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二章 想いの盲点

 

 冷蔵庫にはたくさんのものを詰めない。欲張るといいことがないとか、買物の荷物が重くなるのが嫌だとか、そういった理由ではない。保存の利くものか否かを問わず必要のないものを抱えきれないほど保有する行為に竹神(たけみ)謐納(ひつな)は関心がなかった。

 一人暮しの部屋。突然の引越しをするとしても棄てられるものしか置いていない。持ってゆくものは仕事道具でもある模造刀とやはり持てる程度の食品、それから、無形のもの。──父の存命に貢献できることや、父との行為そのものや、父から感じ取ることができる愛情に、申し訳ないほどの悦びを覚え、それさえあれば謐納はほかを棄ててもよい。

 最初は、自分が父を支えているという実感に過ぎなかった。父の提案の(もと)で魂器過負荷症を寛解し、失われそうな父の肉体を支えることができた、と。その〈寛解(かんかい)行為(こうい)〉を重ねるにつれて、姉妹が知らず母すら知らないだろう父を、謐納は目にするようになった。

 ドアポストの手紙を読んで外に出た謐納は父と合流して地下空洞へやってきた。寛解行為のためのこの密会は謐納を苦しめる。一方で、決して手放したくないひとときでもある。

「父上。今日も──」

「離れとってね」

 問の末尾を待たず。最奥に辿りついた父が行うのは謐納の渡した〈壊死治癒刀(えしちゆとう)〉での、自傷である。首が落ちるのではないかというほど深く斬りつけるにとどまらない。腹を突き刺して引き抜いた刃を、続けざまに腕・脚・手・頭・肩へと乱舞させた。一秒も掛けぬ刀捌き。動体視力が追いつかなければ自傷とも捉えられないその行為を謐納は幾度となく視てきた。これが、寛解行為の一つ。皆既月食のような血、その妖しい輝きの根源である魔力が父から失われる。無論そこには父の魔法技術がふんだんに使われている。本来は血を流しただけでは魔力を棄てられないが、魔力が持主に戻らないよう壊死治癒刀は体外に溢れた血から魔力を吸収できる。ただ、寛解行為を経ても父は何度も魂器過負荷症に襲われている。謐納以外は誰もそれを知らない。

 一部魔力を失ってそのぶん血も失った父が倒れる前に、謐納は背中を支えた。

「父上……」

「……捨て置きなさい」

 父の、いつもの乾いた言葉。

 人間は、体内の血液が半分ほど失われると失血死するとされている。父の体重から逆算して約二・四リットル前後の出血量で死亡する計算だ。それ以上の血液を失って苦しみながらも父は気を失うにとどまる。

 転げ落ちそうな刀を預かった謐納は、何度、父の胸を貫いたことか。父の魔法はこの壊死治癒刀に宿っており、血を失わせ魔力を削ることは謐納にもできるが父を殺すことはできない。死も寿命もないのだろう、と、推測できるものの父が死なない根本の理由を謐納は知らない。死なないひとが目の前に存在するという事実を知るのみだ。

 気を失った父を抱え、覗き込んで、謐納は彼の頰に雫を落とす。

「何故、父上ばかりが苦しみ(ながら)えねばなりませぬか」

 死は一つの救い。その答を、寛解行為に貢献するたび謐納は強く持っていった。

「死あらば、楽になれるというのに……」

 それが逃げであることを父は知っている。それが家族みんなの望みを裏切ることもまた知っている。だから謐納は、父の胸に突き立てた刀を引き抜いては泣き崩れるしかなかった。真綿で首を絞めるようなこんな鈍らではなく己を死に追いやることのできる凶刃を、父は造ることができるだろう。それができないのは、父が受動的で家族のおもいを裏切れないからである。そのことに漠然と気づいていながら、父の生存を大っぴらに望んでいる家族に、謐納は怒りを禁じ得ない。

 その怒りは、決して誰も幸せにしない。父の気持も裏切る。解っている。

 ……しかし、父上。わたしは、──。

 立ちどころに傷が癒えてしまう父の体を撫でながら、謐納は、口を一文字に結んだ。

 そのときであった。

「ヒツナ姉様」

「──おりましたか」

 謐納は気配を察していた。背後に歩み寄ったのは六女、妹の夜月(やづき)である。

「観てましたわ……。父様は、いつもあんなことをしてたんですの……」

 夜月は冷淡そうに観えてそのじつ激しやすい。謐納が心の内に潜めた怒りと近いものを、夜月はただちに表出させた。

「今すぐ殺すべきですわ。父様が、きっと望んでいる」

「……できかねまする」

「ワタシがやる」

 刀を奪い取ろうとした夜月の手を押し捉え、謐納は制した。

「っ、姉様、放して」

「できかねまする」

「二者択一。望む者達をやるしかないですわよ、いいんですの!」

「……なりませぬ。わたしは()を全力で妨げまする」

 父を地面に横たえた謐納は夜月の腕を摑み上げつつ立ち上がり、空いた手で魔法の刀を作り出して夜月の首に向けた。

「わたしの力は存じておりましょう。触れれば、ただで済みませぬ」

 生物に死を招く死属性魔力で形成された魔法刀(まほうとう)

