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祝福のエクソジェン

優がこの世界に転移してから一年


優は相変わらず、厨房に入り浸り、

庭園で寝転びながら、怠惰な生活を満喫していた。

「いやーいいね、仕事に追われないってのは。もうすぐ1年か?」


中庭にいい加減に刺した木の墓に問いかける。

「お前さんはどうだい?そっかー、まだ生まれてないかw 9号」


フワリと笑う優。その姿は、まるで春の風。


優の服装は、まさに“カワイイ”の極み

白とピンクを基調としたフリル付きワンピース

胸元には小さなリボン

スカートには花柄の刺繍が舞う

足元は白い靴下とピンクのリボン付きシューズ

頭にはぽろろが入った髪留め

白金の髪はゆるふわなウェーブパーマで決めている



そこへ現れたのは――ネズミの獣人、袁小。

「おーい優、お主そんな所で寝転ぶなぞ。服が汚れて怒られるぞ」


優は目を細めて言う。

「なんでお前がいるんだ、袁小?」


袁小は耳をぴくぴく動かしながら答える。

「うむ、あれから色々あってな。龍伯様がお詫びと称して、

ワシも秩泉に移転せよと言われてここに来たぞ」


袁小は残念そうに頭を上下させる。

「はぁ……家族と別れて単身赴任。

あれだけのことやって生きてるだけありがたいが、

選りによって秩泉とは……

とりあえず今日から、お前のお守をしろと指令があった。よろしくぞ」


優はがバリと起き上がり、叫ぶ!

