解放される力
訓練所には、双子姉妹アイリスとイリスがすでに待機していた。
「お嬢様、人払いは済んでおります。」
二人は口を揃えて報告する。優はその様子を見て、思わず心の中で呟いた。
「おお、やっぱ双子かぁ……。」
しかし、状況はそれどころではない。
なぜか本のバインダーの中に収まっているのに、視界がある——。
「……これは……?」
「マリアの視点か?」
まるでマリアの目を通して物事を見ているかのような感覚。
優の意識が揺れ、視界が双子の顔を捉えると——。
「ご苦労さま。」
マリアの声が響く。
「うおおお!? 酔うわこれ、酔うわぁぁぁ!!」
優は混乱しながら叫ぶ。
「マリアさん、元に戻してぇぇぇーー!!!」
しかし——。
そんな優の泣き言は、完全に無視された。
マリアは淡々と訓練所へ足を踏み入れる。
その瞬間——。
優の頭の中に突如として、ミミズのような文字が浮かび上がる。
訳の分からない数式。意味不明な魔法陣。
マリアは静かに命じる。
「アイリス、あなたの能力を見せなさい。」
「かしこまりました。」
アイリスは深々とお辞儀をし、ゆっくりと空間に手を差し入れる。
その瞬間——空間が歪み、そこから銃が出現した。
刹那。
アイリスは躊躇なく銃を放つ。
弾丸は訓練所の的に向かい、正確無比に撃ち抜いた。
そして、発砲と同じ速さで、銃を再び空間の中へと収納する。
優はその動作を見て、思わず口を開く。
「アイテムボックスみたいな能力か?」
アニメ脳の俺にはすぐ分かるぜ。
しかし、次の瞬間——マリアが動いた。
「本のバインダー」から、マリアの手が俺を引き出した。
視界が切り替わり、マリアの顔が目の前に現れる。
その目を見た瞬間、優は異変に気付いた。
——エメラルドグリーンの瞳が、緋色へと変化していた。
その瞳の奥に、まるで魔法陣が広がるような光が宿る。
「おお……あれ、放っちゃうよ的な流れ……」
優は咄嗟に察した。
その瞬間——。
俺の中に魔法が入り込む感覚がした。
そして、「無垢なる書」ゼロ・コーデックスの一ページが開かれる——。
マリアが静かに、そして力強く——詠唱を開始した。
——そして、一頁が解かれる。
汝の存在は記され、運命は紡がれる。
混沌の囁きを鎮め、虚無へと還れ。
秘されし真理よ、今ここに刻まれよ——
「無垢なる・ゼロ・コーデックス」
開示せよ、静謐なる光の境界を。
汝の意志を解き放つ、最果ての刻へ。
神の沈黙、影の証明、これより誓約す。
——ゼロは導く、全ての始まりへ。
「なんだってえええええ!?」
マリアが詠唱を唱えた瞬間——なぜか俺も同時に唱えだしてしまう。
(……は、はずいよ!?)
言葉を止めようとしても、止まらない。
まるで体の奥から引き出されるように、詠唱が流れ出る。
その瞬間——マリアが淡々と告げた。
「収納。」
空間が揺れ、アイリスと同じような空間収納が開かれる。
「わぁ、成功ですね!」
イリスが元気よく喜び、アイリスも静かに微笑む。
「おめでとうございます。」
優は言葉を失った。
成功? 本当に?
マリアはゆっくりと息をつき、額に軽く手を当てる。
「……ふぅ。」
ほんの一瞬、疲れたような表情を浮かべたが——
その顔には微かな満足感も滲んでいた。
「まだまだよ。この力は、とても強力だけど……リスクがデカいわ。」
イリスが小さく首を傾げる。
「リスクって???」
優も同じように尋ねる。
「リスクって何?」
マリアは静かに、けれど鋭い視線を向け——その答えを紡ぐ。
「クローズ・コーデックス。」
マリアが静かに唱えると、優の体が白く輝き——ぱたりと本が閉じる。
その瞬間、マリアの目は元のエメラルドグリーンへと戻り、
優の体も幼女の姿へと変わった。
「……リスク。」
マリアはじっと優の顔を見つめ、静かに告げる。
「強烈な怠惰の力。」
——怠惰の力の影響。
- 極端な眠気・脱力感が襲う。
- 魔法の使用感覚が鈍り、集中力が途切れやすくなる。
- 「怠惰に飲み込まれず戦い抜く」ためには、強い精神力が必要。
- **「意識を保つことが最大の試練」**となる。
優はぼんやりしながら呟く。
「……怠惰? まさか……だからこんなにだるいのか!?」
そう言いつつ、身体に力が入らず、ぐにゃりと床に座り込む。
「……だから誰か抱っこしてぇぇぇ!!!」
この極度の怠惰状態、もはや自分で動く気力すら湧かない。
優はふと辺りを見渡し、心の中で強く思った。
「どうせなら……イリスちゃんに抱っこされたいなぁ〜」
優ヴァッサル能力(???級)
魔導書《無垢なる書 ゼロ・コーデックス》
- ページは存在するが、最初は全て白紙
神眼の能力によって相手の能力をコピーできる
(神眼で能力をコピーすると文字や魔法陣が浮かび上がる)
能力をコピーするたびにページが開かれ、新たな力が刻まれる
ただし、コピーできるのは一般的なヴァッサルやレギスの能力のみ。
アブレーションとディヴァイン級の能力はコピー不可
神眼・オラクル
- 「真実の歪みを暴く」 → 偽りを許さず、絶対的な知識を得る
- 「この瞳に映るものは、決して消えぬ記録となる」 一度見たものは決して忘れない
備考 神眼・オラクル 優は現時点では使えない マリアは使用できる
???
魔導書を開くと、優の怠惰の力が広がり契約者に「極度の眠気と脱力」が発生




