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第三章・九京大武道会

ネオフィム秩泉に隣接するウーロンエリアの首都・九京は、

高層ビルとバラック建築が入り混じる“都市のカオス”。


その片隅、まるで別世界のように聳え立つ豪華絢爛な。

龍殿。


その最奥には、血の跡がついた絨毯、倒れた刺客たち――

そして、それをまるで退屈そうに見下ろす一人の男がいた。


龍珀星りゅう はくせい

背は低いが、その存在感は圧倒的。

龍の髭を揺らし、頭には2本の角。

紫の華服を着こなし、鱗の浮いた肌は人外の威厳を宿している。


ウーロンエリア7大貴族の一人、龍伯家の若き当主。


直後、青龍刀で斬りかかる刺客を

紙一重で躱し――逆に深手の血痕を刻む。

まるで呼吸をするように、攻撃が予測されていた。


「お見事です」

龍珀星の隣で柔らかい声が

龍珀琳りゅう はくりん

龍珀星の実姉。艶やかな華服に身を包む美しい女性。



その一言に、龍珀星はふっと口元を緩めた。

「姉上……もうこの国には、俺より強い者は居らぬ」


それは宣言ではなく、嘆きのような響きだった。


「詰まらん……」

龍殿の静寂が、龍珀星の思考とともに震えた。


琳の穏やかな声が響く。

「国内最大の武家・劉俊一家をこうも容易く屠るとは……

貴方には、もはや敵など居ないでしょう」


その言葉を受けた龍珀星は、一瞬だけ瞳に影を落とし、

ふと口元に笑みを浮かべる。


「――そうか。姉上……国内に居らぬのならば、

外から呼べばいい。ふむ……」


呼び鈴が鳴る。

しなやかな風のように現れたのは――狼獣人・狼凱。

「お呼びでございますか、当主様」


「狼凱、急ぎ布告だ。他エリアに告げよ。

この九京にて――大武道会を開催する。

勝った者には……この龍珀の地位をくれてやろう」


琳が思わず口を挟む。

「星、なんてことを……!」


「姉上、我が負けると?」


星の瞳に灯る冷たい自信。その笑みに、狼凱が膝をつき、迅速に返答する。

「ははー!」


狼凱、龍殿を疾風のように飛び出す。


龍殿前広場ではすでに家臣たちが集まり始めていた。


星はその群れを見下ろし、両手を広げて声を響かせる。


「さあ……面白くなってきた。急ぎ、会場の構築を行え。

大会は――1年後だ。遅れるな。遅れたら……捧げてもらうぞ、全てを」


家臣たちの表情に冷や汗が走り、同時に戦いの熱が跳ね上がる。

何が始まるのか――誰もが理解しながらも、止められない。

「クックッ……面白くなるぞォ……」



《九京大武道会・布告の波紋》

《龍殿》から放たれた一通の布告――それは、七大エリアを貫いて響き渡った。


龍殿・王の間

狼獣人・狼凱が静かに膝をつき、布告後の第一報を恭しく渡す。

「主様、こちらを」


龍珀星が書簡を受け取り、目を通しながら口元に冷笑を浮かべる。

「ふむ……やはり霧島の臆病者とヴァン=ローゼンの傲慢な奴らは断ってきたか」


「だが、クラウゼヴィッツとアル=ナジールは――参戦を表明か。よし」


天宮とエルバートンの欄に目を落とし、

「保留、か。……天宮には、必ず参戦せよと伝えておけ。

エルバートンは……」



星は、広がる報告を一瞥したのち、あくまで冷静な口調で総括した。

「まあいい。初めはこんなもの……。だが、潮は動き始めた」


その瞳には、まだ“真の怪物たち”が姿を現していない確信があった。


アラビリエリア アル=ナジール家が治める聖都ティアムード

砂海とオアシスが織りなす神聖と闘志の地――その一角、

サティエム教の聖地ティアムードの大神殿。


神殿の白柱の陰では、丹念に型を刻む一人の男がいた。

大柄で筋肉質、浅黒い肌に深い堀のある顔。


手には両刃のシャムシールを握り、滲む汗すら“美”と化す剣士。

「砂嵐の双剣」ワヘド


そのワヘドに声をかけたのは

――アル=ナジール家の副使にして、文官の異彩――カマル。


細身で華奢な体に学者然とした衣をまとい、少し早口でよく喋る。

「ワヘド、どうだい調子は?」


型を止めて汗を拭くワヘド。

「カマル様、順調です」


カマルはそのまま、巻物のように滑らかに話を続ける。

「いよいよ九京大武道会だ。急いで船に乗らないと間に合わないよ。

練習はあとでもできる。着替えて、荷物は用意できているかい?」


「ええ、出来ています」


ワヘドの瞳には火が灯っていた。

戦の意味を知り、剣の意味を刻んできた者にとって、

この大会は――“信仰を越えた実力証明”の場。

アル=ナジール代表として、

「砂嵐の双剣」ワヘドとカマル副使、九京へ向かう。



秩泉エリア海条

秩泉とウーロンの国境に位置するこの地は、

戦と外交の緊張が常に漂う要衝である。


その中心にある武門館――

秩泉武門の名家、

閑条家の当主にして“秩泉の英雄”と呼ばれる男が、静かに座していた

大柄で筋肉質な男。


「閑条 武殿。龍珀星様よりの親書をお届けに参上いたしました」


「九京にて、龍珀主催の大武道会を開催する。

秩泉よりの参戦を望む。

貴殿が秩泉武門の筆頭であるならば、

その剣を以て、我が龍珀の地位を奪いに来るがよい」


これで何度目だ毎回同じ問答に・・・・

閑条は書簡を閉じ、静かに立ち上がる。

「いらん龍珀の土地なぞ今、忙しい。貴様らの遊びに付き合う暇はない」


この事より重大とは如何に使者のネズミの耳をはやした獣人が尋ねる。



「ここが海条かぁ~~っ!!寿司があるんだろ~?食いたいっ!」

久遠優が元気に手を上げて叫ぶ。


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