「触れれば、ですわ」

「……」

 謐納が摑み上げていた腕を介して、夜月が鎮静の魔法で魔法刀を侵蝕して打ち消し、隙を衝くように謐納から離れた夜月が壊死治癒刀を逆手に握り、父の胸を目掛けて──。

 謐納は、あえて止めなかった。

 夜月が、謐納を振り向く。刃は宙を刺している。

「なぜ、止めないんですの……」

「幾度と試みました」

「っ、……知らず知らず手を抜いたんじゃありません」

「やるからには怠りませぬ。致命傷は一度や二度では済みませぬ」

「……馬鹿な……、まさか父様は、死ねないと」

「ゆえに無駄と。何をしようとも存えるほかない。父上が其を望み、家族も其を望んでおりましょう。事実、果てぬ以上、父上は其を本望と仰るでしょう」

「それを本望とは到底いえない……」

「されども父上は存えましょう。()がためとは申すまでもなきこと」

 沈黙が、耳を騒ぐ。

 地下空洞の静けさがうすら寒い。

「魂器過負荷症による炎上で肉体が焼失するというなら、焼き殺すというのはどうかしら」

「あなたが堪えられまするか」

「──。父様の魔力の前じゃ焼場の火力でも足りないわね」

 攻撃魔法を緩和するのと同じように、強い魔力を持つ者は自然からの影響も緩和するため、魔法で発生させたのでもない物理的な炎でも焼くことはできない。理論上、現在の父を焼失させられるのは父以上の魔力を持つモノに限られるのである。

「せめて荷を分散しましょ。ワタシが父様の魂器拡張をしますわ」

 謐納は言葉が出なかった。父がそれを望まないと答えれば噓ではなく、間違いでもなく、最も説得力があった。すぐ答えられない理由は、説得力の有無や正しさではなく、

 ……わたしの役割。

 父の寛解行為を一身に担うこと。付随する全ての悦びは──。

「姉様。自傷の手伝いなんて重すぎる……、一人で荷を負うことはありませんわよ」

「要らぬ世話です」

「なんですって」

「要らぬ世話と申しました」

 謐納は、冷静に夜月を見据えた。

「夜月。あなたは私欲に突き動かされておりますれば、荷を荷と思うておりますまい」

「ワタシがそんな馬鹿に観えた」

「あなたは噓が上手ですが、あなたの父上への好意は父上含め家族が知り置くこと」

 開き直りではなく、夜月が合理性を訴える。

()()を懸念してるんでしょう。火の粉を散らせたのが悪いんですわ」

 誰のこととは家族なら言わずとも解る。

「父様と似てますわね。気が多くて、そのくせどこへも気が深すぎて板挟みになってしまう」

「夜月は違うと」

「ワタシは父様以外の男を男と思ってませんから後悔の芽もなければ根すらない」

「根拠がありませぬ」

「契らせてももらえないのに根拠といわれても困りますわ」

 未来は不確定。ゆえに、謐納との寛解行為も切りつめた末に止むを得ず。父が苦しまずに済むよう謐納は余裕を持って行いたいと思っているがそれを許されたことはない。

 父が謐納を選んで寛解行為を提案したのは、寛解行為が可能な魔力を謐納が持っていたからでしかない。謐納以外の娘と寛解行為に及ばないのは、後悔した娘が確かにいたからだった。

 ──真の人柱は、謐納やね。

 人柱。その言葉の響きはともかく謐納は嬉しかった。父の望む状況に荷担できる、と。父の役に立ちたくて武術を学んでいたからその心が役に立つならいくらでも奉ずる覚悟であった。父の先の言葉をもらい、父の数少ない本音を聞くことができた。それ以上の悦びがあろうか。好意を寄せる男性が未来永劫現れないとも限らず後悔する日が訪れるのだとしても謐納は今、誰より、もしかすると母より、幸せかも知れない。

