エニシングプレイヤー
超能力。
サイコキネシスだとかテレポートだとかテレパシーだとか色々あるだろう。それだけの能力だったら「凄い」・「ありえない」で終わったんだろうが、俺の場合は別だった。
俺の名前は「宮田 命」。
パッと見た感じ、どこにでもいる16歳の高校生だ。黒髪のボサボサ頭。中肉中背で性格が少し捻くれてる……とまぁ自己分析はこんなところだろう。
先天的なモノだが、俺の身体には「ある能力」が備わっていた。
口で説明するのは難しいものがあるので、追々説明していこうと思う。
俺の一日はスマートフォンのアラームによって始まる。
勿論能力を使えばこんなアラームさえ必要がないのだが、出来るだけ人間らしい生活をしなければ自分が人間だという事を忘れてしまいそうな気持ちになるのだ。
部屋は八畳の普通の部屋。ベッドがあり、勉強机があり、昨夜脱いだ靴下が部屋の端に置いてある。正確には脱ぎ捨てたんだが、こういった怠惰な生活をする事で自分を保ってるのかもしれない。
俺の能力の簡単な紹介をしよう。昨夜脱ぎ捨てた黒い靴下。俺が念じる……というより強く願うだけで靴下は1階の洗面所付近の洗濯カゴ内にテレポートする。
対象をテレポートさせる能力だけじゃない。
靴下を脱ぎ捨ててるという事は、昨夜俺は風呂に入ってないのだ。
という事は身体が汚い。無論一日でそこまで汚くなるとは思えないが、一般的にはかなり不潔というジャンルにカテゴライズされるだろう。
俺が強く願う。それだけで俺は身体を洗浄した状態になる。
そのまま寝てしわくちゃになった学ランも強く願うだけで、クリーニングに出した後の様に、綺麗に折り目まで付く。
これだけで全て説明出来たとは思えないが、簡単な話、俺は強く願うだけで何でも出来る。
そう「何でも出来る能力」……それが俺の能力だ。
文字通り何でも出来る。
不老不死だろうが、美男子になる事だろうが、時間移動だって出来るし、世界を壊す事だって出来てしまう。
そして強く願うだけでそれが出来る。勿論、この能力の存在を知ってる者は俺以外にはいない。
小さい頃親にバレた事もあるが、親のその記憶だけを消去した事もある。
10歳の頃、この国にバレた。おそらく目の前で事故に遭った人を助けた事がきっかけだろう。すぐにこの世界の俺の能力に関する記憶、記録を消し、今後はバレない様になると強く願った。こういった永続的な効果の能力も勿論発動可能だ。
そしてこの能力を消す事も可能だろう。
唯一のデメリットは、強く願わねばならない事だ。これに関しても解除可能だが、それはしていない。軽く頭によぎっただけだその能力が発動してしまうからな。
用心に用心を重ねる事は無駄ではない。
平和に暮らしたい俺は、中学生の頃に「今後、事件や事故や天災に巻き込まれないように」と強く願った。
そう、俺がこの能力を発動している限り、異世界に行ったり転生したり強力な敵が現れたりしないのだ。
物語にもならない能力だ。
俺は構わないがな。
さて、今日も平和な一日が始まる。
「僕の考えた最強能力」を突き詰めたら物語にならなくなってしまいました。
連載するとしたら……きっと能力飛散からの回収物語になるのだろうか?
……何で書いちゃったんだろう。