見られたくない自分が本当の自分
前回までのあらすじ
飛月の作戦によって体調を崩した
愛南を自宅へと連れて行くことで
愛南の部屋に侵入を成功する
意外にも可愛い部屋に驚いていると
愛南の目が覚める
「あれ、ここは?」
「おっ、気がついたか? ここは愛南の部屋だ。授業中に倒れたから運んできた」
「愛南の部屋? 愛南の部屋に王真君? ……ひゃっ!?」
なにかに気づいたように驚いたような声をあげ上体を起こし、俺のほうを見て何度も瞬きをしている。
「愛南? どうかしたのか、どこか痛いとこでも――」
「み、見ないで!」
「え、なにを!?」
「わたしの部屋を見ないで!!」
赤くになった顔を押さえながら恥ずかしそうに懇願してくる。
状況から考えるにどうやら、愛南は自分の部屋を俺に見せたくなかったようなんだが、そんなことを今更言われたところで、どうしようもない。そりゃあ、クローゼットの中を見たりはしてないけど、目に見えるところに置かれている物は概ね見てしまっている。
「見るなって言われればなるべく見ないようするけど、俺が愛南をこの部屋のベッドに運んだのは1時間くらい前なんだよ、だから今更そんなことを言われても――」
手遅れだと言うことをさりげなく伝えると、両手で隠された真っ赤な顔をブンブンと左右に振った。
「そ、そんな、見られちゃったなんて、なんでお母さんは止めてくれなかったの」
「いや、そのお母さんが案内してくれたんだが?」
「お母さんの馬鹿ぁ」
嘆きに近いその言葉を聞いて違和感を覚えたので確認を取ってみる。
「なぁ、愛南って普段は母親のことを『ママ』って呼んでるんじゃないのか?」
それを聞いた愛南は固まってしまい数秒微動だにしなかったが、瞳を潤ませながら俺のほうへぎこちなく顔を向けた。
「な、なんで、そのことを知ってるの? お母さんから聞いたの?」
「いや、愛南が寝言って言うか、うわ言で『ママ、パパ』って呼んでたから、ああ、他にも自分のことを『愛南』って名前で呼んでたな」
唇がワナワナと震え始めた愛南はすぐに頭から布団を被り、布団に包まり、閉じこもる。
「あ、愛南? どうかしたのか?」
「む、無理、恥ずかしくて死んじゃう」
「恥ずかしい? もしかして、両親の呼び方のことか? それとも普段は自分のことを名前で呼んでることか?」
「……どっちもだけどそれだけじゃなくてこの部屋のことも」
「ん? 俺には愛南がなんでそんなに恥ずかしがってんのかがわからないんだが?」
「だって、こんなわたしがこんな少女趣味の部屋に住んでいて、親のことを『ママ、パパ』って呼んでいて、自分のことを『愛南』って呼んでいることがバレたんだよ? 今まで誰にもバレないようにしてきたのに……、こんなのみんなに知られたら笑われちゃうよぉ」
「ああ、そういうこと、(理由はわかったけど、気持ちはよくわからないな、俺が男だからか? それとも魔族だからなのか?)だけど、それって、俺が誰にも言わなければいいだけなんじゃないのか?」
「えっ、このこと内緒にしてくれるの? ……本当?」
愛南は布団から顔だけを出して、潤んだ瞳で俺を見てくる。
「ああ、別に言いふらすことでもないし」
「で、でも、王真君は? わたしのこといつまでも少女趣味が抜けない可哀想な人だって思わなかった?」
「思わなかったけど? (つうか、そもそも少女趣味ってなんだ?)」
「う、嘘だよ、王真君は優しいからわたしに――愛南に気を使っているんでしょ? 本当は『そんな見た目をしてる癖にこんな中学生でもギリギリな部屋に住んでるなんて恥ずかしい奴』って思ったんでしょ。いいよ、愛南だってわかってるもん、愛南にこんな可愛いぬいぐるみとかピンク色とかが似合わないことだって、ちゃんとわかってるんだもん!」
瞳により一層涙を貯めながら自暴自棄ぎみにそう言う愛南の姿には、学校での品行方正で大人顔負けの気品があると言われている愛南の面影はない。
どうやら、これが本当の愛南の姿らしい。
可愛いぬいぐるみやピンク色が好きで両親のことを『ママ、パパ』と呼び、自分のことを『愛南』と呼ぶこの姿が本当の愛南と言うことらしく、愛南自身はこの姿は恥ずかしいから見られたくなくて必死に隠していたようだ。
「それじゃあ、お互いラッキーだったな」
「……えっ?」
「俺は愛南のそんな姿を見ても笑ったり可哀想に思ったりしないし誰にも言わない、隠してたこの趣味を俺にだけ見られたことが愛南にとってのラッキー。誰にもバラしたくない趣味、誰も知らない愛南の一面を見れたことが俺にとってのラッキー。つまりな、俺はお前のことを知れてよかったし、愛南は趣味を見られたのが俺でよかったなって話」
「ううぅ、そうかもだけど、出来れば王真君にも知られたくなかったんだよぉ」
「まぁ、そう言わず俺のことを信じてほしい」
「……わかった、王真君のこと信じるよ」
「――そうか、愛南の体調も少しはよくなったみたいだし、俺はそろそろ行くから」
「うん、色々ありがとう」
元気の無い愛南を残して部屋を出て、近くで壁に寄りかかり立っていた飛月と共に階段を降り、1階にいる愛南の母親に挨拶をして外に出た。
「にに様――」
「わかってる、好感度メーターが上がってないんだろ?」
「……鈍感の癖によくわかりましたね」
「さすがにわかるっての、あいつ俺のことを全然信用してなかった。あのセリフ(王真君のことを信じるよ)だって半ば諦め気味に言ってたからな、(あそこまで俺の言葉を信じないのには理由がありそうだが……)とりあえず今の愛南には言葉じゃ思いが伝わらない」
「それではどうするのですか?」
「考えはある、まずは必要な物を揃えないといけないが、とりあえずは学校に戻って授業を終えてからだな」
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