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不穏な空気

「なんなんだあの男は・・・」


 僕は怒りながら帰途へと歩いていた。

 あの後僕は何度も綾さんに接触を試みたが綾さんは僕に目すら合わせてくれず、木村にずっとくっついていた。僕が何を言っても綾さんは思い出してくれないし、知りたがろうともしない。綾さんはずっとあいつのことをずっと見ていて、二人きりの世界を作っていた。こんな腹立たしいことはない。

 今日は記念すべき僕と綾さんの感動の再会のはずだったのに・・・。

 それなのに、なんだ。綾さんは僕のこと覚えてないわ、しかも既に他の男がいるわ、チャックも開いてるわ、散々だ。

 

「はあ・・・。綾さんなんで僕のこと覚えていないんだろう・・・」


 交差点をわたり、路地裏へと行き、僕は土管の上に腰を下ろして空を見つめた。僕の悩んでいる気持ちとは正反対に、空は気持ちいいぐらいに晴れている。まるで僕の悩みなんてちっぽけなんだよバーカ!、と言ってるかのように。

 そう思ったら僕はとても腹が立った。自分自身に対してじゃない。彼女、綾さんに対してだ。

 確かに、今まで僕が綾さんのことを気にかけてやれなかったのは申し訳ない。だが、あの日約束したはずだ。必ず、僕が迎えに行くと。なのにその約束をあろうことか忘れて他の男と遊んでいるだなんて・・・。

 ああ、そうか。奪えばいいんだ。木村から、綾さんを。

 でもどうやって?確かに今の僕には地位も名誉もある。だから木村と綾さんを離そうと思えば容易だろう。しかし、それでは僕が許せない。

 僕を弄んだバツだ。綾さんには少し痛い目にあってもらわないと・・・。

 ふふ・・・


「おい、てめえ」

「え?」


 そう言って振り返ると、三人の男が僕を見ていた。全員金髪でピアスをしている。制服は着ているものの着方がだらしない。いわゆる不良というやつだ。


「ここは俺の陣地だぞ。何勝手にとってやがんだコラァ!」


 そういうが否や、男が殴りかかってくる。

 やれやれ、これだから低俗な輩は・・・。

 僕は男のパンチを軽々と避けると腕を掴み、そのまま背負い投げをする。

 男は背中から叩きつけられ、ぐえっっ!とカエルが潰されたような呻き声をあげた。


「兄貴!。てめえ、兄貴を良くも!」

「まて、お前じゃ多分こいつには勝てない」

「ほう。ちゃんと相手の力量をわきまえることができるんだね。不良の分際で」


 うめき声を上げていた男はよろよろと立ち上がると、俺を睨みつける。


「こんのクソ野郎・・。いててて!クソ、あいつに殴られたとこがまだ痛む」


 誰かに殴られたのだろうか、男はお腹を抑えて痛みに耐えているようだった。


「兄貴、木村とか言う奴からもらったパンチがまだ残ってるのに無茶するから・・」

「ふん、んなもん大したことじゃねえよ。あの少女を手に入れるまではな」

「ちょっと待て、今木村と言ったか?」

「あ?そうだよ!木村裕二とかいう奴に一発もらったんだよ。銀色の髪の少女をナンパしようとしたらよそいつが現れて逃げやがった。俺は絶対あの時の恨みを忘れねえぜ・・」


 どうやらこいつらは綾さんをナンパしようとして木村に撃退されたらしい。綾さんをナンパしようとしたのは許せないことだが・・

 ん、待てよ?これなら・・・


「おい、お前その銀髪の少女が欲しいのか?」

「ああ。あんな可愛い子俺は見たことがねえ。あれは一生ものの女だ」

「兄貴、独り占めはずるいっすよ。俺だって気になるんですから」

「・・・」

 

 こいつら3人は本気で綾さんに惚れているらしい。なら使えそうだな・・


「お前たち、僕と取引しないか?呑んでくれるなら銀髪の少女を君たちにあげることを約束しよう」

 

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・ 

 

 

 放課後、今日はバイトの日なのでいつものようにレストラン”ファミマ”へ向かう。しかし、今日はいつもとはひとつだけ違うことがある。

 それは・・・


「祐くん、祐くん。えへへ」


 綾も一緒にバイトについていくことになったからだ。自転車で行くのは味気ないということで、俺は今歩きでバイト先へ向かっている・・・のだが、

さっきから綾はずっと俺に引っ付いて離れなかった。


「綾・・あの、道行く人が皆こっち見てるんだけど・・」

「いいじゃないですか。見たい人には見せておきましょう。あと、こうすれば私たちが恋人だっていうことが認識されて祐くんに余計な虫が付かなくなって一石二鳥です」

 

 それでも恥ずかしいんだけど・・・。でも綾はずっとニコニコしていて嬉しそうだった。そんな綾を離すことは俺にはできなかった。


 バイト先に着くと、俺はさっそく着替えに行く。

 綾にどうするのかと聞くと、俺の仕事をしているところが見たいらしい。

この前は逆ナン騒動でそれどころじゃなかったからな。あの後店長に怒られたし。まああの時だけは店長らしさが出ていたと思う。意外と店長もお客様のこと考えているんだと思った。まあ、それなら尚更パソコンばっかいじってないで欲しいんだけどな。

 着替えが終わったあと、俺は店長のいる部屋へと向かう。

 店長は・・・まだ寝ていた。


「店長!もう時間ですよ!何寝てるんですか!!」

「うぁ・・?まだ開店前じゃないかー・・・」

「何言ってるんですか!もう開店時間始まってますから!どれだけ時差ボケしてんですか!」

「時差ボケ?・・俺はまだじいさんでもないしボケてもないぞ・・・」


 だめだ。完璧に夢うつつだこの人。

 俺は店長を起こすのを諦めて部屋を出ようとすると、パソコンの電源が入りっぱなしだった。


「店長、またゲームでも・・ん?」


 てっきりまたオンラインゲームで寝落ちでもしたのかと思ったがその画面は全然違うものだった。


「これ、食べ物の管理リストと、総売上の表示か・・?」


 店長はちゃんと仕事していた。ゲームとかなんとか言いつつもちゃんと仕事していたのだった。

 いつも仕事を俺達に任せてばかりの店長だったが、ちゃんと頑張っていたのか・・・。でもそれと仕事中にゲームをすることは話は別だ。

 ちゃんと仕事できるなら最初からしましょうよ・・。




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