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愛南の謎、可愛らしい部屋

前回までのあらすじ

愛南の様子がおかしいことに気づく

日和が王真に弁当を作ってきていることに

飛月が気づき渡しやすい状況を作る

日和の手作りカレーを食べた後

午後の授業で愛南が突然倒れてしまう


「水無瀬さん、大丈夫!?」

 授業の担当だった高橋先生が驚いた声をあげると、誰よりも早く飛月の奴が愛南に駆け寄り、愛南の容態を確認する。

「随分と熱があるようですが、どうやらただ風邪のようですね」

「そ、そう、それじゃあ水無瀬さんを保健室に――」

「いえ、ただの風邪とは言え、気を失うほどの高熱ですから保健室に連れていくより、このまま自宅に帰したほうがいいと思います」

「そ、そうなの? それじゃあ、そうね、ご両親に――」

「水無瀬さんのご両親はお2人とも働かれていますから今から連絡してもすぐには来られないと思います、なので水無瀬さんを自宅に運ぶのは私に任せてもらえないでしょうか?」

「えっ、でも――」

「実は、水無瀬さんが風邪を引いてしまったのは私が原因かもしれないのです。ですからこれは私がやらなければならないのです」

 動揺している先生に思考する隙を与えないように飛月は矢継ぎ早に提案する。これだけの台詞がスラスラと出てくるところを見るとこの状況は飛月の作戦の内のようだ。

「そ、そうなんですか? でも、雉さん1人で水無瀬さんを担ぐのは――」

「心配ありません、距離もそう遠くはないですし、にに様と2人で運びますので」

「(飛月の奴何を考えてるんだ?)……わかったよ」

 2人の会話の中に突然俺の名前が出てきて困惑したが、結局その場の雰囲気と流れには逆らえず、俺と飛月が愛南を家まで送ることになった。

「つうか、結局俺1人で愛南を運んでんじゃねえか!」

 愛南を背に担ぎ、愛南の家までの道のりを歩きながらそう抗議する。

 学校を出るところまでは飛月と2人で愛南の肩を担ぐ形で歩いていたんだが、現在は俺1人が水無瀬を背負う形で運んでいる。

「なんですか、文句でもあるのですか?」

「あるに決まってんだろ、大体お前が『自分の責任だから』とか言って、やるって言い出したのになんで俺に押し付けてんだ」

「あんなものはこの状況を作り出すための建前に決まっているじゃないですか、私がそんな殊勝なことを思うような女だとでも?」

「……それじゃあ、あんな演技までしてこの状況を作り出した理由を教えろ」

「単純な話ですよ。水無瀬が病気にかかれば、水無瀬を自宅へ送るためと言う大義名分を得ますので、堂々と水無瀬の家に侵入でき、水無瀬の部屋に入れると言うわけです」

「まさか、今朝のバケツは――」

「これを狙ってのことです。バケツの中の水にはちょっとした魔力を混ぜておきましたので風邪に似た症状を引き起こせたと言う訳です」

「それじゃあ、これってただの風邪じゃないのか?」

「ええ、所謂魔力にあてられた状態と言ったところですかね、しばらくは気を失ったままだと思いますよ」

 つまり、愛南の家に侵入するために愛南が学校にいる間に倒れさせようと思って、今朝偶然を装い愛南に水を被せたと言うわけか。

「……お前って、ホントこういうことに躊躇がないよな」

「にに様が、こそこそ侵入するのが嫌だって言うからこんな非道で回りくどい作戦をとらないといけなくなったのですが?」

 そう言われると、少しは俺も悪いのではないかと思えてくるのが不思議だ。

 多少強引な作戦ではあったが、こうなった以上せっかくのチャンスを使わないわけにはいかない、とりあえず俺たちは愛南の自宅へ急いだ。

 飛月が前に言っていた通り愛南の自宅は和服屋を営んでいるようで、見るからに商売が繁盛しているんだろうなと思わせるような3階建ての建物の1階部分が店になっていた。

 愛南を担ぎながら店に入ると、店番をしていた愛南の母親がすごく驚いていたが事情を説明して家の中(2階)に入れてもらい、そのまま3階にある愛南の部屋に案内された。

 愛南の母親は愛南のことを心配していたが、愛南の父親が今日は出張でいないらしいので店番をしないといけないと言ったのを飛月は聞き逃さず『大丈夫です、水無瀬さんの友達である私たちがちゃんと見ていますので』と心にも思ってないことを平然と言って水無瀬の母親を安心させ、店番に戻した。

 現在は愛南の部屋に俺と飛月とベッドに寝ている愛南がいる。

「それにしても、意外でしたね」

「ああ、たしかにこの部屋は意外だった」

 勝手なイメージでは無駄な物はほとんど置かず整理整頓されたシンプルで和を意識した内装の部屋を想像していたんだが、実際の愛南の部屋は白とピンクを基調としていて、ハート形のクッションや可愛いぬいぐるみが多く置かれていて、有体に言えば少女らしい可愛げのある部屋と言ったところか。

 普通の女子の部屋としては別段おかしいこともないんだろうが、大人顔負けの気品あふれる和美人という愛南の学校でのイメージとかけ離れすぎていて、部屋に入ったときは一瞬言葉を失ったほどだ。

「どうやら、水無瀬との心の壁のようなものを打壊すヒントはこの部屋にありそうですね」

「おい、飛月、どこ行くんだ?」

「見張りです、水無瀬の母親がいつ水無瀬の様子を見に来るかわかりませんし、邪魔者が部屋に近づかないように邪魔者がちゃんと見張っておきますので水無瀬の攻略は任せます」

 そう言い残し部屋を出て階段のほうへ向かっていくと。

「『なにかあれば通信を入れますので、心置きなくやっちゃっていいですよ』」

「『気を失ってる相手にそんなことできるわけねえだろ』」

「『気を失ってなかったらするのですね、ドン引きです』」

「『揚げ足を取るんじゃねえよ、あと、自分の発言を棚上げにして引くな』」

 部屋に取り残された俺は愛南の寝顔を見ながら「どうするかな」そんな弱音を呟く。

 魔力にあてられたせいで熱があるからさすがに気持ちよさそうにとは言えないまでも寝ている愛南を起こすのは気が引けるし、愛南が自然に起きてくれるのを待つしかないか。

 飛月が聞いたら『このチキンが』とキレそうな消極的な作戦を取ることに決めると愛南が寝苦しそうに寝返りをうち『ママ、パパ』とうなされながら呟いた。

 愛南のイメージ的『お母様、お父様』とか『母上、父上』とかでも不思議ではなく、どんなにイメージを裏切ってもせいぜい『お母さん、お父さん』だと思っていたから俺が聞き間違えたかと思っていると、愛南はうなされながら『愛南、苦しいよぉ』とさらに続ける。

 うなされながらのうわ言とは言え、愛南の奴自分のことを『愛南』って呼んだ!? いつもの愛南なら一人称は『わたし』なのに、部屋に続いて愛南の意外な一面見てしまい動揺しながらも、水で濡らし冷たくしたタオルで顔の汗を拭きとり、看病を(看病と言えるような立派なものじゃないけど)続けて1時間ほど経った頃、容態がかなり回復したのか、今の愛南は随分気持ちよさそうに寝ている。

「大分安定したみたいだな。目を覚ましそうにないし、これ以上ここにいても俺にできることはないだろうし、あまり長居するのも悪いか」

 攻略のヒントも手に入れたし愛南の容態も落ち着いたので、俺はそう呟いて部屋を出るために立ち上がろうとすると、愛南の目がゆっくりと開き、寝ぼけたような視線を向けられる。



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