 父の存命によって家族には既に貢献している。夜月が現状に満足すべきなのだ、と、謐納は考えている。

「現に後悔した者がおりまする。父上は姿勢を曲げぬでしょう」

「じゃあ、どうしろっていうんですの」

 刀を地面に突き立てた夜月が胡座を搔いて項垂れた。

「夜月。はしたのうございまする」

「父様だってこうやって座るじゃない」

「殿方の特権です」

「ふぅ」

 膝立ちする夜月。「父様のことですけど、姉様方には言ってないですわよね」

「とりわけ母上には申せませぬ。卒倒してしまわれましょう」

「その程度で済むなら誇大表現で伝えてやりますわ」

 赤血球やヘモグロビンが染みついたのだろうか赤黒い地下空洞を仰ぎ見て夜月が溜息のように、「父様が隠したがってるんですわね」

「いかにも」

「さっきの手伝い、ヒツナ姉様はいつから」

「明確には。刀を扱うわたしが傍につくよう仰せ付かりました」

「憶えてないくらい前から……。魔力を棄てるためとはいえ、」

 夜月が膝をずっと押さえているのは、慄えている。「あんな惨たらしい真似を、隠れて、いったいどれだけ」

 謐納は正座して、父の胸に手を置いた。トクン、トクン──、力強い脈を感ずる。

「数えきれぬほど。察しの通り、父上が箝口結舌を下されました」

 夜月の爪先で弄ばれた小石が時折囁いた。

「父様、ちゃんと起きますの」

「脈はしっかと。都度覚め本邸に帰られまする」

 家族が寝静まった深夜である。

「コンタクトは。ヒツナ姉様、父様とはどうやって」

「文を賜りまする」

「慌てて外に飛び出したのはそういうことですの」

(きょ)からつけておったわけですか」

「ヒツナ姉様、何か隠し事をしてるような気がしたので」

 鋭い。が、委細を知るに至っていないようで、夜月が深い溜息。「こんな父様の姿を観ていたのでは言いたくても言えませんわね。姉様方ならともかくナユキ達には刺激が強すぎる」

「あなたにもです」

「……」

 慄えの止まらない夜月である。

 ……、……。

 謐納は、夜月を窺う。「血は初めてですか」

「ヒツナ姉様は。あれは慣れるというものでもないんじゃなくて」

「……いかにも」

 何度見ても慣れない。感情を押し殺して、父の生存意志を確かめるように、現実を吞み込むように、ただただ見つめている。最初は夜月のように慄え上がった。謐納も普通の子だった。一線を越えて、鈍くなり、柔軟になった。

「父様に言ってこれからは同席しようかしら」

「邪魔やから帰れ」

「『!』」

 突然に父の声。謐納と夜月はびくっとした。

「父様、起きてたんですの。盗み聞きはよくないですわよ」

「寝とる横で長長と話しとってその言い草は道理が通らんのやない」

「……邪魔とは。同席を拒みますの」

「夜月、次ここに来たら記憶を消すよ」

 瞼を閉じたまま刀の柄を握って立ち上がった父が、真円の口を開いた異空間隣空間(サブスクエア)に壊死治癒刀をしまった。

「穏やかじゃないですわね。今回は見逃してくれるんですの」

「他言無用。やめる理由がないし、要らん心配を掛けたくはないんよ」

「血を流して魔力を損失するだなんて気が狂ってる。別の、穏便な手段をみんなで考えてみるべきじゃありませんの」

 夜月の意見は至極まっとう。夜月の立場なら謐納も同じ提案をしただろう。父が拒否することを承知で。

「さっきのは末期を遅らせる最終手段なんよ。理解して」

「そんな……」

 父が母とのあいだに作った子どもに、悪魔の手段以外で魂器拡張を成し得る特異能力を有する子が生まれるはずだった。父はなんとか八人まで子を作ったが、魂器拡張を成せる特異能力は発掘できなかった。謐納との寛解行為では足りないほど膨大で成長の速い魔力を抱えて、父は焦燥しながらも改めて魂器拡張の特異能力について調べた。その結果、己の魂に魂器拡張を成す力がそもそもなかったことを知ってしまった。つまり父は、ないものを発掘するために己の魂を削ってまで子どもを作るだけでなく、人柱まで立ててしまった──。父の葛藤は終わらないだろう。家族はいずれも父の生存を求めたのである。父は自傷で死ねないが魂器過負荷症で肉体が燃え尽きれば無抵抗となった魂が自然魔力に冒されて滅び得る。家族の望みに応えて肉体を維持して生きるほか道がない。

 謐納は謂わば二人目の人柱だ。白羽の矢が立ったのは寛解行為に強い作用を発揮する死属性魔力を宿して生まれた。名を捉えれば逆効果のようだが死属性魔力は不義・運命・緊縛などを司り、一種ひとの道を外れてこの世に身を縛り置くことに長ける魔力なのである。それゆえに悪魔も死属性魔力を生来宿しておりしぶとく生き残るとは余談。謐納の死属性魔力を宿した壊死治癒刀は体外に流れた血から〈魔力還元(まりょくかんげん)法則(ほうそく)〉によって体内へ戻ろうとする魔力を制して放出させることができる。加えて、父は主に謐納の死属性魔力を活用して、壊死治癒刀に己の個体魔力を吸収させて切り離すことで、魂器過負荷症を寛解しているのである。

