第1話 恋人からでもいいですか?
突然出会った彼女とは?
翌る日、目を覚ますと昨日起きた時間よりも10分も遅いではないか。昨日の誓いはどこへやら。とにかく走るも虚しく、チャイムの音が響き渡る。俺はまだ校門も通ってないというのに。
「2年生生活、2日目から遅刻か。」
俺はトボトボと重い気持ちで歩いている。気晴らしに自販機で何か買ってから行くか。
自販機には俺以外に人がいた。背丈からして一年生だろうか。しかし、この時間に自販機にいるということは俺と同じ境遇のようだ。
「あれ先輩?あなたも遅刻したんですか?」
先輩?やっぱり一年生なのか。しかしどうして俺が先輩だと知っている。昨日で学年全員の顔を覚えた訳じゃなかろうし。
「なんで俺のことを知ってるんだ?」
“彼女”は自慢気に答えた。
「先輩、昨日も遅刻しそうになってたじゃないですか。あんなに目立ってたら誰でも顔覚えますよ。」
新入生は在校生より少し遅く登校する。彼女が遅刻しそうな俺を見ていても不思議ではない。だからって顔覚えるか?
「先輩、新学期から遅刻なんてイケナイヒトですね?私とお揃いです。ふふっ」
なんだこの後輩は!?俺は遅刻魔としてこの子にマーキングされたってことか?
「こう見えても好きで遅刻しているわけではないんだけどな。」
俺はそこらへんのコンクリブロックに腰掛け、落ちてきたコーヒーのキャップを外す。彼女はオレンジジュースを口につける。
「先輩は校舎入らなくていいんですか?」
「遅刻は遅刻だからな。授業に間に合えばいつ来ても変わらないと思ってる。」
「せんぱ〜い?澄まし顔してますけど内心焦ってるんじゃないですか?」
そりゃそうだろう。女の子とこんなに話すのなんていつぶりだろう。それも初対面だなんて。
「私と先輩は友達になれそうですね。」
おっと、いきなり上下関係ナシの関係か。それもそれでアリだな。
「私、でも、」
やっぱり、上下関係は必要か…
「友達ってどんな関係なのかイマイチわかんないんですっ!」
「へ…?」
ちょっと言ってることがわからないぞ。
「だから、私と先輩との関係、」
彼女は勢いよく吸い込んでこう言い放った。
「恋人からでもいいですかっ?」
俺はますます困惑した。