「ふざけんな!男なんかに世話されたくない!」


そして――

「うぉおおおおおおお!!」


と叫びながら、庭園を駆け出していく。

袁小はため息をつきながら、


「ワシも嫌なんだが・・・・」


優が向かった先は――蒼穹殿・政務室。

そこは、静寂とは無縁の空間だった。


マリア、アイリス、霧音、イリス――

四人の人物が、端末と書類に囲まれ、

まさに阿鼻叫喚の渦中にいた。


「この予算案、いつまでかしら!?」

「今すぐにやってください!」

「ウーロンとの交流者の選定、判を押してください!」

「地方貴族からの陳情書がいくつかあります、どうしましょう!?」

「六道院宰相からの提案が……!」


端末が鳴り、紙が舞い、

ペンが走り、ため息が重なる。


その時――


「ドカンッ!!」


扉が勢いよく開かれ、

白金の髪を揺らしながら、久遠優が登場。


「マリア!袁小なんて――」


だが、目に飛び込んできたのは――

政務地獄の光景。


マリアは無言で端末を操作し続け、

アイリスは書類を束ねながら眉間に皺を寄せ、

霧音は冷静に指示を飛ばし、

イリスは頭を抱えて呻いていた。


優は、一瞬で空気を察する。


「……あっ、忙しそうですね。頑張ってください」


くるりと踵を返し、

扉を静かに閉めて――自分の部屋へ逃走。


誰も、優の登場に反応していない。


いや、気づいていたが反応する余裕がなかった。


イリスが、書類をめくりながら叫ぶ。

「今の誰!?」


霧音は、冷静に答える。

「幻覚です」


マリアは、無言で端末を操作し続ける。


蒼穹殿・久遠優の私室。

逃げ帰った優は、自室に入り慌てて扉を閉める

扉がバタンと閉まり、空気が静かに戻る。


「マリア忙しそうだな~」

優は、部屋をぐるりと見渡す。

その目には、少しだけ寂しさと、たっぷりの怠惰が滲んでいた。


ベッドに無造作に置かれていたタブレットを手に取り、

椅子に「ヨイショ」と座る。


画面を眺めながら、優は黄昏れる。


この部屋は、優にとって“逃げ場”であり、

“世界の中心”でもある。


「はぁ~、最近ダンチュバーにも飽きてきたな……なんか退屈だ~」


画面の中のゲームも、動画も、

今の優には、心を揺らさない。


その時――

扉がノックもなく開き、ネズミの獣人・袁小が登場。


「優よ、暇そうだな」


優は驚いて振り返る。

「あれ、よく俺がここに居るって分かったな?」


袁小は、自分の鼻を指さし、誇らしげに言う。

「鼻が良いからな。お前の場所ならすぐ分かるぞ」


優は眉をひそめて、一言。

「げ、ストーカーかよ」


袁小は、鼻をぴくぴくさせながら怒り出す。

「なんと失礼な!」


だが、優はすぐに話を切り替える。

「あーハイハイ。でさ、なんか面白い物持ってないの?」


袁小は一瞬考え、

ピカリと閃いた顔になる。


「そうだな……ウーロンで流行っている**龍牌りゅうぱい**なんて面白いぞ」


優の目がキラリと輝く。


「龍牌? なんかカッコいい名前!」


袁小は得意げに言う。


「よかろう。今から持ってきてやる。待っていろよ!」


そして、颯爽と部屋を出ていく。


夕暮れの蒼穹殿。

西の空が茜色に染まり、

政務室の窓から差し込む光が、書類の山を柔らかく照らしていた。


「ようやく今日の分は終わったわね……」


マリアが椅子に深く腰を下ろし、

机の端にまだ山積みになっている書類を見て、

珍しくゲンナリとした表情を浮かべた。


その顔に、アイリスがクスリと笑い、

霧音も肩の力を抜きながら微笑む。


「そういえば……あれ、用意しました?」

イリスが、少し恥ずかしそうに声を上げる。


マリアは、視線を向けるだけで答えず、

代わりにアイリスが、にこりと笑って言った。


「まぁ、何だかんだ色々ありましたけど――

アレのおかげで、ここまで来ましたから」


霧音が、静かに頷く。

「ふふふ、私も持ってきましたよ」


マリアは、窓の外を見ながら、

少しだけ目を細めた。


「……そうね。あれから一年。濃すぎるわ」


その言葉には、

戦いも、政務も、騒動も、すべてが詰まっていた。


「でも――優のおかげね」


その瞬間、端末がピピッと鳴る。


霧音が画面を確認し、声を上げた。


「山北料理長から、ケーキ出来たと通信が……」


マリアは、立ち上がりながら言った。


「行きましょう。――優の部屋へ」



蒼穹殿の廊下は、夕陽に染まり、

足音が静かに響く。


マリア、霧音、アイリス、イリス――

四人の影が、長く伸びていた。


それぞれの手には、

小さな包みや、花束、そして――ケーキ。


一年という節目。

それは、ただの時間ではなく、

この世界で優が築いた“絆”の証だった。


扉の前に立ち、マリアは一度だけ深呼吸をする。


「……行きましょう」


久遠優の私室。

マリアたちは、ケーキと贈り物を手に、

静かに扉を開けた。


だが――

そこに広がっていたのは、予想を遥かに超えた光景だった。


部屋の中央には、龍牌卓。

その周囲に座る三人の姿。


優は、煤けた顔で放心状態。

袁小は、耳をピクピクさせながら、半分焦げたような表情。

そして――リカは満面の笑みで、牌を高々と掲げていた。


「――あっ、優様それロンです!」


「えっ!?また!?うそだろ!?」


「優様、なんか色々揃ってますけど……これ、どうなんですか?」


リカが上がり牌を見せると――

空気が一変した。


空間が切り裂かれるような演出が走り、

場の空間すら震えるような静寂が訪れる。


袁小が、震える声で呟いた。


「刻子が4つ……四暗刻……役満ですか……」


その瞬間、リカが歓喜の声を上げる。


「わぁ~~~!!」


優の髪は少し逆立ち、

頬には煤がついている。


袁小は、牌を見つめながら、

耳をピクピクさせていた。


二人とも、完全に打ちのめされた表情。


マリアは、一瞬、言葉を失った。


アイリスはケーキの箱を持ったまま固まり、

イリスは花束を握ったまま目を見開き、

霧音は、静かに一歩前へ出る。

そして、冷静な声で言った。


「――あなた達、何をしてるんですか」


そこには真っ白になって放心している二人の姿が・・・・



――龍牌とは。

かつて異世界から転移してきた者たち、エクソジェンが持ち込んだ遊戯。

元の世界では「麻雀」と呼ばれていた。


ウーロンでは、その戦略性と運の妙が評価され、急速に普及。

現在では国民的娯楽として、貴族から庶民まで幅広く楽しまれている。


「龍牌は、魔力もレギス能力も通用しない。

だからこそ、素の実力と運、そして知略が試される――唯一無二の律外遊戯だ」


――『龍牌完全攻略ブック』より抜粋

著:ウーロン伝説の雀士 趙・マリオ

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