 魔法については謐納より勉強熱心な夜月が、推測して父に尋ねる。

「さっき刀を触れたとき姉様の魔力を感じた。姉様を同席させてるのは自傷に必要ですのね。父様の魔法技術で刀に姉様の魔力を宿して、何かの魔法を発動させてるんでしょう。一二英雄も使ってた魔法剣(まほうけん)みたいな〈装飾(そうしょく)魔法(まほう)〉か〈武装(ぶそう)魔法(まほう)〉ってところかしらね」

「そこまで察しとるならいうまでもないやろうけど、刀は謐納との合作。謐納の持つ魔力で個体魔力の放出を助ける仕組でね、痛いのは嫌いやから謐納同席で円滑に進めとるわけやよ」

「刀に宿した分では魔力が弱いということですわね」

「謐納が近くにおってくれれば刀に新たな魔力を送り込めて、刀の魔力が謐納に還元されても補充し直せるから、ってのが正しい。簡単にいえば手入れやな。謐納の魔力が宿っとることが前提の自傷やからそれがなかったらただ痛いだけ。そんなのは勘弁願いたいんよ」

「納得ですわ」

 と、うなづくも、夜月が諦めていない。「ワタシも同席してはゆけませんの」

「駄目に決まっとるやろ」

 父が間髪を容れず反対した。「場所を考えろ。ひとの出入りの少ない地下空洞を選んどるのは見咎められるといろいろメンドーってだけじゃなく、放出しとる魔力を略奪されんようにする意図もあれば、夜月みたいな月属性魔力を持つもんが入り込んで謐納の魔力効果を鎮静されでもしたら流血損って心配もあるんやよ」

 とどのつまり特に夜月を同席させるのがまずいのである。

「ワタシ、節操もなく鎮静したりしませんわよ」

「集束せんでも魔力はそれ単体で作用することが大いにあることくらい学んどろうに。要は、最初いったことに帰結する。『邪魔やから帰れ』」

「うむ……」

 納得しがたそうな夜月に、父が追打ちを掛ける。

「一三歳の娘が深夜に出歩いとるだけでも雷を落としたい」

「っ」

「今なら見逃したる、とも、言っとるよ」

 突風に立ち竦んだ幼子のような夜月に、父が手を差し伸べた。「ほら、送ったるから帰りんさい」

「う……」

 夜月が俯き、父の手を取った。「解りましたわ……」

「いい子やね。帰ったらちゃんとお風呂入って土を落としぃ。膝もケアしなさいね」

「いわれなくても。ワタシの美しい肌を待ってるひとは山程ですから」

「結構。謐納、お前さんも行こう」

「はい」

 姉妹は父と手を繫いで外を歩いた。

 ……父上は、いずくまで察しておられまする。

 父は夜月の尾行に気づいていただろう。すると、自傷行為を夜月が知ってもいいと考えていたことになる。父が何を考えているか謐納は読めないが、一つ判った。

 夜月を家に送り届けて父と二人きりになると、謐納は確信と疑問をぶつけた。

「父上は夜月を必要としていらっしゃると推測しましたが、真偽やいかに」

「必要というならみんなが必要やよ。誰一人、欠けてほしくない」

「……、悦ばしいのですが、左様な意味でなく」

「謐納」

 手を握って歩いてくれる父だが、謐納が想いを告げようとすると決まって冷たくなる。「肉体関係があっても恋仲とは違う。父親を男と観るのは絶対にやめろ」

「……心を許せぬひとに体を許すようなあばずれではありませぬ」

「賢いね。けど、こればかりは賢さじゃなく、感情の問題なんよ」

 ……重重、承知です──。

「謐納は娘やよ」

「……一思いに、わたしを除けてやっていただけませぬか」

「つらいもんね」

 星降る夜は、凍えるよう。

「謐納がつらいのは俺もつらい。やから、ある意味ご褒美をあげとるとしかいいようがない」

「壊死治癒刀を授けてくださったことですか」

「俺が使う命に関わる魔法には制約が掛かっとるって話はしたやろ。自傷には俺の魔法と同時に謐納の魔法も関わっとるから、謐納の魔力の供給・維持以前に、俺の生存を望む謐納の心が求められるんよ」

 だから、父の魔力放出に謐納の同席が不可欠なのである。先程夜月に話した魔法理論以前にそれが大事だ。

「わたしとの寛解行為以前に魂器過負荷症が一度も再発しておられなかったとは思えませぬ。いかに対処を」

「今とほぼ同じやよ。魔力還元の法則を崩せんかったから効率が悪かった。音羅達に隠すのは大変やったよ」

「隠さなければ……、などと申し上げたところで父上はお耳を貸しませんか。皆の、父上生存の望みを魂器拡張に役立てられますれば最良でしょう」

「できるんならやっとるよ」

 家族の願いをそのまま形にできる夢のような魔法があれば全て丸く治まっていた。願って全てが叶うなら、この世に苦悩は存在しない。

 父は非効率的な自傷を繰り返し、謐納の願いを叶えている。無論、みんなの本望を絡めた実益がなければ、父は謐納の願いに応えない。

「わたしは父上と()()()()()、心底、幸せです」

 一般には理解されまい。倫理や、あるいは罪にも問われよう。が、感情の問題。思いもよらない感情を誰もが持ち得る。謐納に取ってはそれが、父への感情だった。それだけのことだ。

