表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

再会

僕は高校3年生になった。

相変わらず野球をする毎日が続いている。


小学校・中学校と違うところは、美奈がマネージャーをやっているところだ。



美奈とは高校1年生の入学式で後ろから声をかけられた。


「けんちゃん!」

びっくりして後ろを振り向くと、そこに美奈がいる。

久しぶりに見る美奈は、制服をきててなんか可愛かった。


「美奈じゃん! えっ? なんでここに?」

「なんでって、私もここの高校受けたからに決まってるじゃん!」

「えっ? ここの? うちの両親何も言わなかったなぁ。もしかして黙っていやがったな!」

「私も知らなかったよ! けんちゃんが目の前にいるんだもん。絶対意図的に黙ってたんだね! おどかそうとして!」

「だって知らないわけないじゃん! よく両親だけで飲みに出かけているのに。」

僕と美奈は両親にちょっとむかついたけどすぐに忘れて、久しぶりに会ったことが逆に嬉しくなってきた。


「けんちゃんは野球部に入るんでしょ?」

「あたぼーよ! 野球しかやることない!」

当然のように僕は言う。


「やっぱりね! 私はどうしようかなぁ? けんちゃんいるなら野球部のマネージャーやろうかな?」

迷いながらの笑顔で言うその一言がなんか可愛く見えた。産まれたときから近くにいたのに、こんな感情になったのは初めてだ。

なんか嬉しくなって、

「いいじゃん! 美奈が近くで応援してくれたら甲子園行けるかもな!」

「ほんとにぃ? 行けなかったら私のせいにしたいんでしょ!」

「なんでやねん! そんなこと言うわけないやん! あほか!」

ちょっと大阪弁まじりで言うてみた。


「なんで大阪弁やねん!」

クスって笑いながら

「でもほんとにやってみようかな! けんちゃんの応援も近くで出来るし!」

「おっ! いいじゃん! 美奈が近くで応援してくれたら俺もへま出来ないからがんばれる」

「じゃあ決まりだね! よろしく!」

「おお、よろしく!」


野球しか頭になかったが、美奈が同じ学校、そして野球部のマネージャーになるってことで、高校生活がいきなり楽しくなった気がした。それは、俺だけじゃなかったと思う。

俺と美奈は違うクラスだが、毎日こうして会うってことは今までになかったことだから。


「ねぇねぇ、けんちゃん」

「ん?」

「今日一緒に帰ろ! 久しぶりに会ったんだし、うちに来てよ! 両親が黙っていたんだし、怒んなきゃ!」

「そうだな! じゃあ終わったら校門で?」

「うん! じゃあまたあとでね!」

そう言って、美奈は友達のところに走って行った。


僕も、友達が先に歩いているのを発見して駆け足で近付いた。


中学からの友達で名前は克己かつき。同じく野球バカのこいつは僕の女房役。つまりは捕手キャッチャー

「健一、誰としゃべってた? 可愛いじゃん!」

「ああ、両親が高校からの友達で幼馴染なんだ」

「へぇ~、羨ましいねぇ。仲良くなりたいもんだよ! 俺も」

なんか羨ましそうに言うもんだから、とっさに

「野球部のマネージャーやるから仲良くなれるさ!」

と肩をポンポンと叩きながら言った。

美奈のこと、可愛いじゃん!って言われたもんだから、鼻が高くなった気分だ。


「克己も野球部に入るんだろ? また3年間よろしくな!」

「もちろんさ! よろしくな!」

クラスも同じ克己は、いかにもキャッチャーだろっていう体つきで、人柄も良く親友だ。

教室に入ると、結構活気ついていて楽しい高校生活が本当に送れそうな気がした。


担任の先生が教室に入ってきた。若い女の先生で、推定年齢28歳。自己紹介とあいさつ、そして

「これから高校3年間、進学、就職に向けて頑張っていくように! 今から大事だからね!」

と淡々と話を進めていく。


僕は、席が近い同級生と仲良くなり、自己紹介とか部活の話とかをヒソヒソと話していた。

すると、左隣の同級生、信哉が野球をやっていて、中学も結構有名なF校で、強豪チームのメンバーの1人ということが分かった。

僕の中学も強かったが、ここの中学には1度も勝ったことがない。


「信哉のこと覚えていないけど、マジで!?」

「なんだよ? 俺はお前のこと覚えているのにひどいな! 俺に打たれてんだぜ!」

「マジかよ! しかも打たれてんのかよ! せめて抑えられたと言ってほしかったよ」

信哉はニヤッと笑いながら


「でも、健一はいやなピッチャーだったぜ! 球は中学生のくせにやけに速かったからな」

「打たれたら意味ないじゃん」

「そうだな!」

と懐かしい思い出を話した。そして、


「お互い甲子園目指してがんばろうぜ!」

って信哉が言ってきた。

「ああ! 信哉がいれば心強い」

