彼女達、そして彼
私、乙葉華蓮は、思考していた。
テストなどではない。そもそも、私はテストは寝て零点を取るタイプだ。テストごときで悩まない。
玄関の前に、警察がいるのだ。
“警察”が。
玄関に来た時対応に困るランキング堂々の二位の警察(当社調べ)が、だ。
ちなみに一位はN○Kの集金の人である。
NH○の集金の人は本当に対応に困る。
私の家は本当にテレビがないのだ。
……ってそうじゃない、そうじゃない。
警察……私が何かやらかしたわけでもないだろうし、周辺で事件でもあったのだろうか……周辺で事件……?
あ、るるちゃんの右腕ポッキリ事件のことか……?その情報収集だったら辻褄が合う。
と、とととりあえず玄関を開けよう。
「こ、こここんにちは」
警官がいきなり挙動不審に陥った。
「あ。はい。こんにちは、今日はなんのご用件ですか?」
私がそうさりげなく返す。
「……それは、ですね。」
……?
警官が神妙な面持ちになる。
警官の制帽から、白い髪がチラリと見えた。
嫌な予感がする。
「そこまでだよ。」
そう警官の後ろから、青年のような声がする。
その青年は、ベージュの髪に、黄色の目を持つ、まあ俗に言う美少年、というものであった。
私は、その青年に既視感を覚えた。
焦った様子で警官は、「…………<罪鳥>……! 何故ここにいる!」と言う。
「……その名前で呼ばないでくれる? 杉浦君の忠犬さん。」
……え、私は置いてけぼりですか?
「呼び名など、どれも同じでしょう。それより私は、あなたが私のことを忠犬と呼ぶほうが不愉快ですがね」
「それこそ君が言う通り、呼び名がどれも一緒。ってことでしょ?」
……気まず……
「それより君、どうにか言ったらどうなの?」
わ、私っすか。
「……何もないです。」
「あちゃー、何もないかー。」
こいつはどんな答えを想像していたんだ?
「それより君、重大な事件が起きた!」
「……? なんですか?」
「お腹すいた」
……
場に沈黙が走る。
「ってことで、この子だけ回収していくね〜。じゃあね、悲水さん。またあう機会があったら会おう!」
グッバイ! と、サインをして、通称罪鳥は私の首根っこを掴んで走る。
中世イタリアのような街並みが、もはや色でしかなくなるレベルで早い。
すごく早い……けど! けれど! 痛いです、痛いです!ものすごく痛いです!私猫じゃない!
じゃあなんで言わないかって?
時は数分前__
「大丈夫? 痛くない?」
「痛いです、ええ、とても。」
「そっか! 痛くないならいいね!」
などとほざきやがるからである。
言っても無駄とはこのことなのであろう。