「そう」

 と、父が言って、手を放すことはせず突き放す。「そんな娘は大嫌いやよ」

「……構いませぬ。想いを貫けさえすれば」

「一途か素直かヤンデレか」

「やんでれとは」

「思わず出たツッコミやから意味が解らんなら忘れていいよ」

「そう、ですか……」

 家に着くと、父が頭を撫でてくれた。拒絶感のない優しさに満ちた背を、見送った。

 家に入り、温かいお風呂に入って肌を撫でると、父の息遣いを思い出して胸が高鳴った。

「……」

 父は、天才と称せられていた。その才覚は恐らく己をマインドコントロールに掛けることにすら及んでいるのだと謐納は考えている。例えば、一定の所作をこなすことでひとはポテンシャル維持が可能で、謐納は深呼吸をすることで平常心のまま試合に臨むことができた。同じルーティンで自傷できるとはとても思えないが、一定の覚悟が必要な寛解行為に及ぶとき、父は息を鋭く吐くことをしているようだった。

 覚悟を決めているからだけでもないだろうが、寛解行為に及ぶ父はいつもの父とは明らかに違う。とても優しい表情で謐納を労わる。間違っても突き放すようなことは言わない。

 ……父上はまことに優しい。そして、極めて受動的だ。

 謐納の嫌がることをせず、謐納の望んでいることを聞くまでもなく叶えてくれる。隅隅まで余すことなく丁寧に愛して、みずみずしい愛情と底のない愛情とでどこまでも深く包み込んでくれる。ほかの姉妹がそんな父と契ったら、別の男性との感情で迷ったり苦しんだり後悔したりしないだろう。それほどまでに父との寛解行為は謐納の心を絆しているのである。

 父はそれを判っているから、謐納以外の娘と寛解行為に及ぼうとしないのかも知れない。

 ──謐納が謐納でなければ、俺は自滅した。

 魂器過負荷症に苦しめられ、死に至ってもよかったと父は思っている。それに至らないのは謐納が自分以外に好意をいだかないと父が判断できたからで、現状の結果論でしかない。必要性と相反して父は謐納との寛解行為に前のめりではない。謐納はそんな父にいつも言うのだ。みんなの望みです、と。そこには謐納の想いも含まれており、父は断れない。

 他者のあらゆるおもいを酌んで報いるための究極的な受動体質。

 それが父を苦しめていると謐納は知りながら、先の言葉を投げている。父も当然謐納の内心を知っているだろうが、変わらない体質が受け入れてしまう。

 ……罪は、罪を連鎖させていく。

 父が決定的に自分を突き放すことはない。謐納はその安心感を得ている。幸せといえば幸せであるが、父の体質を利用しているから謐納は己を律しなければならない。

 ……求むのみでは誤りであろう。

 父に似た無表情が、湯に映ると緩んで観えた。顔を引き締めて、湯船を出た。

 ……果報を待つ自分を好けぬ。

 想いは巡ってこそ価値あるもの。与えられたものを何倍にもして与える。難しくても、それをできるように頑張らなくては。父が褒美などという言葉を使わずに済むよう普通かつ確実に支えること。謐納の目標はそれだ。

 湯を上がった謐納は一糸纏わず、髪を拭いながら、冷蔵庫から取り出した水を口に含み、

 ……、……何か、来た。

 大気の変化を魔力で感じ取った。変化は部屋のみならず、ここ田創(たつくり)(ちょう)全域の大気を揺らすようなものでありながら、常人には捉えられないごく微弱なもの。

 ……魔物か悪魔が入り込んだか。

 死属性魔力を持っている点で悪魔と捉えてもいい。が、悪魔なら蛇行的に飛行することが知られている。移動が直線的で高速だったので形は定かでないが、恐らく翼を有さない魔物が飛来したのだろう。死属性魔力を持つことは希しいということもないが違和感が残る。

(父上)

 と、呼びかけたつもりでいると、

(なんか来たね)

 と、伝心の魔法ですぐに応答があった。(魔物や魔獣(まじゅう)というには変やね)

 大気の揺らぎを父も感じ取っていた。

 謐納はペットボトルをテーブルに置いて、外を窺う。

(個体魔力が弱い。さあらば町に入れぬはずです)