僕は本当にそう思った。甲子園ももしかしたら夢じゃないな、と

「健一もいい腕してんだから、がんばれば絶対いけるって思うぜ!」

信哉も甲子園にむけて、早くも闘志を燃やしていた。


担任の話も終わり、家に帰る前、克己を呼んで3人で話をした。

克己にも、信哉のことを知ってもらいたいし、仲良くなりたいからだ。


「克己、あのF校の強豪チームにいたんだって!」

「マジで! F校かよ、すげーな! 俺は克己。健一とは中学からバッテリー組んでるんだ。よろしくな!」

「ああ! 俺は信哉。ポジションはセンターだからみんなかぶらないな。よかったよ。よろしく!」

みんな、野球バカだから仲良くなるのに時間はかからなかった。


中学の時の野球話で盛り上がって、時間が過ぎるのを忘れていた。

ふと時計を見ると、みんなが帰りだしてから40分ぐらいたっていた。


「やべっ! もうこんな時間かよ!」

美奈と一緒に帰ることを思い出した。

「どうしたんだよ? まだ昼なったばかりでこれからってときに」

克己は言う。信哉も

「そうだよ。これから3人で遊ぼうぜ! 予定あんの?」

「悪い! 幼馴染と一緒に帰る約束してるんだ。久しぶりに会ったから」

「なんだよ! 朝の可愛い女の子か? 羨ましいねぇ…」

「なにー!! 彼女じゃねーよな? マジで!」

「違うよ! 両親が友達同士で小さいときから遊んだりしてたんだ」

なんか、女の子と聞くと思春期だからかやけに反応する。

「野球部のマネージャーになるって話だから、今度紹介するよ」

俺は朝の会話を思い出し、そう言った。

「キター!! 早くも可愛いマネージャー確保!」

信哉は嬉しそうにガッツポーズをした。

「健一の幼馴染だから、彼女にするのは譲るが、楽しい野球生活が送れそう!」

続けて信哉はこう言った。

「なんで俺の彼女なんだよ? どうなるかわかんねぇだろ」

「だいたいそういう幼馴染は、一緒になるのがベターだろ? マンガやドラマがそうじゃんか。なら、俺たちのどっちかが付きあってもいいのかよ」

克己がなんだかムカッてした感じで言うから


「それはやっぱり嫌だけど…」

「そらみろ! そういう運命なんだよ」

 

(なんだろう? 無理やりそういう感じに話が進んでいるけど、別に悪い気はしない。)

心の中でそう思うと、ちょっと美奈のことを意識してしまう。


「早く行きなよ。待ってんじゃねぇの?」

信哉が時計を見ながら僕に言う。


「そうだな。今の話はともかく、先に帰るよ。じゃあまた明日な」

「じゃあな」

「じゃあな」

2人に手を振って校門に急いで向かった。


(待ってるかなぁ… 怒って先に帰ったかな… )


そう思いながら校門に近付くと…、 

 

(居たっ!)


「ごめん!! ダチと話してたら遅くなった」

「遅すぎ! 話してたら遅くなったって、女子ですか?」


美奈は結構怒ってる。


「先に帰ろうかと思ったけど、なにか用事があったのかな?と思ってもう少し待とうと思っていたらこれだよ」

「ごめん… 」 

美奈の怒りは収まりそうになかった。


「一体何の話をしていたの? 理由によっては許さないよ!」

僕はどきどきしながら、隣の席にF校の強豪チームにいた信哉がいた事、克也も含めて3人で中学の時の野球話をして盛り上がった事を話した。


「もう! ほんとに野球しか頭にないんだから」


美奈は、やっぱりなって感じで若干あきれ顔で僕を見た。


「こんな可愛い子が変な人達に絡まれていたらどうするのよ!!」


まだ収まりきれないのか、再び僕に向かって言う。


「ごめんって! それに可愛い子ってどこに!?」

「!」


びっくりしたように僕にむかって叫んだ。


「私以外にこの場所に誰がいるのよ!」


美奈は僕を睨んだが、僕は少しはにかみながら、美奈がほんとに自分で言った?と少し驚いていた。


「なによ! 悪い! いいわよ、どうせ可愛くないですようだ!」


美奈は僕に向かって舌を出し、自転車にまたがった。


「嘘だよ! 美奈は可愛いし、誰からも注目を浴びちゃうから、一刻も早く来るべきだった。ごめんっ」

「ほんとにそう思ってるの?」

「あたりまえじゃん! 美奈は小さい頃から可愛かったよ! 誓います!」


美奈は目を細くして、僕に冷たい視線を送った。許してもらえないかなって思ったけど、


「最初からそういえばいいの! わかったなら早く帰ろ! お腹すいちゃった」

女は恐いって初めて思った瞬間だった。

僕も自転車に乗り、美奈の後を追った。


「今日は許してあげるけど、次は許さないからね!」

「はい。以後美奈を待たせることはありません」


美奈は少し笑ってくれた。許してくれたんだなって思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