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変な転校生

翌日、完璧に復活した俺は清々しい気持ちで綾と学校へ向かう。

教室に入ると、さっそく巧が駆け寄ってきた。


「裕二!それに綾ちゃんも!なんで昨日休んでたんだよ!」

「俺は風邪ひいたんだよ」

「祐くんが心配だから看病してました」


 そう言うと巧は、なんだ風邪かと言って興味をなくしたようだった。


「じゃあ今日転校生が来るっていう話聞いてないよな」

「え?そうなの?」


 俺と綾は顔を見合わせる。

 俺の学校はそれなりにレベルの高い高校だが、転校生が来るということは


全く聞いたことない。それだけ珍しかった。

 でもこんな時期に転校生なんて珍しいな。まだ2年の入学式が始まって1ヶ

月ちょっとだぞ。

 そうこうしているうちにチャイムが鳴り、教師が入ってくる。教師はいつ

も通り点呼を取ったあと、あることを告げる。


「皆、いや、木村と皆本以外は知ってると思うが今日は転校生が来るぞ」


 その言葉にクラスメイトがざわめき立つ。俺は特に気にならなかったが、

綾の方を見ても綾も特に気にならないようで平然としていた。


「転校生は・・・・男子だ!」


 女子陣がほんと!?とかやったー!!とか言って喜んでいる。逆に男子は


「なんだ野郎かよ・・・・」と言って落胆していた。


「というわけで桜塚くん。入ってきなさい」


 そう言われて一人の男子生徒が教室に入ってくる。中性的な・・・・いや、女

顔に近い顔立ちの美青年だった。

 イケメンの登場に女子陣は色めきだった。担任が沈めると、桜塚は自己紹

介をはじめる。


「桜塚 葉月と言います。1年間宜しくお願いします」

「桜塚、お前の席は・・・・ん?桜塚?」


 桜塚は担任の声を無視して歩き始める。そして、綾の前で止まった。


「綾さん。やっと見つけました僕の愛しい許嫁・・・」


 ・・・・・は?こいつ今なんて言った。

 突然の告白にクラスメイトどころか担任すら面食らっていた。いや、一番

驚いてるのは俺だよ!

 しかし綾は、そんな桜塚を冷めた目で見ていた。


「えっと・・・誰ですか?」

「忘れたのかい?昔言ったじゃないか!僕がふさわしくなったらその時は君を

花嫁として迎えに行くとね」


 桜塚は突然意味のわからないことを言い始めた。クラスメイトらが騒ぐ。

さすが皆本さんだ・・・とか、あんな告白されたいね。とかこんな公衆の面前

で告白とか頭おかしいんじゃないの?とか様々な反応だった。

 呆気にとられていた先生だが、我を戻すと桜塚の方に向かう


「知り合いに会って嬉しいのは結構だが今からは授業だ。そういうのは休み

時間にしろ」


 担任にそう言われて、桜塚は慌てて我に返ると

  

「・・・・そうですね。すいませんでした」


 と言って桜塚はおずおずと席に戻っていった。 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・




 休み時間、さっそく桜塚が綾の方にやってきた。


「綾さん。僕はもう準備が出来ている。早く挙式を上げよう」

「あの・・・どなたか知らないですけど私付き合っている人がいますので。そ

れに貴方はまだ結婚できる年齢に達していませんけど?馬鹿なんですか?」

「な!綾さんが付き合っているだって!?どどどどういうことなんだ!」


 桜塚が携帯を取り出し誰かに連絡する。2、3回相槌をうったあと桜塚は携

帯をポケットしまう。


「綾さん。僕というものがありながらどうして他の男に・・・。あ、そうか僕

が今までいなかったから寂しくてそれを紛らわせようとしたんだね!でもも

う大丈夫。辛い試練を乗り越えて僕は君のもとへやって来たよ!」

 