 ダゼダダ中央県を聖域としている聖起源が魔物の侵入を妨げている。聖起源の存在は知らずとも、弱い魔物が聖域に入ってこられないことくらいは誰もが知っている。

(謐納が生まれる前テラノアが放った穢れの熱源体で魔物が新生して入り込んだが、聖域外から入り込むのは普通ならあり得んな)

 無理やり投げ込んだとしても普通は魔物が逃げ出す。聖域内だと魔物は力が減衰して身動きが取りづらくなり、討伐されやすく生存が難しいからである。目の前に無抵抗な者がいるなら魔力を奪うため捕食する可能性があるので注意するに越したことはない。

(個体魔力の弱さは偽装と。魔物の中でも魔力の強い魔獣と仮に扱いまして、父上、魔獣はいずくへ。圏外へ移動されたか、探知できませぬ)

(魔力を潜めたんやろう)

(父上やわたしのように。もはや魔獣の域を超えておりまする)

(魔物を甘く観るもんじゃないけど、魔力を潜められる個体は俺も初めて認識したよ)

 魔物や魔獣と表することを変としたのは、経験豊富な父が初めてのことゆえ。と、なると、人類全体でもかなり稀有なことだろう。

(敵性、でしょうか)

(魔力を潜められることでもって相応の知性もあると観るなら、無駄に事を構えようとする必要もないんやないかね)

(のんきです)

(敵性と判ったら対処すればいい。事を荒立てたいもんばっかとは思わんよ)

 それは人間相手の考え方ではないか。

 捉えたのが一瞬のこととは言え移動速度は時速数百キロメートルだった。そんな勢いで聖域に侵入しておいて敵意がない者がいるだろうか。

(俺も国外から中央県にマッハで帰ってきたことがあるが、ダゼダダに敵対したいわけじゃなかったな)

(魔物と等しいなどと主張しないでください)

(化物やし似たようなもんやろ)

(また左様なことを)

 父は事あるごとに自分が異質なモノであると言う。謐納にしてみれば父は父。どう観たって魔物とは異なる。

(ともかくよ、謐納。警戒は俺がしといたるから、今日はゆっくりお休みなさい)

(御身に大事ありませぬか)

(お蔭でね)

 自傷による非効率的な魔力放出と壊死治癒刀による効率的な個体魔力の切離し。ダブルで対策した直後とあって体調は良好のようだが。

(右手は。変らず神経を再構築しておらぬのでしょう)

 父が刀を握るのは左手。謐納が生まれる前に負った怪我で不自由になっているという右手ではあれほどの刀捌きは難しいだろう。

(でもまあ、戦う前提でもないし、糸主が世話を焼いてくれるからね)

 父と一緒に暮らしている分祀精霊の糸主は、不自由な右手の動きをサポートしてくれているそうである。

(右手の不自由は人間性ってことで)

(其のみ人間性を保たれる)

(少なくなるとなんでも手放しがたくなるね)

(わたしは父上の人間性を平生(へいぜい)に感じておりまする。万一に備えて万全にすべきかと)

(お気遣い感謝)

 気遣いではない。

(わたしはただ──)

(お、家についた。もらったものはゆっくりいただきます。おやすみなさい)

 都合のいいタイミングで伝心が途絶えた。歩きでサンプルテに着くには早い時間だ。

 ……しかし、仰せの通りですね。

 深夜二時を過ぎている。明日も仕事がある。

 ……父上。

 自身の祝い事を嫌う父が唯一贈り物を受け取ってくれるユガの祝日。寛解行為の前、謐納はチョコレートを父に渡した。父がこれからも生き存えてくれるようにと密かな願いを込めて。

 ……わたしはわたしで、しっかと立たねば。

 日日の生活を心配させては、支えるどころではない。

 布団に滑り込んだ謐納は、心地よい疲労感に引き込まれるようにして眠りに落ちた。

 

 

「チョコレートですか」

 と、ララナは尋ねた。深夜のテーブル。突っ伏したオトの手許に小さな箱があった。

「起こして悪かった」

 関係のない応答をするオトを()つつ、ララナは自分の席についた。

「謐納ちゃんからですね。包み紙が特徴的です」

 チョコレート自体は市販品のようだが包装紙にはダゼダダの伝統工芸品の一つに数えられる透けるような薄さの〈清流(せいりゅう)和紙(わし)〉が使われている。自覚は薄いようだが愛情深い謐納であるから、チョコレートを手作りできない分、自分で包んだのだろう。

「寛解を講じてきた」

「はい」

 壊死治癒刀による寛解行為を自分しか知らないと謐納は思っているようだが、ララナはオトから逐一報告を受けている。それを娘に黙っていることやその理由についても聞いている。苦しみが伴うが謐納の人生に必要なことを──。

