何も知らない人が見れば最低男のムーブ
前回までのあらすじ
日和とのデートは順調に進み
王真が1人トイレに向かうと
偶然来ていた愛南と見張っていた
飛月と鉢合わせになってしまう
愛南が俺の名前しか呼ばなかったのは、愛南の位置からじゃ、壁が邪魔で飛月が死角になっているからなんだが、現状はかなり厳しい。
「『にに様、ここはたまたま遊びに来たショッピングセンターで偶然水無瀬に会ったと言う設定で無難にやり過ごしてください』」
飛月からの通信に対してとりあえず『わかった』って答えたはいいが、俺が口を開くよりも早くモブ女の口が開いた。
「あっ、そうだった。あたし野暮用があったんだ。買い物の続きは雉君に付き合ってもらって、それじゃあ雉君、愛南のことよろしく」
そう言って愛南に一言の反論も許さないように一目散に駆けて行ってしまい、残された俺たちの間に気まずい空気が流れる。
「『おい、飛月どうするんだ! どうすればいいんだ!』」
「『落ち着いてください、この状況で水無瀬を見捨てれば確実に水無瀬の好感度が下がりますのでここは水無瀬の買い物に付き合ってあげてください』」
「『はぁ? それじゃあ、日和のほうはどうするんだ?』」
「『私が偶然を装って大空と接触し時間を稼ぎますのでその間に水無瀬の用を済ませると言う形でいきましょう』」
「王真君? 汗がすごいけど、どうかしたの?」
「い、いやなんでも、『それじゃあ、日和のことは任せる』」
飛月はすぐに日和のほうへ走って行ったからとりあえず日和のことは任せておくとして、問題は目の前の愛南か。
「えっと、わたしの買い物になんて付き合わなくてもいいよ。だから気にしないで」
「いや、俺でよければ付き合うよ」
「え、でも、わたしなんかと一緒にいても楽しくないと思うけど?」
「そんなことないだろ、ほら、早く行こうぜ」
「……それじゃあお言葉に甘えちゃおうかな、ありがとう王真君」
そう言うことで、愛南の買い物に付き合うことになってしまった。いくら次期魔王と言っても最低限の道徳はあるわけで、さすがに女子と2人で遊んでいたのにその途中で他の女子と行動するというのは正直気が引けるが、状況が状況だけに仕方ないか。
「それで、愛南の買い物ってなんなんだ?」
「新しい服を買う途中だったんだ」
なるほど、服ならたしかに1人で買うより誰かと一緒に見たほうが自分と違う意見とかが聞けてなにかといいってわけか。
「愛南のお気に入りの服屋とかあったりするのか?」
「あるんだけど、少し離れているからもう少し歩かないといけないんだけど、いいかな?」
「ああ、もちろ――ん!?」
歩いている進行方向から遠目ではあるが、日和と飛月が話しながらこっちに向かって歩いてくるのが見える。
「(飛月の奴、なにやってんだ!)」
このままだと確実に鉢合わせしてしまうのでとにかく愛南と共に身を隠さないといけない、とりあえず愛南の腕を取り近くの店に入った。
「お、王真君!?」
「しっ、静かに」
愛南にそう言って静かにさせ、日和たちが通り過ぎて行ったのを確認する。
「(気づかれなかったみたいだな、危なかった)」
「王真君? どうかしたの?」
「い、いや、え、えっと、ほら女子ってこういう可愛い動物のぬいぐるみとか好きなのかなって思ってさ」
たまたま入った店が女性向けに作られたぬいぐるみショップだったのでそれらしいことを言ってみる。
「わたしは別に……」
「ほら、この鹿のぬいぐるみとか可愛くないか?」
たまたま近くに置いてあった、可愛くデフォルメされちょこんと座っている手の平サイズの鹿のぬいぐるみを手に取り、愛南に見せる。
「か……、可愛くない、わたしこういう子供っぽいのは好きじゃないから」
素っ気なくそう言われてしまったので「そ、そっか」としか言えず、店の外に出る。
愛南はああいうのは駄目なのか、女子にしては珍しいんじゃないのか? いや、飛月とかもああいう可愛いのは嫌いだから、案外普通なのか。
「(女子はよくわからん)」
そんなことを思いながら、ようやく愛南のお気に入りの服屋にたどり着き、愛南は色々な服を手に取り楽しそうに服を選んでいる。
俺がやることと言えばたまに愛南から似合っているかどうか聞かれるのでそれに対して『似合ってる』と言うだけだった。面倒だからそう言っているわけじゃなく、愛南は顔立ちも整っているしスタイルもいいからどんな服でも似合ってしまうだけだ。
順調に服を選んでいる途中、愛南がなにかに見入っているようだったので声をかける。
「なんだ、それが気になるのか?」
愛南の視線の先には可愛いフリルが印象的なスカートが飾られていた。
「ううん、こういうのはあまり着ないから物珍しくて見ていただけ」
「なんだ、合わせないのか、絶対に似合うと思うけど」
「似合わないよ。ああいうのが似合うのは可愛い女の子だけ、わたしみたいなのは地味めで大人らしい服を着ないと」
「そんなもんか?」
「そうだよ、ファッションなんて人から見られるものなんだから、わたしのイメージに合った服を着ないと笑われちゃうよ」
「ふ~ん、でも俺は愛南が可愛い服を着ても笑わないし、むしろそんな姿が見れたらラッキーだと思うけどな」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、皆が皆、王真君みたいなわけじゃないからね」
笑いながらも少し寂しそうな愛南に「……そうだな」と答えることしかできなかった。
結局イメージ通りの清楚な服を買い終えた愛南をショッピングセンター入口まで送る。
「今日はありがとう王真君、おかげで助かったよ」
「俺はなにもしてないけどな」
「そんなことないよ、本当に助かったし、楽しかったよ、それじゃあね」
愛南は手を振りながら外に出て行った。
外はもう暗く本当は自宅まで送ってあげたほうがいいんだろうけど、日和とのデートがまだ残っているからな、ここで愛南を自宅まで送っている時間はない。
色んな意味で少し頼りないが飛月に通信を送り、飛月に愛南の護衛を任せるとして俺は日和とのデートを再開する。
「飛月の話だと入り口近くのファミレスの前で待たせてあるとか言ってたな」
確認するように独り言を言いながらファミレスに行くと、言われた通り日和がファミレスの入り口で壁に寄りかかりながら待っていてくれた。
「あっ、王真! もぉ~、今までどこ行ってたの!?」
飛月からトリプルDだと言われるこの俺でもデート中に相手が急にいなくなれば誰だって怒ることはわかっている、わかっているのでここは素直に謝ろう。
「悪かったよ。ちょっと道に迷ってな、それより飛月に会った連絡来てたけど、 なにか言ってなかったか?」
「ううん、飛月さんはウチの話を聞いてくれてただけで、あとはここにいれば王真が会いに来るってことしか聞いてないよ」
余計なことは言わなかったのか、正直それが心配だったんだが、さすがは飛月、やるときはやる奴だな。
「そうそう、そう言えば、飛月さんに『王真って子供の時どうだった?』って聞いたらさ、『にに様は子供のときが1番カッコよかったですよ、歳を取るごとにその面影は薄れていますが』って言ってたよ。なんていうかさぁ、王真と飛月さんって仲のいい兄妹だよね」
さすがは飛月、やっぱ余計なことを言ってやがった。
「別にそんなこともないって、それよりこんなところで立ち話もなんだし、中に入らないか?」
明るい雰囲気のファミレス店内を指差してそう言うと、日和は嬉しそうに頷いた。
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