白砂、そして桜井、そして杉浦。
__杉浦様は、だいぶ無茶をなさったそうで…?
__ああ、そうみたいだねぇ。最近魂の消耗が激しいみたいだよ……。白砂小娘君、君も気をつけてくれ給え。
__そう、ですか。気をつけます。
釈然としない空気のまま、アッシュマフィアのビルの廊下を踏みます。
アッシュマフィアは、この組織に逆らったものが灰にされることからその名前がついたそうです。
最も、他に呼び名がないということもあるかもしれないですが……
私は、小娘が嫌いです。
乙葉華蓮__だとか言いましたでしょうか。
私は、ハンチング帽をより一層深く被ります。
顔を隠すと安心します。
私が素顔を見せたのは、杉浦様とその妹の桜井音羽と桜井絵美にしか見せたことがないのです。
……恐らく推測するに、杉浦、という苗字は偽名なのでしょう。
なぜ偽名を使うのか、という部分は知らないです。
そもそも知る必要性などないのですが……
そして、私はビルの出口へと向かいます。
どこへ向かうのか?
それは、決まっています。
乙葉華蓮の家へと、です。
確か、彼奴の両親は育児放棄気味で、金しか送らないと聞いた、というか調べました。
そう。向かっていた。
「おい、何処へいくつもりだァ? 白砂ォ……」
びくり、
そう効果音が流れたのが聞こえた。
「す、すす、杉浦様でございましょうか?」
私は驚き、すを3回も言ってしまいました。
「ああ、そうだが。……で? 質問の答えは?」
……
「乙葉華蓮の家へとです。」
「そりゃァまた何故。」
……
杉浦様が放つ威圧感というものは、常人では一瞬で全身の穴という穴から血を吹き出して死んでしまうレベルのものである。
「……殺す、為」
……
……
「殺す、殺すねェ……。」
「で、では、そういうことなので。」
私は、咄嗟にそう言い、小走りで乙葉華蓮の家へと向かいます。
杉浦様の威圧感に耐えられなくなったからです。