「咎めなさいよ」

「今は建前に意味がないかと」

「変らず馬鹿まじめやな」

「オト様も変らずいらっしゃります」

 ララナは正直に気持を伝えることにしている。「私が目を覚ましたのはオト様が帰宅される前のことです」

「感じ取ったん」

「魔物ですね。すぐに反応が消えたので、主神に匹敵する実力者と考えております」

「ここ四七年はのんびりできたんやけど、騒がしくなりそうやね」

「四七年でしょうか」

 ララナはオトに問いかけるが、「いいえ、もう済んだことなので(こたえ)は必要ございません」

 年長三姉妹が就職する前、謎の結界から脱出して右手に怪我を負ったあの頃から特に動いていないとオトが話したことに、ララナは強い違和感を覚えた。出逢った当時に比べれば隠し事が少ない彼だが、隠していることも確実にあるだろう。

 オトが、「へぇ」と、感心。

「なんか気づいたん」

「あれほど戦争の機運が高まりながら何も起きなかった。それをもって」

「確証はないわけやね」

「確証がございますか」

「拾えるもんはないやろうな。実行犯以外」

 三大国間の緊張が増していた四七年前、テラノアが終末の咆哮を起動したことでダゼダダは軍事攻撃を受けたといえる。が、()()()戦闘・戦争には発展していない。

「あえて挙げますと、テラノアで国王継承の儀が起き政策転換があったこと、レフュラルで王子らを中核メンバとした自然エネルギ推進運動が発生したこと、ダゼダダで砂漠県緑化運動が加速したこと、それらが、各国政治中枢が国内へ注意を向けるきっかけとなり、戦争に踏みきれなかったのでしょう」

「テラノアは後継が農業を推し進めて食糧問題の解決を図るとともに生活水準向上と安定化を実現、軍備拡張の皺寄せを被っとった国民の生活苦が解消された。レフュラルでは自然エネルギ発電が主流になると魔導電力の脱却で一時生活水準が下がった反面、自然崇拝の観念が広がってそれまでにない心の自由と豊かさを手にした。ダゼダダはもとから戦争反対の穏健思想が大勢やから、砂漠の緑化が進んで砂漠県や外周県の活用が見込め、GDPが上昇、貧民減少の一助にもなって犯罪件数や自殺者数が減った」

「かつての一二英雄の旅路のようにうまく行きすぎています。どなたの思惑でしょう」

「俺はニュース番組を観とっただけやよ」

 確かに。四七年間でオトが家を空けていた時間はわずかである。そのわずかな時間だって家族の誰かと一緒にいることがほとんどであった。ダゼダダ国内はまだしも国外への働きかけに尽力したというにはあまりに時間が足りない。既に割れている分身の駆使など、手段は容易に想像がつくのにそれを彼が認めない。

「牙やら爪やらが腐り落ちるまでぐんにゃり眠れりゃそれがいい」

「神界移住計画も大詰めですからね」

「概ね後処理だけやもんね」

 すっかり古くなったサンプルテを引き払う準備と引越し先の神界を娘に伝えること。それが済めば神界に移住できる。

 さまざまな条件に適ったフリアーテノアを発見、原住民であるモカ村民に移住の承諾を得るのは地道な交渉が必要であった。それが済むと肝心の住居の話に移ったが、大家族用の三階建てを建てるとなると原住民との交渉が振出しに戻って──、一進一退を繰り返して、ようやく年末、移住先の環境が整った。

「後処理……、一つ増えそうですね」

「増えんことを願うわ」

 カーテンを閉めきった暗がりのダイニングは、夜に凍えるようである。

「オト様、横になりませんか」

「先にお休みなさい」

「……一緒はお嫌ですか」

「……」

 オトが顔を上げて、久しく見せた微笑で応えた。「俺達はとうの昔に一連托生なんやから」

「……はい」

 傷つけ合っても、苦しめ合っても、離れることのない関係。否、そんなマイナスの体感のみではなく、互いのおもいに応えて添い遂げる関係だ。

「こちらをお掛けくださりませ」

 隣空間から取り出した毛布をオトの肩に掛けてララナはお辞儀、「おやすみなさいませ」

「ん、おやすみ」

 音羅と納雪を起こさないように寝室へ戻り、オトの微笑を思い起こして横になるとララナはすっと眠れた。

 彼とおもいを同じくして揺るがない──。

 

 

 数十年前、移住先を探すため、分身のオトは神界を飛び回っていた。移住先候補の多くは、〈記憶(きおく)砂漠(さばく)〉と称した幼い頃に手にした全ての世界・生物の記憶・知識から割り出した。が、記憶の砂漠に古い情報が多いことを再確認することとなった。視察してみると閉鎖性が過剰で最低限の柔軟性に欠けて移住の余地がなかったり、都市化して文化が様変りしていたり、そもそも消滅していたり、などなど、候補から外すべき場所がかなりの数に上ったのである。

