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幕間・砂と水着と迷宮

秩泉東南部に位置する水令すいれいは、

紗波砂浜と“光潮”で有名なビーチがある商業都市。


再復旧中の海辺の環境を確認するため、

天宮一行は視察名目でやってきた――が。


「うひょー海だ!」

浜辺を見た優は、浮き輪を肩に引っかけて駆け出す。

今日の服装は、淡いミントブルーのワンピース水着。


水泡柄の白グラデーションが海風に映え、

胸元には小さなリボンとぽろろ型のチャームがきらり。


ふわふわのフリルが肩と裾に揺れ、

星型バックルのサンダルが砂を蹴るたびにきらめく。


髪は三つ編みハーフアップ。

サイドを編み込んで後ろでまとめ、ぽろろのキャラシュシュで結んだ。

前髪はふんわりと顔を縁取る。


元気全開、可愛さ炸裂。

「うひょーー!海!海ーーっ!」

小さな足音が砂浜を跳ね、浮き輪がぴょこぴょこ揺れる。


その姿を見て、マリアは静かに溜息をついた。


海水にちょん、と指をつけた優は、ぺろりと舐めて目を輝かせる。

「……うん、こっちの世界もショッパイんか!」


小さな身体で砂浜を蹴って、全力で海に飛び込もうとするその瞬間――

「うしゃ泳ぐで~~~~!!」


「ぁあこらっ!優!まだ許可出てないからっ!!」

風を切って飛び出したのはイリス。


透涼ジャケットにスカートパンツ、

機能満載の任務仕様ながら爽やかなスタイル。


茶髪は輪のように束ねたツインリング、貝型ヘアピンが潮風に耐える。

走るたびに胸が跳ねるのは、もはや仕様。


優はすでに浮き輪を背負って波の中へ前傾――

その笑顔があまりにも無邪気すぎて、止めるのが難しすぎる。


イリスの胸が跳ねるように揺れながら、

波打ち際を元気に泳ぎ回るのは、久遠優。


浮き輪を器用に操りながらバタ足で海面を滑走し、イリスを巧みに翻弄していた。

「がははは!捕まえてみぃ~イリスちゃ~~ん!」


「優、待ちなさいっ!泳ぎ、速すぎっ!」


「ふっバタ足の優とは俺のこと」


水しぶきを上げる海で騒ぎ立てる二人。


その様子を、海辺からスッと現れたもう一人が見つめていた。

アイリスはスカイシルバーのショートトップにネイビーブルーのスカートショーツ。

腰パレオが風に揺れ、潮花型のヘアクリップが時折光る。


涼やかで凛とした佇まい。サンダルを脱ぎ、タブレットを収めて微笑む。

「優、そろそろ本格的に捕獲しますね。イリス、先に角度取って。

私は海流で抑えます」


波打ち際では、優・イリス・アイリスの三人が賑やかに暴れ回る中。


少し離れた砂浜の陰では、マリアと霧音がその様子を見守っていた。


マリアは白を基調とした儀礼水着。

金糸の天華紋が胸元に刺繍され、背面の羽根状パレオが優雅に舞う。


高めに束ねた髪に金縁の簪、緋色のチャームが揺れる。

完璧な座り姿で、パラソルの下に静かに佇む。


「無邪気なのはいいけれど……誰か、お茶目を抑える係も必要ね」

霧音は墨銀と青紗のツートーンドレス水着。

内ポケットに測定端末を備え、首元には薄紗のマフラー。


編み込みテールには白い律珠が散りばめられ、品のある輝きが波に映える。

トロピカルドリンクをそっと差し出しながら、静かに言う。

「少々甘めですが、冷却効果を優先しております」


光潮の中、わちゃつく波間バトル――完全なる包囲戦が始まっていた。

優は浮き輪を操りながら「がははは!」と調子に乗り、

バタ足で波を切って逃げ回っていたが……


アイリスとイリス、双子コンビがついに左右からジリジリと詰め寄る。


優の目が泳ぐ。

潮風と波のきらめきが背中を押す――だが、逃げ道はない。


「こ、これは……終わりか……。いや、どうせ捕まるならっ!」


優はスッと体勢を変え、突如浮き輪ごとイリスめがけてダイブ!

「降参降参!イリスちゃ~~ん!!」


だがその計画はガチリと音を立てて崩れた。


背後から――優の流れすら読んだアイリスがスパッと手を伸ばし、

優の首根っこを完璧な角度でガシッとつかむ!!

「優……あなた、今イリスに抱きつこうとしたでしょ」


バタバタもがく優は、顔面に水しぶきを浴びながら必死の弁明。

「ち、ちがう!これは戦術的な回避というか浮き輪の……うわぁぁぁ!」


アイリスの目が冷静に光る。そこに“全てお見通し”の怖さが宿る。

イリスはその様子を見て、堪えきれずに爆笑。

「顔が欲望でできてるぅぅぅ!」


海とカオスの幕間が、なんともにぎやかに流れていく


夕暮れの潮が水面に穏やかな光を漂わせる中、

優はようやく捕獲された浮き輪を抱えたままマリアの元に連れてこられていた。


バタバタしていたさっきまでとは違い、今は浜辺に座ってじっと海を眺めている。


波の向こう――薄ぼんやりと浮かび上がる黒い影。

それは島だった。名を持つ島。


「なあ……あれ、アル=ミラヴァス?」

優の声は、好奇心でいっぱいだった。


指をさす先に浮かぶ輪郭。それを、マリアは視線の端に捉えてから静かに答える。

「ええ、そうよ。古い封域のひとつ。かつて“神の迷宮”とも呼ばれた島」


優はぐいっとマリアの横に寄って、きらきらした目を向ける。

「ダンジョン、見てみたい……!」


マリアは少しだけ微笑み、その視線で優の顔を見つめる。

そして言葉を選ぶように、ゆるやかに答える。

「そうね。この秩泉エリアの視察が終わったら……行ってもいいかしら」


優の瞳が嬉しさで緩む。だがその笑顔の裏に、妙なざわつきがあった。

再び海の向こうを見つめる。

「アル=ミラヴァス……。なんか、懐かしいんよな……」


風が少し強くなり、パラソルの布地が揺れた。

その言葉が――優に、何かを目覚めさせようとしていた。

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