笑する。

「そうね、少し腹が立つかもしれないわね・・・・・・」

 そこで、一旦区切ってからレイアは自分の紅い瞳を指差す。

「翼、この眼を見てどう思う・・・・・・?」

「どうって・・・・・・、ただの紅い眼だろ・・・・・・?」

 レイアの眼は渚と同じ紅い眼にしか見えない。

「この瞳は『心眼』と言って、『魔力』を眼で認識することができて、『魔力』の起伏から人の感情の色が見えたり、目を合わせると思考が読めるの・・・・・・。私は左目、レシティアは右目が『心眼』になっているわ・・・・・・」

「つまり、俺の考えは筒抜けだった、ってわけか・・・・・・」

「そう、貴女が渚のことを好きなのはお見通しよっ!」

「ああ、そうだな――って」

 そこで初めて自分が恥ずかしさの余り赤面してることに気づく。

「あら、可愛い」

「ふざけるニャー!」

 しまった、語尾に猫の鳴き声らしきものが付いていて、それを聞いた二人が唖然とする。

「『ニャ』って・・・・・・」

「きっと、嚙んだだけよ・・・・・・。そっと、しておきましょう・・・・・・」

「ああ、そうだよ! 俺は戦闘とか感情的になると『獣人化』するんだよ・・・・・・」

「それと、語尾に『ニャ』が付くのは何の慣例性が・・・・・・」

「もう、うるさいニャー!」

 レシティアがしつこく追及して焦り、また感情的になる。

(だめだ、これ以上口を開いても墓穴を掘るだけだ・・・・・・)

 しばらくしゃがんで黙り込んでいると、レイアが咳払いをしてから口を開く。

「と、とにかく、貴女が渚のことを大切に想っているのは秘密にするわ・・・・・・」

「・・・・・・かよ」

「え・・・・・・?」

「俺みたいな女らしくない女が渚のこと好きでおかしいかよ・・・・・・?」

(そうだよな、俺みたいながさつな女が渚みたいな上品なお嬢様が好きだなんて笑うよな・・・・・・)

「可笑しくなんてないわっ!」 

 そこで意外にもレシティアが勢いよく俺の両手を握ってきた。

「貴女が渚のことをそれだけ大切に思ってるんでしょ? それを笑うような人は大切な人がいない寂しい人よっ!」

「相変わらず、レシティアは仲人さんね・・・・・・」

「ええ、そうよ、美女と美女は結ばれる運命にあるのよっ! レイアとフレアも例外じゃないから覚悟しなさいっ!」

「ふふ、そうだといいわね・・・・・・」

 そんな二人を見ていて思う。俺が思ってたよりレイアとレシティアは悪い奴じゃないのだと。

(少し、かなり、変わってるけどな・・・・・・)

「翼、失礼なこと考えてるでしょ?」

「さあ、どうだろうな」

 レシティアの指摘に、俺は少し笑って答える。


 夕日が沈みゆく空を見て思う、今ならどこまでも翼を広げて飛んでいけそうなぐらい気分だ、と。

 

  

 

 次の章は、フレアがやらかします。


 それと、違う話も投稿できたらしてみようと思います、百合なのは言うまでもありませんが。

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