第二話:契約と再誕
《ネオフィム》——
それは、人類が絶望と希望の狭間を生きる大陸。
今から1500年前、突如現れたアブレーションによって人類は壊滅的な被害を受け、総人口の3割が失われた。だが、その崩壊の中から希望が芽生えた——**レギス「契約者」とヴァッサル「従者」**という存在。
ヴァッサルはレギスと契約することで超常的な力を得てアブレーションを撃退できるようになり、その力によって人類は滅亡を免れた。そして、時代が進むにつれ、大陸は7つのエリアに分かれ、7大貴族によって統治されるようになった。
その中の一柱——天宮家。
7大貴族として知られ、若き当主マリア
「ここは……?」
優は重たい瞼を開けた。頭の奥が鈍く痛む。
見渡すと、そこは見たこともないほど豪華な部屋だった——天蓋付きのベッド、煌めくシャンデリア、高価そうな家具が整然と並んでいる。「……うぇ?」違和感を覚える。
自分の声が変だ。なんだか高い——?
「……ん?」違和感のまま、優は自分の手を見た。
小さい。
「……まさか」
彼は部屋の隅に置かれた豪奢な姿見へと向かった。よじ登るようにして鏡に映る自分を確認する。
「嘘だろ……」
鏡に映るのは、明らかに幼児——まるで3歳児くらいの幼い姿の自分だった。
混乱する優は、恐る恐る下に手をやる。
「俺の……息子が……!?ない!!!」
その瞬間、彼は絶望した。
コンコン
扉が静かにノックされ、開かれる。
「目が覚めたのね。」
優がそちらを向くと、そこには知的な雰囲気を纏う美しい女性が立っていた。長く艶やかな髪、整った顔立ち、気品に満ちた所作。年齢は20歳前後と見える。その後ろには二人のメイド服を着た女性が控えていた。
どちらも整った顔立ちで、まるで双子のようだった。
優は戸惑いながらも、ふと疑問を口にする。
「……あの、ここは?」
しかし、自分の声の高さに驚き、思わず身体を硬直させる。幼い——明らかに幼児のような声だった。
その反応を見た双子の片割れの一人が、やや冷たい口調で答える。
「ここは天宮家でございます。」
双子は驚くほど似ていて見分けがつかない。しかし、優は本能的に胸の大きさで判別することにした。
冷たい態度の方は小さく、もう一方の方はふわふわしていて大きい。
「ふっ……よしなさい、アイリス。」
知的な美女——マリアが穏やかに双子を制し、優にゆっくりと歩み寄る。
彼女の全身から漂う気品は、もはや完璧とも言えるほどだった。
マリアは優の幼い頭を優しく撫でながら囁く。
「お休みなさい、エクソジェン……。」
その瞬間——優の身体にだるさが襲いかかる。
「……俺の名前は久遠優だ……」
呟くように言葉を発するが、意識が朦朧としていく。
マリアがにこりと微笑む。
「天宮マリアよ。」
その言葉を聞いた瞬間、優の意識は深い眠りへと沈んでいった——。