幸せの水色
前回までのあらすじ
疲労困憊の2人はアパートに帰ってくる
夕食を作ろうとする飛月を止め食べられなかった
昼食用の弁当をちゃんと食べる王真
空いた弁当箱を鼻歌交じりに洗う飛月
ハーレム作り24日目。
同時攻略を始めて約1週間が経ち、なんとか今日までボロを出さずに頑張って来たんだが、ここにきて1つ問題が発生した。
それは愛南の好感度の上りが遅いことだ。
毎日面倒だと思われない程度に声をかけコミュニケーションを取っているのに好感度メーターが友達以上の値まで中々上がらない。
このままでは期限内に愛南を攻略するのは難しそうだと判断した俺と飛月は休日である今日、リビングで緊急会議を開いていた。
「どうする? このままじゃ期限内に攻略できそうにないぞ」
「にに様への好感度が元々高かったので仲を深めれば攻略できると思っていたのですが、どうやら水無瀬はにに様のことをただの友達としか見ていないようですね。まぁ、1度異性として好意を抱いているわけじゃないと説明してしまいましたから当然なんですが」
「いや、それ以前の問題じゃないか? 愛南と話していて時々思うんだが、壁のような物を感じるんだ。俺を見てないって言うか、自分を見せてないようなそんな感じ」
「壁ですか、それはつまり水無瀬がにに様に対し一線を引いていると言うことですか?」
「たぶんだけどな、なんて言うか一向に好感度が上がらないのは学校での愛南が本当の愛南じゃないからじゃないのか?」
「学校での仮の姿と仲良くなっていると言うわけですか、そう言われればたしかに水無瀬の学校での振る舞いはどこか作り物のような気もします……、だとしたら話は早いです。大空のときと同様に水無瀬の本性を探り、攻略の切り札とします」
「具体的にどうやって愛南の本性を探るんだよ?」
「とりあえずですが、本性を見せるであろう自宅での水無瀬の様子を知りたいので、にに様が水無瀬の自宅にこっそりと侵入し水無瀬のプライベートを暴く方向で考えています」
「待て、なんで愛南の自宅に侵入するのが俺なんだ、もしバレたらヤバイだろ」
「水無瀬の友達であるにに様だからこそ大丈夫なのです、水無瀬とあまり親しくない私が侵入し見つかってしまえばことは警察沙汰になるかもしれません、しかし友達であるにに様なら万が一見つかっても笑って済ませてくれるはずです」
「済まされるわけないだろ! いや、万が一愛南が許してくれたとしても愛南の両親が許してくれるわけねえだろ!」
愛南はたしか実家暮らしで家族と一緒に暮らしているから、バレたら俺と愛南の問題だけじゃなくなってしまう。
「それでも私が侵入して見つかったときのことを考えればマシです」
「だとしてもこの作戦は倫理的と言うか法的にアウトだし、なによりリスクが高すぎる」
もし愛南が許してくれたとしても、今まで積み重ねてきた好感度は確実に下がる。
「リスクのない案なんて現状ありませんし、私たちはハーレムを作れなければ次期魔王どころか、魔界にも戻れないので、正体がバレないように怯えながらこの島で毎日を過ごすことになるんですよ」
「それはそうだけど……」
「私たちは魔族で悪魔、人間共の決めたルールなど関係ありませんし、それを破ってこそ魔族と言うもの、にに様も次期魔王なのですから、人間共に遠慮をする必要はありません」
「たしかにお前のやり方や考えも理解できないことはないが、一か八かに出るにはまだ時間も残ってるし早すぎるだろ」
「あくまでも反対ということですか」
「あくまだけど反対だ」
「わかりました。それではよりよい案を考えます」
少し不満そうにそう言われ、今日の緊急会議はお開きになった。
ハーレム作戦25日目。
いつも通り愛南が学校へ向かうための登校路で愛南を待ち伏せているんだが、いつもと違うところは飛月が近くにいないことだ。
なにかあったときのために愛南と接触しているときはなるべく飛月が近くにいるんだが、今日は朝から用事があるとかで先に登校してしまった。
今朝の飛月はなにか企んでいるような顔をしていたような気もするし、嫌な気しかしない。
そんな心配をしていたんだが、いつも通り偶然を装い愛南と合流することもでき、一緒に登校することもできたので少し拍子抜けしながら下駄箱で靴を履き変える。
愛南と他愛もない談笑をしながらクラスに向かって階段を上る途中『あ、あぶないー』と全くもって危機感が伝わってこない聞き慣れた平坦で冷淡な声が階段の上から聞こえてきたと思うと次の瞬間には愛南が頭からバケツを被っていた。
「愛南大丈夫か!?」
さっきの声の主からして何かしらの作戦なんだとは思うが、内容を知らされてない俺からしてみれば急にバケツが降って来て、中に入っていた大量の水によって愛南は全身水浸しになってしまっている状況には演技ではなく率直に驚いてしまう。
「ごめんなさい、足を取られてしまって」
無感情に謝っている飛月を白々しいなと思いながら見ていると、愛南はバケツを両手で持ち上げ笑顔で『大丈夫ですよ、気にしないで』と大人の対応をとっている。
「本当に、本当に悪気なんてなかったの、ただ、たまたま足が滑ってしまって」
もう喋れば喋るだけ、嘘臭く聞こえるんだが、愛南は嫌な顔1つせずに対応しながらも『くしゅん』と小さなくしゃみをする。
「暖かくなってきたとはいえ、そんな水浸しじゃ風邪を引いてしまいますね。早く更衣室に行って着替えましょう」
白いブラウスは勿論、スカートまで濡れてしまっている愛南をあたかも心配しているように更衣室へ連れて行く飛月の横顔はわずかではあったが邪悪な笑みを浮かべているのが見える。
「(何を企んでるんだか)」
1人残されてしまい水浸しになっている階段に目を落とし、これは俺が片づける奴だよなと思うとため息が漏れる。
後片づけを終えた俺は教室で2人が来るのを待っていると、制服から運動用に支給されているジャージに着替えた愛南と共に飛月が教室に戻ってくる。
飛月がなにを企んでいるのか、考えてはみたが今のところ全くわからなかったので通信を使い飛月に話しかける。
「『お前、なにを企んでるんだ?』」
「『企む? なんのことですか? 私はなにも考えていませんよ。そんなことより私のたまたまのハプニングのおかげで水無瀬のブラ透けが見られたのですから私に感謝の一言でも言ったらどうです?』」
「『は? そんなもん見てねえよ』」
「『それは勿体ないことをしましたね、水無瀬のいやらしい黒いブラを見られなくて』」
「『なに言ってんだ? 黒じゃなくて水色だっただろ?』」
「『そうでしたね、水色でしたね。ところで見ていないと言っていたにに様が何故水無瀬のブラの色を知っているのですか? あの場面で見ていないのに知っているとなればそれは逆に危ないと思うのですが』」
当然だが、見ていないと言うのは嘘だった。
だが1つ弁明するのなら不可抗力だったんだ。なにせいきなりだったし、見たと言うよりは見えてしまったと言う表現が正しい。現に俺は直視しないようにすぐ顔を逸らした。
まぁ、それでも何色だったかわかるぐらいは見てしまったんだが。
「『わかった認める。たしかにあのときに見てしまった。だが、だからと言ってお前に感謝するのもおかしいだろ』」
「『でも、見られて嬉しかったのではないのですか?』」
「『ノーコメントだ!』」
言うまでもないが見た瞬間ラッキーだとは思った。ともあれ、そんな会話を終え、いつも通りに時間は過ぎて昼休みになった頃、愛南の変化に気が付いた。
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