 移住の条件に合う村落あるいは町が消滅したのであれば新しく作ればいい、と、一瞬思ったが、安易な思いつきとして却下した。新たに生まれる子がいた場合に、原住民と過ごして得られる協調性であったり寛容性であったり古い文化への関心・興味や対人関係を学ぶ機会の一切がなくなってしまうことを考えると、条件がより多く、より厳しいものになっていた。その中でも大きな問題だったのは、魂器過負荷症の寛解行為を万一にも子と講ずることになった場合に、子が他人に傷つけられることのない環境を保っている場所、と、いう点だ。音羅、納月、子欄は「竹神音の娘」に生まれただけで奇異の目に曝される可能性を常に抱えており事実そうなってしまったことがあったから、せめて、子がその子自身で選んだ道で正当に評価される環境を与えたかったのである。

 フリアーテノアのモカ村を発見し、村や周辺環境の情報を集める傍ら、ほかにいくつも候補を調査していたが保険的な場所の確保は難しそうだった。

「よっ」

 と、手を振ったのは、話すのが二回目となる女性。場所は神界ジュピタの空間転移室、大昔に設置された空間転移魔導機構の円形の台座から降りてすぐの地面に佇んでいる。機械が異質感を醸し出しながらもなんとなく気持のいい空間になっているのは、蔓状植物が機械を覆い尽くしているからだけでなく、その女性が明るく笑っている。

「クルミチさんか」

「クルミ・クルミチ。あんたはオト・タケミだっけ。情報交換した仲だし呼捨てでいいわよ」

 神界と神界のあいだでも距離や性質によって空間転移できないところが存在する。そんな神界同士の空間転移が自由にできるのは特別な性質を有する神界のみ。ここ神界ジュピタがその一つで、それゆえに他神界を渡り歩くような者とは稀に擦れ違う。彼女との初見もここであったが、気さくなクルミのほうから移住先候補の情報を提供してくれた。残念ながらその候補は却下して終わったが、オトは代金として彼女のほしがった名物や文化の情報を渡した。

「あれから名物にはありつけたかね」

「ばっちり。あんたの教えてくれたフリアーテノアのテラウス・ニーズ名物〈夏辻(なつじ)パイ〉、見た目が見事にウケたわ」

 流通拠点テラウス・ニーズの辻道と辻馬車を再現したパイは、足を運んだことのないひとにも現地の活気を伝えてくれる。巨大ジオラマのようなインパクトがあり、食品とは思えない緻密な造形から相応に値が張るがクルミは迷わず買ったようである。

「味はどうやった」

「大きな神界に比べるとうちと同じで発展途上の神界だから仕方なく普通ね。ただ、見た目も味の内だし、土産物としてはほかにないレベルに感じたわ」

「今日は主神ジュピタに用でもあったん」

「ううん、たぶんあんたと同じでハブとして通っただけ。まだまだ旅の最中だから」

 神界クルミチの主神だというクルミだが、治める神界が小さく時間が有り余っているそうである。神界を発展させるため他神界の名物や文化を取り入れようとしているとのことで、部下に統治業務を任せて旅を続けている。

「またいいもんが見つかるといいね」

「あんたは調子悪そうだけど、芳しくないわけ」

「結界に閉じ込められたり、家族が危ない目に遭ったり、移住先に保険が掛けられん状態にあったり、で、まあまあ大変やな」

「表情以上に大変そうね。顔色は魔法の使いすぎ、精神力欠乏よね」

「そんなとこ」

「たださえ人間なんでしょ。ちっちゃい辺境神界の主神のあたしが言っても説得力ないけど、弱ってる奴は狙われるのが世の常。元気に振る舞ってたほうが安全よ」

 オトは身をもって知っていることだが善意の忠告を突っ撥ねない。家族を守るには、耳に痛いことも取り入れて着実に歩むべきだ。

「せやな、無表情に徹するわ」

「無理すると却って不自然だからそれでいいわ。と、あたしの行先に合わせてくれたみたい」

 と、クルミが操作板脇の神の合図に手を振って応えた。前の使用者と転移先座標が異なる場合、座標設定を調整する必要がある。調整を待っていたクルミは早速円形の台座に上がって、

「時間の流れに飛び込まないなんてあたしには向いてないから、そろそろ行くわ。また会ったときのためにお土産話よろしく」

 と、ウィンクして紫色の帯状魔力に包まれて消えた。

「元気なひとやな」

 弱り目に祟り目という言葉はあるので、オトは有言実行、次なる神界を目指す。

「ようやくテラノアも安定しそうやしな──」

 三〇二七年四月二五日の金曜日、惑星アースの平穏がすぐそこにやってきている。

 世界平和。それは、オトの夢の一つだった。

 自分の眼でそれを確認したいから、二度と付け入られないようにしなければならない。

 

 

 

──二章 終──

 

 

 

 

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