 桜塚がそう言って綾の手を握ろうとする。が、綾はそれをひょいと避ける

と俺のもとへやって来る。


「祐くん。この人気持ち悪い・・・」


 綾が俺の背中に隠れる。


「き、気持ち悪い・・。・・・ほう、君が綾さんと付き合っている木村裕二だね

?」

「ああ、そうだ。お前が変なこというおかげで綾が怖がってるじゃないか。

許嫁だかなんだか知らないけど俺の彼女にちょっかい出すんじゃない」


 俺は綾を抱き寄せる。するとそれを見た桜塚が怒った。


「な!君は僕の綾さんに何をしているんだ!今すぐ離れろ!」

「私は貴方なんて知らないし、貴方のものでもありません。あと次私のこと

綾って呼んだら怒りますよ?」


 綾が笑顔で桜塚を見る。それに気圧されたのか、桜塚はたじろいだ。


「とにかく!その人は僕のものだ。絶対に君から取り戻してみせるからな!!」

「あ、ちょっと待てよ!」

「僕に話しかけるんじゃない!」


 俺の制止も聞かずに桜塚は行ってしまった。

 あーあ、あいつチャック全開だったのに。ま、いっか。


「綾、あいつのこと本当に知らないのか?」

「はい。あんな人見たこともありません。でもお父様なら知ってるかも・・・」

 

 ああ、許嫁とか言ってたからな。綾はかなりのお嬢様なのでそういう話があってもおかしくない。それでも、不愉快だった。

 俺が険しい表情をしているのを見ていたのか、綾が教室にも関わるキュッ

と抱きついてくる。


「祐くん、心配しないで。私は絶対祐くんから離れませんから。祐くん以外

の男の人なんて興味も湧きませんから。もし許嫁だったとしてもそんなもの

今すぐにでも解消してきます」

「よー大変なことになったな」


 綾がしゃべっている最中にもかかわらず巧がやって来る。


「許嫁だかなんだか知らないけど、あのいけ好かない野郎に一泡吹かせてや

ろうぜ」

「いや、別に俺はあいつを懲らしめたいわけじゃない。ただ、綾に言い寄っ

てくるのはすごく不愉快だ・・」


 巧が俺に耳打ちしてくる。


「あいつ、何か裏があるぞ。さっきさ、やたらと自分の胸触ってたんだよ」

「胸?」


 自分の胸なんか触って楽しいのだろうか。俺は首をかしげた。


「ちょっと祐くんに何吹き込もうとしてるんですかこの産廃!」

「だから綾ちゃんその呼び名やめ、ぐぉ!?」


 綾が巧のスネを蹴った。巧は痛みにその場にのたうち回り、そのまま動か

なくなった。

 俺はそんな巧に祈りを捧げる。すると、男子生徒の一人が巧の顔に白い布

をかぶせ、同じく祈った。


「って、俺を勝手に殺すなぁ!!」

 

 あ、復活した。巧はヒョイっと立ち上がり、ホコリを払う。

 

「とにかく、俺が言いたかったのはそれだけだ。気をつけろよ裕二」

「ああ。忠告痛み入るぜ」


 巧は足を引きずりながら自分の席へと戻っていった。

 

「祐くん?」

「いや、なんでもない。綾、今日のお昼は図書館で食べようか」

「え?屋上で食べないんですか?」


 俺は綾に耳打ちしてあることを伝える。すると綾は納得したようだ。


「わかりました」

「ありがとうな」


 俺は綾の頭を撫でる。綾はくすぐったそうにしていたが、その表情はとて

も嬉しそうだった。


「あぅ・・祐くんに撫でられるの気持ちいい・・もっと・・」 

 

 望み通り、頭を撫で続ける。クラスの連中の視線がこっちに集中している

のがわかるが綾に影響されてか気にならなくなった。。 

 やっぱ綾可愛いいな~。

 こんな可愛い彼女をあんな奴に渡してたまるかよ。

 俺は、決意を旨に次の授業に望むのだった。 

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[一言] 図書室って飲食禁止じゃないの…
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