表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/95

決戒の余波

《天律決戒》

勝利後の会見

メディア:「今回の勝利を表すなら——」


マリアが静かに語る。

「この決戒を受けてくださった閑条家に、まずは感謝を。

これはただの戦いではなく、天宮を示す証でした。

勝者として語るならば、この瞬間こそが新たな天宮の始まりです。」

彼女の緋色の瞳が輝く。


「秩泉の未来は、ここにいる皆が作るもの。

私はその礎を築く者であると、改めて誓いましょう

これにて元服の儀を終えたいと思います。」


そう言うと、マリアは足早に会見を切り上げる。

メディアは物足りなさを感じつつ、何か言いたげな表情を浮かべる。



司会者:「え~、ご当主様は大変お疲れですので……。」

会見終了後、マリアは帰宅の車へ乗り込む。


しかし——その瞬間。


「くっ——。」

マリアは力なく後部座席に倒れ込む。


「お嬢様!?」

アイリスとイリスが驚いて駆け寄る。


霧音は周囲を警戒しながら、素早く指示を出す。

「早く宮殿に——それと医者の手配を。」


本から幼女へと戻った優が、マリアの姿を見て叫ぶ。

「おい、大丈夫か!?」


マリアは息も絶え絶えに呟く。

「力を使いすぎただけ——私も、まだまだね。」


霧音が鋭く命令を飛ばす。

「急いで車を出しなさい!」


宮殿へ向かう車が加速する。


蒼穹殿・マリアの寝室。


静寂に包まれた部屋の中心には、深い眠りに落ちたマリアが横たわっていた。

彼女の勝利は揺るぎないものだったが、その代償として身体を極限まで酷使した。


医者は静かに診察を終え、低く言った。

「ふむ……力を使いすぎただけだと思います。通常なら2、3日で目が覚めるでしょう。ただ、あれだけの大魔法を使われたので何とも言えませんが……

とりあえず命に別条はありません。」


安堵が広がる。

アイリスは深く息を吐き、静かに答えた。

「そうですか……ありがとうございます。」


その視線の先、ベッドにはまるで死んだように眠るマリアがいる。


その瞬間——扉が静かに開かれた。


二人の男が現れる。

六道院 実道が厳しい表情を浮かべながら問いかける。

「当主はご無事か?」


アイリスは落ち着いた口調で返す。

「とりあえず、様子見とお医者様がおっしゃっていました。」


六道院は眉をひそめる。

「命には関わることではないんだな?」


「はい。」


「……そうか。」

六道院は小さく息を吐き、僅かに安堵の色を見せる。


その時、華月 エンザが優へと視線を向ける。

「まさか……。」


驚愕の色を隠しきれず、優の顔をじっと見つめる。

「その子がディヴァイン級ヴァッサル?」


華月 エンザの目がわずかに揺れる。

まさか、こんな幼い子供が——?


六道院も優を見て、驚きを隠せない。


マリアの眠るベッドの傍らで、優は何かを呟く。

「痛いの飛んでけ、痛いの飛んでけ。」

なにやら可笑しなことを——。


優はふと振り返り、タコ入道のような爺さん(六道院)

と双子に面影を持つ華月 エンザを見据え——


自信ありげに宣言する。

「そうよ——俺がディヴァインよ。」


その言葉が、静寂の空間に響き渡る。


天華、とある会員制高級ラウンジ。


六道院、華月、そして数十人の貴族たちが集う。

彼らは皆、マリアに忠誠を尽くす派閥。


華月 エンザが満足げに報告する。

「閑条に勝ったことで、我らの派閥に鞍替えする者が増えてきました。

何より、今まで中立だった者がこちらに加わりたいと申し出ています。」


華月 エンザは最近よく眠れているのか、顔色がいい。

派閥の拡大が、確実に進んでいる。


六道院は冷静に言葉を紡ぐ。

「よし——このまま水鏡家を切り崩すのだ。」


その時、貴族の一人が口を開く。

「閑条は約束を守り、契約書通りに行動しています。」


その言葉に、他の貴族たちが浮かれた表情を見せ——

「マリア様万歳!」


歓声が広がる。

しかし——六道院は鋭い視線を送る。


「君たち、これからが大事だ。」


貴族たちの表情が引き締まる。


その時、一人の貴族が静かに語る。

「閑条 武からこれを——。」

そっと、一枚のメモリーカードが差し出される。


六道院は眉をひそめる。

「なんだね、これは?」

「華御門に関する情報だそうです。」


六道院の目が僅かに輝く。

「ほぅ——面白い。」

彼は立ち上がり、静かに宣言する。


「それでは皆さん——

当主が目覚めた頃には、このくだらん騒動を終わらせるぞ。」



マリアはまどろみの中、幼き日の記憶へと沈んでいく——。

彼女が天宮の当主となったのは、わずか5歳の時。

両親がアブレーションに殺され、すべてが変わった。


帝王学を叩き込まれた幼き当主。

彼女は幼いながらも大人顔負けの冷静さを持っていた。


その日——執事が静かに告げる。

「当主、明日専属の従者が参ります。契約を結ぶことをお勧めいたします。」


《百鬼夜行》——

マリアのレギス能力。

- 通常のレギスはヴァッサル1〜3人の契約が限界だが、

マリアは最大100人契約可能。

‐強力な契約能力を持っているが、ミディア級以上のヴァッサルとは契約できない。


しかし——マリアは迷いなく答える。

「それは会ってから決めるわ。誰?」


執事は恭しく答えた。

「華月 エンザ様の娘でございます。」


マリアは興味なさげに呟く。

「そう。」


マリアは、ソファの上で膝を抱えながら、窓の外をぼんやりと眺めていた。

その瞳には、年齢に似合わぬ冷静さと、退屈への諦めが滲んでいる。

(どうせ誰が来たって……つまんない。)


翌日——運命の出会い。


「当主様、はじめまして。華月 エンザでございます。」

華月 エンザは深く臣下の礼をとる。


「こちらが私の娘——双子のアイリス、イリスでございます。挨拶を。」


二人は、揃いの淡い水色のワンピースを着ていた。

胸元には小さなリボンがあしらわれ、裾には星の刺繍が散りばめられている。


髪はそれぞれ、アイリスが右寄りのサイドテール、

イリスが左寄りのツインテール。


鏡写しのような姿に、見分けがつかないほどだった。

双子は緊張していた。


「アアスです……!」

「イリチュ……!」

言い間違えたのか、二人の顔が真っ赤になる。


華月 エンザは苦笑しながら訂正する。

「申し訳ございません、こちらがアイリス。

そしてイリスです。あなたと同じ5歳です。」


その瞬間——


マリアは小さく笑う。

「天宮マリアよ。」


双子は顔を見合わせて——

「マリアちゃま!」

それが、マリアと双子の出会いだった——

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