サティエムの祝福
サティエム教の祈りの言葉
- 《ティアム》 → 「至高の満足」から生まれた神聖なる響き
祝福の楽園――サティエムの約束
むかしむかし、惑星ネオフィムには、永遠の満足を知る者 がいた。
その者は語った――「求めるな、ただ満たされよ」。
人々はその言葉を聞き、争いをやめた。
憎しみも、嫉妬も、悲しみも――すべてが穏やかに消えていった。
その者は、王ではない。
だがその教えは、王の間より広まり、世界に安寧をもたらした。
「深淵の先に楽園がある」
「そこへ至る者こそ、真の王を知る」
人々は信じた。
王の間を目指す者は増え、冒険者は育ち、貴族は秩序を支えた。
こうして、惑星ネオフィムは サティエムの祝福のもとに繁栄した――
そして、惑星は静寂に包まれる。
やがて、誰かが楽園へ至るその日まで――ティアム
——戦場は静寂に包まれた。
マリアの圧倒的な勝利により、沈黙と歓声が混ざり合う。
しかし、その中で——唯一、狂気の輝きを宿した瞳があった。
ナディール・アル・シムス。
彼はゆっくりと歩みを進め、戦場の中心に立つマリアを見つめる。
その唇が震え、感極まったように、
まるで神の啓示を受けたかのように言葉を紡ぐ。
「ティアム……ティアム!!」
その叫びが響き渡ると、会場のサティエム教の信徒たちは一斉に頭を垂れ、
祈りを捧げ始める。
彼は両手を広げ、恍惚とした表情を浮かべながら語る。
「これは神の奇跡……!王の間に至る者の証明!」
「レギス、ヴァッサル——その者たちを見出すことこそ、
神の摂理であり、秩序の成就……!!」
その視線が、次第にマリアへと移る。
「そして……!」
震える指が、優(本化してる)へと向けられる。
その目には——狂信者の確信が宿っていた。
「見よ……汝こそ神の選びし者!!」
その声が轟くと、観衆がどよめく。
「ディヴァイン級の魔力……これはサティエムの道へ至る証!!」
「王の間は開かれ、秩序は新たなる歴史を刻む!!」
ナディールは跪き、頭を垂れた。
「サティエム枢機卿ナディール・アル・シムスは認めます……
汝こそ、ディヴァイン級であると。」
その言葉が響いた瞬間、会場は静寂に包まれた。
誰もが息を呑み、ただその宣言の重みを受け止めていた。
ナディールの胸中には、確かに誇りがあった。
だが同時に、微かな不安もあった。
この者が本当に“神の選びし者”なのか――
それとも、秩序を揺るがす新たな災厄なのか。
華御門の屋敷。
煌びやかな装飾、宝石が至る所に散りばめられ、
まるで権力の象徴のような空間。
その中心に座す男——華御門。
しかし、その優雅な佇まいとは裏腹に、彼の瞳には苛立ちが滲んでいた。
「どういうことか説明してもらおうか、水鏡卿。」
視線の先、ディスプレイに映るのは水鏡 綾臣。
彼はやけ酒をあおりながらも、険悪な空気を感じ取り、静かに酒杯を置いた。
「まぁ、落ち着いてください。」
しかし、華御門の目は鋭く細められ、声が低く冷たくなる。
「大会中に、あれを暗殺する手筈ではなかったのか……?」
綾臣は無表情のまま答える。
「事故に見せかけ、手を打とうとしましたが……なかなか。」
短い沈黙が場を支配する。
やがて、綾臣は何かを思いついたかのように顔を上げ、口を開く。
「華御門卿、あれをお借りしてもよろしいか?」
「まだ我らにもカードはあります。」
華御門は考え込む。
「……考えておこう。」
通信が切れる。
しかし——華御門はまだ直接、マリアと争っていない。
この状況を見定めるべきか、それとも水鏡を切るか——。
「水鏡を切るか……。」
その呟きが響いた瞬間——
——屋敷が揺れる。
振動は凄まじく、壁の装飾が崩れ落ち、天井のシャンデリアが微かにきしむ。
「何があった——!?」
屋敷の奥から悲鳴と怒号が響く。
護衛が駆け回り、混乱が広がる。
そして——
一人の男が現れる。
彼は飄々とした態度で、長身の身体を軽く揺らしながら歩いてくる。
まるで退屈そうに、この混乱を見物しているかのようだった。
「……あ~、境域討滅庁です。」
護衛が即座に構えるも、男はポケットから何かを取り出し、ひらひらと掲げる。
「貴方を逮捕しますね、これ令状で。」
華御門の瞳が驚愕に開かれる。
「……何?」
男——狭間 彗 は、だるそうに肩をすくめる。
狭間が軽く指を鳴らすと、背後から討滅庁の執行官が次々と現れ、屋敷を制圧し始める。