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聖夜のエクソジェン其の九

その正体は――

白金の髪を夜風になびかせ、

小さな体で堂々と腰に手を当て、白い歯をキラリと光らせる幼女。

久遠優だった。


その隣には、申し訳なさそうに縮こまるひょろひょろの男。

病弱そうな辛気臭い顔を前面に押し出し、

しかし妙にオシャレなツイストパーマだけが浮いている。


――時は少し前。

優はゴロゴロと寝転がりながら、

アイ戦のデイリーミッションを終えていた。

「あれ、霧音ちゃん遅い……なんかくせーし」


鼻を押さえながら、

霧音が休憩に出てからの時間をぼんやり数える。


「ちょっと寒くなってきたか?こりゃ雪でも降るんじゃね?」


優の部屋は、元は用務員の休憩室だった場所を

“プレゼント鑑定部屋”に改造したもの。


暖房は弱く、古いドアの隙間から冷たい風が吹き込んでくる。

優は寒さに震え、置いてあった毛布にくるまった。


「早く一杯やりたいぜ……」

アイ戦をやめ、

ダンチュウバーの“あきらとよしこ”の特別企画、

マスマスのダンジョンライブを見始める。


ゲラゲラ笑いながら毛布に包まる姿は、

まるで転がる雪玉のようだった。


そのとき――

かちゃり。

ドアが開き、外の冷たい空気が部屋に流れ込む。


優はライブに夢中で気づかない。

毛布が、誰かの手によってふわりと剥がされた。


「あー霧音ちゃん? 持ってきた?」

優は毛布から顔を出し、上を向いた。


そこに立っていたのは――

霧音ではない。

ひょろひょろの体。

弱々しく、辛気臭い顔。

だが髪型だけは妙にオシャレ。

使用人の制服を着た男だった。


優は一瞬で言い放つ。

「なんだこのチー牛野郎」


男は驚いたように目を見開いた。

「すごいな……“眠りの月”が効いてない。

そして僕の名前を当てた。

そう、僕は チー・牛・ラブ と呼ばれている。

その神眼で見抜いたのかい?」


優は少し考え、胸を張る。

「当たり前だろ。

俺にかかればすべてお見通しだ」

(※優は神眼など使えない)


牛ラブは感心したように頷いた。

「さすがディヴァイン級……。

どうだい?

サタンクロース箱、欲しくないかい?」


優の目がギラリと光る。

「なに!?

お前、箱の在りかがわかるのか!!」


毛布を吹き飛ばす勢いで立ち上がり、

優はトテトテと牛ラブに詰め寄った。


「箱のありか知ってんのか!!

早く言えよ!!」


牛ラブはそんな優を見下ろし、弱々しい笑みを浮かべた。

「もちろん知っているよ」


その顔を見た瞬間、優は思い出した。

「あああああ!!

お前あの時のキノコ野郎か!!

貴様のせいでこんな寒い部屋で作業させられたんだぞ!!」


幼女の小さな足で、

ぺしっ と牛ラブのすねを蹴る。


「いっ……痛いよ優様……!

ご、ごめん……でもそのお陰で箱が手に入るんだよ……!」


牛ラブは派手に痛がり、弱々しく“参った”ポーズを取る。


だが次の瞬間、

その顔を優の耳元に寄せ、ひそひそ声で囁いた。


「今、イリス様や霧音様は眠っていてね……

どうやら泥棒の能力らしい。

そして――ほら、聞こえるだろ?」


倉庫の方から、

ドガシャアアアア!!

ぎゃあああああ!!

と、派手な悲鳴と衝撃音が響いてくる。


「あれは泥棒が罠にはまっている音さ。

くくっ……あの様子だと、だいぶ弱ってる。

これはチャンスだよ、優様」


牛ラブの囁きに、

優の幼女フェイスがギラリと輝いた。


「マジか!!じゃあ早く行こうぜ!!」

「こっちだよ。静かにね」


優は疑いもせず、

素直に牛ラブの後ろをついていく。


牛ラブの後姿を見ながら優は

(たとえこんな雑魚が裏切って敵になろうが、楽勝www)


――優は完全に油断していた。


だが牛ラブのひょろひょろした体は、

実は全てが鍛え抜かれた筋肉でできており、

歩く足音はまったくしない。

その目は、鷹の目ように鋭かった。


廊下の明かりが二人の影を伸ばす。

小さな影と、ひょろ長い影が並んで揺れながら進む。


倉庫にたどり着いた瞬間、

優は状況を一瞬で理解した。


ボロボロのトムソンとジェフ。

燃えた服、スライムまみれ、紙吹雪まみれ。

もはや人間の尊厳がギリギリの姿。

そしてトムソンの手が、正則たちに触れようと伸びた


絶体絶命の時


優は指を突きつけ、叫んだ。


「YES! チャイルド!!NO! タッチ!!」


そして、またもや勘違いをする。

(おっしゃ相手は瀕死だ)


「ガハハハ!!

