やっぱりあいつは下衆男
ホールに戻るとまだ客はそんなに多くはなかった。
これなら少し綾と話せそうだな。
仕事中に綾とずっと喋るのはまずいが、もうすぐ激戦区に入るのでそこに入ると全く綾に手をかけることができない。
なので今のうちに話しておこうと思った。
「綾、暇なら何か頼むか?俺がこっそり持ってきてやるけど」
「いえ、大丈夫です。私は祐くんを見てるだけで幸せですから」
俺なんか見てても面白くないと思うけどなぁ・・。まあそれで綾が幸せならいいか。
「あれ?そういえば理恵がいない・・・」
理恵は俺とバイトのシフトが同じはずなので、この時間帯ならいるはずだが、今日はいなかった。他のバイト生に聞くが今日は見ていないという。
どうしたんだあいつ・・・?
俺は少し心配になりながら、バイトを続けるのであった・・・。
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次の日、教室で綾と巧と喋っていると、桜塚がやってきた。
「綾さん。放課後少しだけ僕に時間をくれないかい?」
桜塚は真剣な表情で綾を見つめた。
俺は綾の前に立つ。
「なんでお前に時間を割かないといけないんだ。俺の彼女にちょっかいかける気なら・・」
「祐くん」
綾が俺の声を静止した。
「いいでしょう、少しだけなら。私達放課後デートですので」
「な!綾、こいつの言うことなんか聞かなくていいんだぞ?」
「そうかい。それはとても嬉しい。じゃあ、放課後ちょっと僕についてきてくれ。あ、木村は連れてきたらダメだよ」
綾一人で行かせるだと?ふざけるんじゃない。何かの罠なのが見え見えじゃないか!
桜塚は少しほくそ笑みながら、自分の席へと戻っていった・・・。
「裕二」
「ああ、わかってる。
綾、一人で行く必要はないぞ。俺もついていくからな」
「いえ、祐くん。大丈夫です。私、一人で行ってきます」
「いや、だけど!」
綾は俺の手を包み込むように握った。
「すぐ終わらせてきますから。祐くんは待ち合わせ場所で待ってください。用が済めば、すぐ戻ってきますから・・・」
納得がいかなかったが、綾には何か考えがあるのだろう。俺は綾を
信じることにした。
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放課後、桜塚は綾を連れて行ってしまった。俺は何かされるんじゃないかと心配だったが、綾を信じるしかない。
巧が俺の方にやって来る。
「裕二、綾ちゃんを一人で行かせてよかったのか?」
「行かせたくはないに決まってるだろ。さっき何度も綾に言ったさ。でもあいつは一人で大丈夫だからって・・・」
「別に綾ちゃんと一緒に行かなくても、気づかれないように尾行したらいいんじゃね?」
そうか。その手があったな。なぜ今までそれに気づかなかったのか。
それだけ心が焦っていたということだろうか。
俺は巧にお礼を言うと、綾を追いかけに行った・・・。
桜塚に付いていったこと約30分、人通りのほとんどない路地裏でこの人は止まりました。
「それで、話ってなんなんですか?早くしてくださいね。祐くんを心配させるわけにはいかないので」
「まあまあ、落ち着いてくれ。呼び出した理由はだいたいわかってると思うんだけど、綾さん。本当に僕のことを覚えていないのかい?」
「知りませんし知りたくもありません。あと、もしあなたが許嫁だというのならそれも今ここで解消してもらいますね」
私がそう言うと、この人はあからさまに落胆しました。
「そうかい・・・それは残念だ・・・。もしここで僕の花嫁として迎えてくれるなら歓迎したんだけど・・・どうやら、君はもう僕の知ってる綾さんじゃない」
勝手に期待しといて勝手に落胆するなんて本当に不愉快だ。私が、この人と昔会った?昔結婚の約束をした?はっ、私がこんな気持ち悪い男にそんなこと言うはずがありません。誰かと勘違いしているんでしょうか。
今まで落胆していた桜塚が、突然笑い始めた。
「僕はせっかく君に会うために小さい頃から辛い試練に耐えて、何度もくじけそうになったけど君という存在がいたから、頑張れた!そして、僕は君との再開の日を楽しみにしていたんだ!!!
それなのに君は僕のことを覚えていないどころか、彼氏まで作ってる。
ハハハ!!ハッハッハッハ!!!もはや呆れるどころか笑えるよ!
僕はこんな人のために今まで頑張ってこれていたのかってね」
「・・・それで、話はそれだけですか?じゃあ私はこれで」
そう言って去ろうとするのを桜塚が私の肩をつかむ。
「・・!触らないでください!汚らわしい!」
私は桜塚の手を払い除けます。すると桜塚の表情が怒りにゆがむ。
「そうか・・そこまでして僕を拒絶するのか・・なら、もういい。
綾さんなんて要らない・・。
おい」
そう言うと隅の方から三人の男が姿を現した。
どこかで見覚えがあると思ったら、この前ナンパしてきたクズ男達だった。
「よう、お嬢ちゃん。また会ったな。相変わらず可愛いね!今すぐにでも俺のものにしてやりてえ」
「兄貴、独り占めはダメだって言ったじゃないですか。俺にも分けてくださいよ」
「下は俺のものだ。口はお前が使ってもいいぞ」
「ええ~?俺にも下を使わせてくださいよ~」
男達は最低な会話を行っていた。
やっぱり。そういう事だったんですね。
結局男は皆同じ・・・クズしかいません。ただひとり、祐くんを除いて。
「ごめんね綾さん。僕も本当はこうしたくなかったんだ・・・。でもね、
君が僕のものにならないから悪いんだよ!?
お前ら、後は好きにしろ。これで取引は成立だ」
「りょーかい。また木村とか言う奴が来たら面倒だからな。すぐに俺の虜にしてやらァ!!!」
そう言うと男達は一斉に私の方へ向かってくる。
三人でかかれば私を倒せると思ったのでしょうが・・こんなクズに負けるほど私は弱くありません。
隙のありまくりな三人の攻撃を軽く躱し、私は一人ずつ確実に溝に深く突きを入れました。
男達はまさか私がこんなにやると思ってなかったのでしょうか。立てずに痛みにうめき声を上げています。
「祐くんとのデートの邪魔をした罪は重いです・・もっと痛めてあげます」
私は三人に容赦なく蹴りを入れる。何度も、何度も。鼻血を出そうが、歯が折れようが、顔が変形しようが、アザだらけになろうが、蹴るのをやめなかった。
それを見ていた桜塚が青ざめた。
「あ、綾さん・・なんで笑って・・。ひっ!こっちを見るな!!」
桜塚が走って逃げようとするのを私は一瞬で追いつき、背負い投げをする。桜塚は背中から思い切り叩きつけられ、すぐには立てなくなった。
「どうして逃げようとするんですか?私の話はまだ終わってませんよ・・?」
「うわああ!や、やめてくれ!!僕の顔に傷をつけるんじゃない!!」
「男共を使って私を陥落させようとしたのでしょうが、無駄に終わりましたね。これからどうするんですか?」
桜塚は完全に腰を抜かしていた。男達は既に虫の息だ。三人ともうつ伏せに倒れて気絶している。
私はポケットからナイフを取り出すと、自分の制服をビリビリ、と破く。
制服の原型がなくなるほどに。
「!?君は一体何をして・・・!」
その問いに、私は制服を破きながら答える
「あなた達は私と、祐くんの時間を邪魔しました。私達の日々を邪魔するものは・・、なんであっても排除します。さようなら」
「うわ、やめ、やめてくれ!やめろ、やめろおおおおおおぉぉぉ!!」




