第一話:酔夢と闇の獣
久遠 優は家で酒をあおりながら、いつものように「仕事したくない」と愚痴をこぼしていた。次第に視界が暗転し——気づくと、知らない都会の街中に立っていた
しかし、酔っぱらっているせいで、異常な状況に気づかない。ただ、都会の人々は酔っ払いに慣れているのか、誰も彼に構わず歩き去っていく。 「なんだ、ここは……?」優は呟き、頭を振る。
その瞬間、空間が裂けた。
黒い亀裂が空に走り、そこから機械と狼が融合した異形の怪物——アブレーションタイプ・ヴォイドビーストが現れる。電子音のような咆哮が街に響き渡り、人々は悲鳴を上げながら四方八方に逃げ惑う。
その混乱の中、一台の高級車が静かに停車した。後部座席には、深紅のドレスを纏ったマリアが座っている。
「お嬢様!」緊迫した声でメイドのアイリスが告げる。「アブレーションが出現しました!」
マリアは冷静に窓越しにヴォイドビーストを見つめる。「そう」と一言。グラスを指先で弾き、優雅に立ち上がる。「行くわよ。」
その頃、優は——。
「な、なんじゃこりゃあああ!!」完全に酔いが覚めていた。足がもつれながら必死に逃げようとするが、うまく動けない。
その刹那、ヴォイドビーストの鋭い爪が振り下ろされた。優の身体を裂くように、深紅の閃光が走る。
「痛い……痛い……っ!」優はよろめきながら崩れ落ち、震える手が地面につく。血がじわりとアスファルトに滲み、視界がぐるぐると回る。意識が遠のいていく。
そこへ、一陣の風が吹き抜けるように、マリア、アイリス、そしてイリスが現れる。
「お嬢様、急いでください!」アイリスが警戒を強める。
イリスは無言でヴォイドビーストを見据え。
マリアは地に伏した優へと視線を落とす。一瞥するなり、その表情には冷淡な諦めが浮かんだ。 「この人はもう助からないわ……」
しかし——その瞬間、優の身体から、かすかな魔力が漏れ出した。
「……これは?」 マリアの瞳が僅かに揺れる。微細ながら確かに存在する、魔力の残響。それは死の淵にある者が持つものではなかった。
「予想外ね。さて、どうする?」彼女の唇が意味深に動く。
マリアの指先が魔力に触れた瞬間——彼女の表情が変わる。
「エクソジェン……!」
**異なる世界から来た異邦人——エクソジェン。**優がその存在であることに気づいたマリアは、息をつき、冷静に言い放った。
「このままではあなたは死ぬわ。契約を受け入れるなら助けてあげる。」
優は意識が朦朧としながらも、震える唇で必死に叫ぶ。
「死にたくねえ!何でもいいから助けてくれ……!」
その言葉とともに、マリアは契約を結ぶ——。
その瞬間、マリアは驚愕する。