箱も手に入れ、子ども、を助ける!!ヒーロー参上!!!」


幼女の姿で仁王立ちし、ドヤ顔で笑う優。


トムソンとジェフは、

その姿を見て一瞬だけ沈黙した。


「……誰だこのガキ」


「なんか~つよそう~?」

ボロボロの泥棒二人と、

勘違い全開の幼女ヒーローが向かい合う。


倉庫の空気が、

一瞬だけ静まり返った。

正則とカンナは、倉庫の入口に現れた優の姿を見て叫んだ。


「優様!! 助けて!!!」

まるでヒーローがピンチを救うワンシーン。


優は幼女の体でありながら、小型アブレーション並みの速度で走り出す。

「てぇめらぁぁぁ!! ぶっ飛ばす!!!」


白金の弾丸が倉庫へ突入――

した瞬間。




ツルッ。





優の足が、倉庫入口に仕掛けられたスライムオイルに滑った。


「え」

「うぎゃあああああああああ!!!!!」


優の悲鳴が倉庫に木霊する。


白金の弾丸はそのまま、

トムソンたちが崩した段ボールの山――

スキーのジャンプ台のようになった斜面へ吸い込まれる。


ピョーーーーーン!!


優が空を舞う。

「うぎゃあああああああああああ!!」

そのままプレゼントを守る結界に激突。


バッッッカーーーーン!!!

結界は、まるで紙細工のように砕け散った。

勢いのまま優は倉庫の窓を突き破り、外へ飛んでいく。


「あれーーーーーーーーーー!!」



一同「…………え?」



「くはははははははは!!!最高だよ優様!!」

牛ラブは腹を抱えて笑い転げる。


「トムソン、ジェフ。どきな。

箱は組織の物だ」


「げっ……牛ラブさん……!」

幹部の登場に、

トムソンとジェフは青ざめた。


牛ラブは悠々と歩き、

砕けた結界の残骸を踏み越える。


「この結界が厄介だった……だが、もう邪魔はない。

そろそろ24時……

最高に、ハッピークリスマスオだ。」


牛ラブが一つの箱を“掴み取った”その瞬間――


「残念ですけど――

貴方にはクリスマスオを祝う資格はありません」


「っ……!」

牛ラブは反射的に後ろへ跳ぶ。


その頬を、霧音の蹴りがかすめた。

フワリと舞うスカート。


メイド服の裾が揺れ、

霧音の蹴りと拳が次々と牛ラブへ襲いかかる。


牛ラブは腕でガードしながら後退する。

「くっ……速い……!」


霧音は無表情のまま、

しかし怒りを押し殺した声で言う。


「子どもを泣かせる大人は……嫌いなんです」

牛ラブの腹に拳がめり込む。


「ぐっ……!」


続けざまに回し蹴り。

牛ラブは吹き飛ばされ、床を転がった。


「くそ……トムソン! ジェフ!

子どもを人質にしろ!!」


床を転がりながら、牛ラブはすぐさまポケットへ手を伸ばす。

指先が掴んだのは――閃光玉。


パァンッ!!

地面に叩きつけられた瞬間、

霧音との間に白い閃光に包まれた。

「っ……!」

霧音の動きが、一瞬だけ止まる。


その刹那――

牛ラブのレギス能力が発動した。


戦闘をポカーンと見ていた二人は、

慌てて正則たちへ向かう。


「お、おい! ガキども!!」

「つかまえるぞぉ~~~!!」


だが――

ドゴォッ!!!

トムソンが横から吹き飛んだ。

「ぎゃああああああああ!!」

ジェフ「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~!?」


「全く……人質なんてセコい真似しようとするんじゃないわよ」


トムソンを吹き飛ばした人物を見た瞬間、

正則たちの目にぱっと光が宿った。


張りつめていた恐怖が一気にほどけ、

胸の奥から熱いものが込み上げる。

頬を伝う涙は、もう恐怖のものではなかった。


「イリス様……!」

正則もカンナも、

助けが来たときの子どもらしい安堵で、

ぽろぽろと嬉し涙をこぼした。


イリスは少しバツが悪そうに笑い、

正則とカンナの頭を優しく撫でる。

「正則君、カンナちゃん。よく頑張ったね。

もう大丈夫。お姉さんが泥棒を捕まえるから」


にこりと微笑み、ジェフへ向き直る。

ジェフ「ひぃぃぃぃ~~~~!!」


「正則兄ちゃん!!」

アベルが勝ち誇った顔で走ってくる。

その横には――

光郎となぜかエリーまでついてきていた。

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