第2話 新入生歓迎交流会①
困惑する俺を見て、彼女は笑うどころか俺の目をしっかりと見つめている。
「本気なのか?」
と、俺は問う。
「うん。本気だよ」
と、彼女は言う。
彼女の目を見て俺は決めた。
「ほとんど初対面で良かったら。彼氏としてよろしくお願いします。」
その言葉を聞いた“彼女”は微笑んで頷いた。
「こちらこそよろしくお願いします。」
俺らを鐘の音が包んでゆく。
昇降口に入るともう一限目は始まっていた。幸いなことに、今日はクラスのオリエンテーションだったため授業遅刻には当たらず、出席遅刻しか遅刻の対象にならなかった。
「おいおい山田、何しれっと教室入ってんだ?昨日の威勢はどこへやらだ。シャキッとしろ!」
今日もこの担任は元気なこった。それにしても思考回路が途切れたままだ。一向に頭が回らない。あの時は勢いでOKしちゃったけど大丈夫かな?
岩田先生はいきなりこんなことを言った。
「今日はお前らの後輩、一年生との交流会を行う。」
クラス中が騒めき始めた。そりゃそうだ、今いきなり言われてそれを今日やると。
岩田先生は続ける。
「新入生歓迎交流会は男女別でグループを分け、一年生の男子チーム、女子チームをそれぞれ交代で交流する。1人でも多く交流することが目的だ。」
クラスはさらに騒めきだす。
隣で森山の口がニヤけていたが、俺の口はポカンと空いたままだ。
もしあの子が俺の彼女だとか言いふらしたりしたら、やれロリコンだの、やれ一目惚れキモ翔輝だの言われるハメになる。そうなった時にはこの学年、この学校に俺の居場所は無くなってしまう。
俺の言葉にならない叫びは周りの雑音に掻き消されていく。
「翔輝どしたの?あぁ、今日遅刻して情緒不安定なのか。」
俺が睨むと、奴は同情したようにため息をついた。
「“新入生歓迎交流会”はこの後10時から行う。よって私たち2年1組は1年1組と交流を行う。くれぐれも先輩としての態度を考えろよ。」
ということは、あの子が1組じゃなければ鉢合わせは回避できるということか。
俺は神にも縋る思いで手を合わせ、擦り始めた。
俺の目の前には見覚えのある顔がある。
「奇遇ですね。せ〜んぱいっ」
俺はどんな顔をしていたのだろう。